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真田十勇士

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巻ノ百二 百地三太夫その四

「わしの家で寝泊まりしてもらうが」
「修行の間は」
「何処にあるか見付けられなかったか」
「はい、実は」
 それで探しあぐねていたとだ、霧隠も答えた。
「左様でした」
「ほっほっほ、そうであろう」
 百地は霧隠のその言葉に笑ってだ、まずはこう返した。
「わしも隠しておるからのう」
「それでは」
「うむ、見るのじゃ」
 こう言うとだった、彼等が今いる山の中の少し向こうの平たくなっている場所に小さな庵が見えた。その庵を見て幸村も霧隠も唸った。
「まさか」
「お師匠様の術で」
「そうじゃ」
 その通りというのだ。
「これはじゃ」
「ううむ、そうでしたか」
「そして御主にもじゃ」
「この術をですか」
「使える様になってもらう」 
 こう言うのだった。
「是非な」
「そうですか」
「ではな」
「はい、これより」
「励もうぞ」
 修行にだ、こう言ってだった。
 霧隠は早速だ、幸村も含めて三人でだった。百地の修行を受けた。その修行は実に厳しく激しかった。 
 霧隠は霧の術を使ってだ、こう言った。
「この術も」
「まだじゃ」
 百地はぴしゃりと言った。
「それではな」
「左様ですか」
「今御主は隠れたな」
「はい、霧を出して」
「そうした、しかしな」
 それでもというのだ。
「完全に隠れてはおらなかった」
「そうでしたか」
「姿は見えなかった」 
 それ自体はというのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですか」
「気配はじゃ」
 それはというのだ。
「隠していなかった」
「霧に姿を隠して」
「それに安心してじゃ」
 それでというのだ。
「気配まではじゃ」
「隠していませんでしたか」
「姿を隠して油断するでない」 
 到底というのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「気配にも気をつけよ」
 こう言うのだった。
「よいな」
「わかり申した、それでは」
「もう一度じゃ」
 霧隠にまた術を使わせる、そしてだった。
 術を使わせる中でだ、百地は霧隠にこうも言った。
「霧になり姿を消してじゃ」
「そしてですな」
「御主は自慢の剣技も使うが」
「その剣技もですか」
「気配も消すのじゃ」
 それも忘れるなというのだ。 
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