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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  魔法少女のその後



梅雨も明け、そろそろ夏に入ろうかと言う、七月のある日。


総人口のほとんどを生徒で占めると言う、東京郊外にある巨大な「学園都市」

その学生寮の一室。
上条当麻と、居候たるシスターの住んでいる部屋だ。

シスター?
イン・・・・なんだっけ?



「今とても失礼なこと言われた気がするんだけど」

「どうした、インデックス」

朝食をまだかまだかとちゃぶ台前に座って待つインデックスに、簡単な料理を作って持っていく上条当麻。

世界が結合してからという物、彼の周囲は魔術師だったり超能力者だったりの世界だけではなくなってしまっていた。
まあ、そのおかげで様々なことが起こるようになったり起こらなかったりするのだが。


「ね、ね!!とうま、今テレビで魔法少女とかやってたんだけど!!」

「あー?・・・・なに、お前らの教会にもやっぱそう言うのいるわけ?」

「いないよ。少なくとも、十万三千冊の中にそんなふざけた格好の人たちの記録なんてない」


別世界だった魔術師で、宝石魔術を扱う赤い少女なんかはそんなんになったりしたことがあるのだが、彼等は当然知らない。
更に別世界だと、小聖杯の器のホムンクルスとかもなったりするけど。



「でも、術式さえ組み込めば、こういう格好の礼装もできるかも・・・・」

「エロメイド天使とか?」

「あれは礼装にできたとしても、神様をバカにしているから即刻焼き払われると思うな」

それを進めて女性に着させようとする人間がまさに教会の人間なのだが、そのことは突っ込まない上条。
大人である。



「で?なんでニュースにそんなんが?」

「わかんない」

瞬間記憶の可能な彼女は、ニュースの内容は覚えているものの、魔術側の人間である為にそれ以外のことは疎い。
ニュースの文章そのまま空で復唱できるが、良くわからない言葉だけを言うのも案外疲れる物だ。

よって、上条は仕方なく毎朝見知ったニュースキャスターのお姉さんを画面から消し、少し小皺の目立つおばちゃんが淡々と述べるニュースに変えた。


ちょうどここではその報道をしており、耳を傾けてみる。



『先日「EARTH」が、魔法少女と呼ばれる少女たちの存在を公にしました。少女たちは戦う事を強いられていた、とのことで、「EARTH」はその証である「ソウルジェム」と言う宝石が、少女たちの魂そのものであるということを――――』

「さっぱりわからん」

「あ、しゅんだ」


数秒後、会見の様子が映し出され、そこには蒔風の姿が映っていた。
脇にはあったことのない少女が三人ほど座っており、その三人はガチガチに緊張していた。


『えー、ちょっと重要なことなので、記者さんたちへの説明は後にします。とにかく、この映像を見ている魔法少女の諸君に告げる!!』

マイクを手に取り、なぜか立ち上がって壮大に語り始める蒔風。
無駄に声も低くしている。なぜだ。


『君たちのソウルジェムは、その名の通り君たち自身の魂を加工して出来たものだ。だが、それを元に戻す術がある!!現在、「EARTH」はインキュベーダー、通称キュゥべえから回収したリストを基に、少女たちの元へと向かっている。君たちはもう、戦わなくていい。何か質問があれば、「EARTH」にご一報を!!』

『あのー、でも確か資料では魔法少女はマジュウとかいうのと戦っているのでは?』

『この世界にはもともと様々な敵がいる。俺たちみたいな組織があるのに、少女たちに戦わせるのは酷じゃないですか』


そんな質問をされ、答え、蒔風は少女の一人を前に引っ張ってくる。

『とにかくこれを見よ!!』

そう言って、蒔風が黄色い感じの少女を一人前に連れ出す。

ガチガチのそのこの手には、ソウルジェムが握られている。
どうやら魔法少女だという少女らしい。


「あ、一刀」

蒔風に呼ばれて一刀が会場に入り、ソウルジェムに手をかざすとそれは彼女の胸に還り、そのまま消滅してしまった。


『このように、簡単に元に戻れます。もう、みんな苦しまなくていい。いままで、良く頑張ってくれました』

そう言って画面の向こうの少女たちに深く頭を下げる蒔風。
さらにその後の説明で、こうして元の戻った後は魔法の力もなくなるとのことらしい旨が述べられた。


そしてまた別のニュースが流れ、元の番組に戻しながら上条は感心した声を出す。


「蒔風、またなんか解決したのか」

「とうま。もしかして首突っ込みたかったとか言わないよね」

「インデックスさん?私を何だと思っているのでしょうかねぇ!?そんなことないっての!」

ピンポーン


ジト目で見てくるインデックスに反論し、そこで部屋のインターホンが鳴らされる。
覗き穴から向こうを見て、そこに見知った顔を見つけて笑顔で扉を開く上条。


「吉井に前原じゃねーか。なんだ?」

「どうも~」

「上条さん、急にすんません」


やってきたのは、吉井明久に前原圭一だ。
歳も比較的近いため、「EARTH」内でも仲のいい二人だ。

だが彼らの学校は学園都市にはない。
一応今日は土曜日。学校はないものの、こんな朝から一体何の用だろうか。


「上条さん、ニュースってみました?」

「ん?ああ、魔法少女がなんたらってやつか?」

「そうそう。僕らも急に言われてちょっとびっくりだったんだけどね。知ってるなら話は早いや」

「ん?」

ガチャン


「「来てもらおう」」

「は?!」


気付くと、上条の手首には手錠が掛けられていた。
そして逃がさないよう、脇を掴んで来ようとする二人。

咄嗟に部屋の中に入って逃げる上条だが、二人はそれを追って入室してくる。


「なんだなんだよなんなんですかー!?」

「とうま、お客さん?・・・・なにやってんの?」

「インデックスさん!?そう思うなら落ち着いて味噌汁飲んでるあなたは助けるべきじゃないでしょうか!?」



「上条さん!!大人しくついてくるんだ!!」

「悪いようにはしないから!!」

「くそ!!なんだこれは・・・陰謀か!?ヘタな能力者集めてこないあたりが何か狙ってんだろ!?」


ジリジリとさがる上条だが、いかんせん狭い学生寮だ。
結局のところ、彼に残された逃げ場などベランダくらいしか残されていない。


と、そこで


「カミやん!!朝っぱらから隣でうるさいにゃー!!」

隣人で魔術師である、土御門元春が顔を出してきた。
これだけ騒げば当然だ。

しかし


「あり?たしかあんたらは「EARTH」で・・・ガ!?モゴモゴモゴ!!・・・・」

「邪魔は困るかな?かな?」

背後に立ったレナによって口元を塞がれた。
しかも何か薬品でも染み込んでいるのか、抗う動きは緩慢になって行き・・・・


「あ、何かやわらかいのが当たって」

「フンッ!!(コキュッ!)」

「アポゥッ(ガクリ)」

「土御門ーーー!!?」


完全に沈められた。
物理的に?いったい何を言ってるんでしょうか。そんなことないですよ?

作者だって死にたくはありません。
知らない方がいいこともある。



ともあれ、目の前の光景に上条は恐怖した。

いくらなんでも多勢に無勢。
しかも相手はこの三人だ。


上条は腹を括る。


「ドリャァぁあああああ!!」

「あっ!!」

「飛び降りた!?」


ベランダのサンダルを履き、上条はダイブした。
高さにして、七階。

普通なら死ぬ高さだが、伊達に幾度も戦場を生き延びてきた彼ではない。


飛び降りると、六階のベランダに手をかけてぶら下がる上条。
そして次は五階、四階、三階と、段階的に落ちていく。

しかも手錠をかけられた状態で。
人間、追い詰められると何をしでかすかわからないものだ。



「逃げられた!!」

「魅音!!」

『了解だよ!!追尾してる!!』


無線機に叫ぶ圭一。
それに元気な声で応じるのは園崎魅音である。

グイッ、と彼女はレバーを傾け、上条の真上に躍り出る。



「な、なんだぁ!?」

上条の真上には、ヘリコプターが飛んでいた。
当然、操縦者は魅音だ。


そのヘリからロープが垂れてきて、三人の人間が飛び降りてきた。
雄二、ムッツリーニ、そして沙都子の三人は着地と同時に駆け出し、上条の周囲を囲んで追い詰める。


「土屋浩太・・・・」

「どうした?ムッツリーニ」

「・・・・もういい・・・」

「行きますわよ!!覚悟しなさいまし!!」



沙都子の号令に、雄二がまず動く。

上条は特に体を鍛えているわけでもない、ごくごく普通の高校生。
しかも手錠までかけられていて、身体を鍛えている坂本雄二に勝てるわけもない。


走って逃げようとするが、即座に腕を掴まれてしまう。

しかし上条も(わけわからないなりに)必死だ。
魚のようにビチビチと身体を動かし、そこから脱していく。

が、数歩進んでいったところで沙都子とのトラップが発動してロープで雁字搦めにされてしまった。


「な!?ってか飛び出したロープがどうしてこんな風に絡みつくんだよ!?」

「を~ほっほっほっほ!!これぞ私のトラップ技術ですわぁ~!!」

「何それ!?わけわかんなくてもいいから、せめて最先端のテクノロジーとかの方がしっくりくるんだけど!?」

「何言ってますの?」


錯乱する上条。
だが地面に転がってロープで巻かれてはどうしようもない。

と、そこに階段で下りてきた吉井、前原が飛び込み、伸し掛かって完全に上条を捕縛した。


「確保ォ~!!」

「時刻、0847!!」

『状況を終了するよ!!皆、撤収!!』


そうして、上条は連行された。
インデックスもレナにつれられて一緒にヘリに乗る。


「ふ、不幸だぁぁーーーーー!!!」




一方


「ローアングル・・・・」

「ムッツリーニ、その写真は・・・!!」

「俺はロリコンじゃない・・・変態でもない・・・・」

「没収」

「レナちゃん!?」

「レナパンッ!!」

「アブっ!!」

「土屋さんは・・・、あれ?」

「レナパン、って単語で鼻血吹いて倒れたぜ、この人・・・・」



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「で?」

「こういうことだからよろしく」

「どういうことだよ!?」


上条が連れてこられたのは、当然ながら「EARTH」本部。
その正面にの広場には今、透明な箱が置かれていた。


その前で蒔風が待っていると、上条が連れてこられた。

開口一番「なにやってんの?」と言われれば、上条だってキレる。



「お前何やらせてんだよ!?」

「いや・・・俺は上条連れてきてくんない?って頼んだだけで・・・・」

心当たりのなさそうな蒔風。
きっとその時「どういう風に?」と聞かれたのに対し「お好きなように」と答えたのがいけなかったのだろう。


「はぁ・・・で、これはなんだ?」

「ソウルジェム」


上条が言う「これ」とは、透明な巨大な箱のことだ。
その中には色とりどりのソウルジェムが入っており、キラキラと光って輝いている。

その上には、翼刀がヴァルクヴェインを構えて淵に立っていた。


「舜さ~ん・・・なるべく早めに・・・俺もう疲れましたぁ~・・・」

「おーう、ご苦労!!で、上条」

「ん?」

「飛び込め」

「何故に!?」


蒔風曰く、これは少女たちから預かったソウルジェムらしい。
無論、ソウルジェムから離れすぎると体のコントロールを失ってしまうので、少女たちは「EARTH」のビルの中で休んでもらっている。


身体と魂は密接な関係にある。

魂の具現化と言うソウルジェムに触れれば、魂は元の姿に戻り、おのずと元の肉体のもとに還る、と言うのが蒔風の持論だ。
実際、一刀が上条の力を借りてマミたちのソウルジェムに触れたら元に戻ったので、それ自体はだいじょうぶであることがわかっている。


「だったら一刀にやらせればいいじゃん!?なんで俺一人!?」

「カズピー忙しいんだってさー。ビスコッティにはみんなで行きたいんだけど、仕事があったらダメだべ?」

「その為に・・・俺を生贄に・・・!?」

「いやぁ、触れた瞬間に煙みたいに消えていくからさ。上条はとりあえず、下に落ちるのを気を付けながら、右手出してぐるぐるしてればいいから」

「おざなり!!物凄くおざなり!!と言うかいつのまにかクレーン車に乗り込んでんの!?吊るす気か!?うわぁっ!?」

「ルパッチマジックレッツゴー!!(ガシャン、ウイーン)」

「タッチストライクーーー!?」

「シェイクハンド!!」

「揺らすなぁーー!!うわ」

ドボン



そうして上条は放り込まれ、蒔風の操るクレーンに弄ばれていった。




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「と、そうして魔法少女たちは解放されて・・・・」

「魔法も使えない・・・・・」

「はずなんだけどなぁ?」


三日後


「EARTH」の地下訓練場では、魔法少女の姿となっている五人の姿があった。
それを眺めるのは、呆れたやらなんやらの微妙な表情をした翼刀と蒔風だ。


「やっぱりあの場にいたからっすかね?」

「だろうなー。まったくもってどういうこじれ方したのか」

「まさしく「わけがわからないよ」っすね」

「確かに」

くっ、と笑いながら、蒔風が翼刀に頷く。
ソウルジェムがあるわけでもないから、魔女になるシステムもないだろうしな、と安堵の息を漏らす。



目の前では、五人がそれぞれ暴れまわっていた。



「今だー!!ライジングになりなさい!!ラ・イ・ジ・ン・グ!!」

「ハイ!!名護さん!!」

「もっと大きな声で!!」

「名護さんは最高です!!」

「いいぞ、巴君!!」




「お、なかなか太刀筋のいいお嬢ちゃんじゃねーか」

「お嬢ちゃんとか言うな!!変態青タイツ!!」

「あぁっ!?これは鎧だ!!下手なこと言いやがると女子供とて容赦は」

ぐしゃぁ!

「ランサーが死んだ!!」

「この人でなし!!」

「あ、あたしのせいじゃねー!!」





「こ、こうですか?」

「違う!剣の降り方はこうだ!!マーン!!」

「ま、まーん?」

「マーンッ!!」

「(メン、じゃないのかな?)まーん・・・」

「マァーンッッ!!」

「マーン・・・」

「マァァアアアアアンッッッ・・・ゲホ、ゲホッ・・・」

「むせてどうするんですか・・・・」




「いいかァ?まず一番重要なのはなぁ」

「なに?」

「勢いだ!!登場した時はビシッと決めんだぞ!?こうだ・・・俺!参上!!」

「・・・・」

「だぁ~めだって先輩。相手は女の子だよ?この手なら僕が・・・・」

「修行なら俺が一番やないか!!」

「わぁ~、きれいな髪の毛~。これ何?盾?面白ーい」

「あの・・・・」

「皆いい加減にしてー!!」

『おわ!』『おっと』『なんや?』『うわぁ』

「はぁ・・・はぁ・・・みんな僕の身体で勝手に・・・」

「あの・・・大丈夫かしら?」






「アーチャーさんって・・・いかにも弓凄そうですよね!」

「不器用なりに突き詰めただけだ」

「えっと、私も弓使うんです!!」

「そうか・・・ま、俺は誰かに指導するほど上等な人間ではないのでね。失礼するよ」

「と、特訓に行くんですか!?」

「今日も海が呼んでいる・・・」

「え」

「フィイーッシュ!!」

「(こ、これが弓で戦うことなのか!)ふぃ、フィーッシュ!!」





「間違ってる・・・みんな壊滅的に間違っている・・・・(フルフル)」

「いいんじゃないか?楽しそうだし」

「みんな特訓って言ったら走り込み30キロとか・・・・」


「しゅ、舜・・・翼刀・・・・・(ヨロヨロ)」

「どうした謙吾?」

「お、俺の・・・」

「謙吾さんの?」



「俺の・・・・チョンマゲを知らないか!?」

「「ブハァッ!!」」




to be continued

 
 

 
後書き


最後には謙吾さんに持って行ってもらいました。

上条
「ひどい目にあった・・・」

蒔風
「俺は悪くない」


上条当麻誘拐。
でもあのメンツならそのノリが分かる気がしてしまうのがおかしい。


蒔風
「ファミ通VS電撃のタイトルマッチがここに!!」

圭一
「俺らは?」




とまあ、彼女たちは引き続き魔法少女みたいですね。

まったく・・・・「因果」って便利な言葉だよね!!(どやぁ



蒔風
「うやむやにしやがったぞこいつ」


まあまあ。
さて、そろそろ次回予告をどーぞ!!


蒔風
「次回も日常編」

アリス
「一体誰の日常かなー?」

ではまた次回


 
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