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子供ではない

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第六章

「靴も変えてなくなったんだよ」
「靴ってまさか」
「そうした靴か?」
「そうだよ、シークレットシューズとか穿いてな」
 そうしてというのだ。
「小柄なのを隠す様になったんだよ」
「ああ、それでか」
「子供みたいな小柄さも隠してか」
「そのこともあってか」
「何とかなったんだよ」
 一緒にいる智和が怪しまれなくなったというのだ。
「やっとな」
「シークレットシューズな」
「あれ本当に効くんだな」
「気休めとかじゃなくて」
「本当に効果あるか」
「ぱっと見で高く見えるだろ」
 その背丈がというのだ。
「そうしたらその分だけな」
「子供に見られない」
「それがいいんだな」
「ああ、いや人間あれなんだな」
 智和は腕を組み神妙な顔でこうも言った、スーツがよく似合っている実に歳相応な雰囲気で。
「何だかんだで外見から判断されるな」
「それはどうしてもな」
「知らない人だと余計にな」
「どっかの麻だの原だのいう外見だったら胡散臭く見えるしな」
「子供に見えたら子供だって思うさ」
「そうだよな、だから俺が碧ちゃんと一緒にいてもな」
 妻であるその彼女とだ。
「碧ちゃんが子供に見えて」
「御前は歳相応でな」
「そんなでかい子供いるのもおかしいって思ってな」
「だとしたら不審者って思われてな」
「それでだな」
「ああ、疑われてな」
 そしてその結果たというのだ。
「通報されたりするからな」
「外見はどうしても見られて」
「そこから思われるからだな」
「そうしたことへの要人は必要」
「そういうことだな」
「ああ、二回も疑われてな」
 智和はその今では笑える過去も思い出して言った。
「俺もわかったさ、けれどな」
「けれど?」
「まだ何かあるのか?」
「ああ、碧ちゃん前にしようって思っていたって言ったけれどな」
 ここでこのことを思ったのだ。
「シークレットシューズ履こうってな」
「それ小柄だからだよな」
「やっぱり小柄なの気にしてたんだな」
「だからそれを隠そうと思ってか」
「シークレットシューズ考えてたんだな」
「そうだな、だからだよな」 
 智和は考えながら同僚達に述べた、休憩時間にコーヒーを楽しみつつ。
「やっぱりな」
「そうなるな」
「どう考えてもな」
「そうか、やっぱり気にしてたんだな」
「小柄なこと」
「俺がそれもいいんだけれどな」
 碧が小柄であることも智和の好みだ、性格だけでなくその小柄で童顔の容姿も気に入ったのだ。だからプロポーズもしたのだ。
「それでもな」
「本人さんは違うか」
「気にしてたんだな」
「実は」
「そうみたいだな、けれどな」
 智和は考える顔で言っていく。
「そのこともこれでな」
「解決か」
「奥さんのコンプレックスも」
「そうなったみたいだな、しかし人は外見だけじゃないにしても」
 智和も真実と思っていることではある。
「それで判断されたりもするな」
「どうしてもな」
「そうなるな」
「よくわかったよ、本当にな」
 以後智和は碧と一緒に外出する時は碧のそうした気遣いに感謝することになった。それうは彼にとって有り難いことだったが同時に通報されたことを思い出して複雑な気持ちになるものだった。
 それでだ、智和は碧に家でこうしたことも言うのだった。
「もう二度と通報は御免だな」
「それはね」
「全く、俺が犯罪者か」
「思われていいことじゃないしね」
「だから碧ちゃんには悪いけれど」
「任せてね」
 碧はその智和に微笑んで応えた、このことも忘れられなかったのだ。


子供ではない   完


                2017・5・20 
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