子供ではない
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第一章
子供ではない
雑賀智和は丸めの鼻とはっきりとした涼し気な目と引き締まっていてそれでいていつも微笑んでいる唇と面長の顔を持っている、黒髪をいつも短く刈っていて背は一七五程だ。八条グループの系列の証券会社に勤務している。
その彼が結婚したが誰もがその相手に驚いた。その相手の名前を栗田碧という。
碧は小柄で一四五程しかない、クレオパトラの様に短く切り揃えた黒髪に黒目がちの大きめの奥二重の瞳と濃いめの眉、ピンク色の楚々とした唇と白い肌は少女の様だ。智和と同じ会社に勤務しているが。
その彼女についてだ、智和の友人達は話した。
「あの娘と結婚か?」
「入社早々の娘だよな」
「大卒だからな」
出身大学は智和と同じ八条大学だ。
「二十三歳か」
「それで雑賀が三十一歳だからな」
「まあ年齢はそんなものかにしても」
「いや、ちょっとな」
「入社早々の娘をゲットか」
「そこまではまあな」
「あるにしても」
それでもというのだった。
「あの娘はちょっとな」
「小柄で童顔でな」
「中学生に見えるからな」
「子供先生って感じだよな」
「小学校の先生の教員免許も持ってるらしいし」
それで子供先生なのだ。
「しかしな」
「それでもな」
「あの娘と結婚するか」
「背は三十は違うしな」
「外見もな」
「おっさんと子供か」
「雑賀最近髪の毛も減ってきてるしな」
「髪の毛のことは言うなよ」
ここで智和が周囲に言うのが常だった。
「俺は禿げてないぞ」
「いや、最近まずいだろ」
「前からも上からもきてるぞ」
「気をつけても仕方ないにしても気をつけろよ」
「髪の毛は大事だぞ」
「イギリスの王子様達みたいになるぞ」
不幸にして二人共だと言われている、何と二十代にして急激に来てしまったという恐るべき事態だという、
「あと十年は髪の毛欲しいだろ」
「一生だと最高だけれどな」
「けれどそれでも結婚するんだな、碧ちゃんと」
「そうするんだな」
「そうだよ、何かここまでボロクソ言われたな」
智和はこのことも言った。
「そんなに俺と碧ちゃんも結婚が不思議か」
「御前ロリにしか見えないぞ」
「碧ちゃんが中学生にしか見えないからな」
「下手したら小学生だろ」
「よく結婚出来たな」
「成り行きだよ、一緒に仕事する機会があったら意気投合してな」
それでというのだ。
「色々話もして付き合う様にもなって」
「それでか」
「結婚か」
「結婚したら俺の部屋で一緒に住んでな」
智和は周りにそれからのことも話した。
「やがてはマイホームも買うんだよ」
「そこはしっかりしてるな」
「先から先まで考えてるな」
「そのことは立派だぜ」
「社会人として合格だよ」
「絶対に幸せな家庭築くからな」
智和は強い声で言い切った。
「だから祝ってくれよ」
「ああ、式には呼んでくれよ」
「そのことは祝うからな」
「俺達にしてもな」
「二人で幸せになれよ」
何だかんだで周りも祝福した、こうして智和は碧と結婚し二人で仲良く過ごす様になった。だが。
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