言えない告白

「最高だよ」
「それで若しもだぜ」　
　そのクラスメイトは慎重な顔になり彼にさらに言った。
「これから言うことに気を悪くするなよ」
「ああ」
　徹二も頷いて答える。
「いいぜ」
「振られてもな」
　つまりもう一つのケースになってもというのだ。
「結局告白しないとな」
「どっちにもか」
「ならないし何にもならないとな」
「その場合が一番、か」
「御前にとって最悪なんだよ」
　そうだというのだ。
「後悔する中でもな」
「一番後悔するか」
「若し振られて後悔しても」
「言わないで後悔するよりか」
「ずっといいだろ」
「そうなんだよな」
　徹二も彼の言葉にその通りだと頷いた。
「結局のところは」
「そうだろ、だからな」
「まずはか」
「ああ、告白するってな」
「覚悟を決めることか」
「告白しないって選択肢はないだろ」
　徹二に既にというのだ。
「そうだろ」
「そうしようって決めてるんだよ」
　その気持ちはあるというのだ。
「もうな」
「だったらな」
「覚悟か」
「決めたらその決めたことをやる」
「その勇気か」
「勇気が必要なんだよ」
　まさにというのだ。
「いいな」
「ああ、わかったな」
「それしかないな」
「もう清水の舞台から飛び降りる気持ちでだ」
　この例えを出すのだった。
「いいな」
「覚悟を決めてか」
「告白だ」
「それしかないか」
「本当に勇気だよ」
　それを出すしかないというのだ。
「ここまで来たらな」
「それはわかてるけれどな」
　徹二にしてもというのだ。
「俺もな、けれどな」
「それでもか」
「何かな」
　どうしてもというのだ。
「怖いな、けれどこの怖いって気持ちをか」
「もう捨てればいいだろ」
「どうせ最後だろ」
「卒業式に言うんだろ」
「もう何もないだろ」
「最後の最後だぞ」
　それこそというのだ。
「だったらいいな」
「もう特攻隊みたいにやれ」
「一気に告白だ」
「それでいけよ」
「後悔しない為にか」
　自分自身がとだ、徹二はこれまで以上に真剣な面持ちで言った。そこには彼だけの覚悟を前にしたものがあった。
「やるしかないか」
「そういうことだよ」
「じゃあいいな」
「もう決めたんだろ」
「じゃあその決めたことをやれ」
「卒業式まであと少しだぞ」
「それをやれよ」
　これがクラスメイト達の言葉だった、口々にこう言って徹二に覚悟を促した。もう彼が決めているだけに。
　そうした話をしているうちに遂にだった、高校の卒業式の日となった。式は滞りなく進んで。
　終わった、これで卒業となったが。
　まだ肌寒い初春の中でだ、クラスメイト達はまた徹二に言った。
「いいな」
「この時が来たからな」
「行けよ」
「後悔したくないだろ」
「だったらな」
「ああ」　
　強張った顔でだ、徹二も友人達に答えた。