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賢者の石

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第一章

                 賢者の石
 錬金術師達が求める究極のもの、それが賢者の石だ。これはあらゆるものを自分が思うものに変えられるという魔法の石だ。
 この石についてだ、パリの表向きは医師で実は魔術や錬金術にも手を染めているギース=ベルナールは友人達に言っていた。
「欲しいね」
「やはりそう言うね」
「君にしても」
「教会に内密で錬金術を行っているだけあって」
「そう言うね」
 その魔術や錬金術仲間達が彼等だけのサロンで彼の言葉に応えた、彼の金髪で緑の目を持つ涼しげな顔立ちを見つつ。
「あの石が欲しい」
「そう言うんだね」
「当然だよ、あれがあれば」
 賢者の石がとだ、ベルナールは整った声で言った。顔立ちもそうだが声も物腰も実に気品があり卑しいものは見られない。
「今の我が国の財政もどうにか出来る」
「石からで何からでも金を生み出せるからね」
「その気になれば銀でもどの様な宝石でも」
「では欲しいね」
「フランスの為に」
「そう、私は医師として人を救っているけれど」
 それと共にとだ、ベルナールは共に錬金術や魔術を嗜んでいる友人達に話した。彼等のそれはあくまで全うな錬金術や魔術であり稀代の毒婦ラ=ヴォワザンが行っていた様な呪いや毒を扱うものでなく白魔術の系統にあるものだ。
「しかしね」
「それでもだね」
「魔術は魔術であっても」
「それでもだね」
「健全なものだね」
「錬金術にしても」
「そう、医術で人を救い」
 そしてというのだ。
「錬金術では国をそうしたい」
「そう思うんだね」
「では、だね」
「賢者の石を生み出したなら」
「その石の力で富を産み出し」
「そしてその富でフランスを救う」
「そうするんだね」
「そのつもりだよ」
 まさにというのだ。
「私はね」
「そうだね、ではだね」
「君はこれからも賢者の石を生み出す努力をしていく」
「そうしていくんだね」
「その通りだよ、そして生み出せたら」
 その時はというのだった。
「是非ね」
「石から富を生み出し」
「フランスを救う」
「そうするよ」
 こう友人達に言う、そしてだった。
 ベルナールは医師として働く傍ら錬金術や魔術に精を出し賢者の石を生み出そうと励んでいた、そうしていたが。
 ふとだ、その彼にだった。友人達がこう話した。
「近頃宮廷ではサン=ジェルマン伯爵という人物が話題だが」
「この人物は何でも錬金術の奥義を知っているらしい」
「そして賢者の石を持っているらしい」
「不老不死だの時間を自由に移動出来るともいうね」
「サン=ジェルマン伯爵だね」
 その名を聞いてだ。ベルナールも眉を動かした。そしてだった。友人達に彼の話を詳しく聞いたのだった。
 そのうえでだ、彼は決心した顔で言った。
「よし、それではだ」
「伯爵のところに行ってだね」
「賢者の石の話を聞く」
「そうするんだね」
「是非ね」 
 こう言うのだった。
「若し伯爵が賢者の石を本当に持っているのなら」
「伯爵にその石のことを聞くんだね」
「どうして造ることが出来るのか」
「そのことをだね」
「そう、是非ね」 
 まさにとだ、彼は答えた。 
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