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拒食症

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第二章

 晃司は食べなくなりそのうえで運動もはじめた。とにかくカロリーのあるものは控えて食事の量は日増しに減っていった。
 すると体重もだ、まさに日増しにだ。
 痩せていった、九十五キロの体重は一ヶ月で十キロ以上減りさらにだった。ここで夏休みに入ったのだが。
 夏休みが終わり二学期になってだ、誰もが晃司を見て唖然となった。
 身体は痩せ細り頬はこけて目ばかりが出ている。筋肉こそあるがそれ以外のものはなく骨さえ見えているその彼を見てだ、クラスメイト達はひそひそと話した。
「あれ岡村か?」
「急に痩せたな」
「というか痩せ過ぎだろ」
「あいつ今は体重何キロだ?」
「何キロあるんだ?」
 誰もが唖然となる、だが晃司と仲のいいクラスメイトはおらず彼等は岡村と話そうとしなかった。そもそ晃司の方が自分にいつも太っているだの言う彼等を完全に避ける様になっていた。
 しかし翔平は別だった、彼は夏休みが終わり久し振りに会った親友を見て仰天した。晃司は自宅でダイエットばかりしていたが翔平はバレー部の部活で忙しかったのだ。
 その彼がだ、晃司を見て言ったのだった。
「御前大丈夫か」
「平気だよ」
 その痩せた顔でにやにやとさえしてだ、晃司は翔平に言ったのだった。
「だって体重今六十キロだよ」
「六十キロ!?」
「そうだよ」
「おい、御前身長一七八だろ」
「そうだよ」
「それで六十は少なくないか」
「大丈夫だよ、運動してるから筋肉はあるから」
 それはというのだ。
「脂肪だけがないから」
「脂肪率は何パーセントだ」
「十パーセント位かな」
「危ないだろ、そんなに低いと」
「駄目だよ、もっと痩せないと」 
 見れば目の光は強い、しかしそれは赤く爛々とした不気味なものだった。
「痩せれば痩せる程いいんじゃない」
「何がいいんだ」
「だから女の子は男の子は痩せれば痩せるだけいいんだよね」
「違う、だから言ってるだろ」
 翔平も必死だった、晃司の今の惨状を見て親友として言ったのだった。
「人の外見をステータスにする、御前の内面を見ようともしない奴なんかどうだっていいんだよ」
「言われたくないから、もう」
 晃司は本音を語った。
「絶対に」
「だからか」
「もっと痩せるから」
 あくまでこう言うばかりだった、その血走った目と思い詰めた表情で。
「それで痩せて痩せて」
「もっとよくなるつもりか」
「そうだよ、女の子はその方がいいんだからね」
 完全な思い込みだったが晃司にとってはそれは絶対のものだった、翔平も彼のその目と表情に最早何も言えなくなった。
 晃司は昼食は全く食べなくなり朝も夜も少しだけだった、そのうえでランニングや筋トレをしていき風呂でも汗をかいていた。水分は摂っていたからそのことは大丈夫だったが。
 彼の体重は六十からさらに減っていき誰が見ても病的なものだった、もう誰も彼をデブだの言う者はいなかったが。
 彼はそれでもダイエットを続けていた、五十五キロになってもだった。
 彼はダイエットを続けていた、しかし極端で急激なダイエットで体力がなくなっていて足元もふらついていた。
 その時になっていい加減にだ、翔平は晃司に強い声で言った。
「もういい加減にしろ」
「いい加減にって?」
「だからもう止めろ、馬鹿なことはな」
「ひょっとしてダイエットのこと?」
「そうだよ、だから運動してもいいけれどな」
 それでもとだ、晃司にあらためて言ったのだった。
「食え、普通にな」
「だから食べないとね」
「何度も言わせるな、本当にそこまで食わなかったらな」
 それこそとだ、晃司にこれまで以上に強い声で言った。
「御前死ぬぞ」
「死なないよ、その分は食べてるから」
「違う、食ってないんだよ」 
 笑って、力のないそれで言う晃司のその言葉を全力で否定した。 
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