MS Operative Theory
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内部図解
マニピュレーター②
——マニピュレーターのパワー——
MSの五本指タイプに代表されるマニピュレーターは、人間の腕部に近い構造となっているため、多数の可動部分を持つ。このため、整備が困難で、脆弱なイメージを持たれることが多い。だが、クローアームなどの簡易マニピュレーターだけではなく、MS用の五本指マニピュレーターも強力かつ頑強なデバイスとして、高い信頼性を獲得している。これはビーム・サーベルを用いた斬撃や、低反動化されているとはいえ大型の火器を使用する以上、頑強さが求められたためであり、実際に大質量の格闘兵装を使用した場合にも兵装の脱落や、マニピュレーターの破損などが発生するケースは極めて稀である。また、RX-78-2(ガンダム)がマニピュレーターでザクⅡの口吻部を引きちぎった逸話や、RX-178(ガンダムMk-2)が片腕でMSN-100(百式)を支え、引き上げたエピソードなどからも、五本指マニピュレーターの頑強さやパワーが理解できる。勿論、「手」部や関節部の装甲防御力は高く出来ないため、ビーム兵器の直撃を受ければ破壊されるが、MS用マシンガンの至近弾程度には耐えられる機体も存在する。
——MS用マニピュレーターの各部——
ここでは肩部や上腕、前腕、関節などを含むマニピュレーター全体を解説する。当初、汎用MSのマニピュレーターは「腕部」として設計されることが多かったが、一年戦争末期頃から、肩部へのアポジモーターの設置や前腕部への兵装、あるいは補助推進器の搭載が目立ち始めた。このようにMSの腕部は、マニピュレーターとしてだけでなく多機能ユニットとして設計されるようになったのである。
■肩部
マニピュレーターの基部となるユニットで、通常は装甲で覆われている。アポジモーターや兵装が搭載されるケースが増加した。
■前腕
駆動系のコンパクト化に伴い、補助兵装や補助推進器などのプラットホームとなった。機関砲や小型ビーム砲、ビーム・サーベルなどの兵装のほか、U.C.0100年代以降はビーム・シールドが装備された。
■掌部
MSの携行用兵装の銃把と繋がるエネルギーコネクターや、火器管制装置リンク部が設置されている。
■ダミー・ランチャー
MSサイズに膨張する、ダミー弾の発射機。地球連邦軍系では指先、ジオン公国軍系では手の甲に装備された。
■多目的ランチャー
指の付け根などに設置される小型ランチャー。粘着弾(トリモチ)、消火剤、信号弾などを発射可能。
■ワイヤー発射機
接触回線用のワイヤー射出機構。アンカー部分にはマグネットとセンサーを装備。リガ・ミリティア系では指先、ベスパ系では指の付け根に内蔵された。
——マニピュレーターの使用方法——
MS用のマニピュレーターは、主にMS携行用兵装の保持と操作に使用される。だが、人間の腕が武器などを握るためだけの器官ではないように、MS用マニピュレーターも様々な用途に利用されている。その祖先でもある工業用マニピュレーターの行う工作作業や、荷物の保持/運搬なども、MS用マニピュレーターの重要な役割となっているのだ。
①作業用マニピュレーターとしての利用
工作用重機と同様の作業アームとしての利用方法。人間が活動できない汚染区域や海中、MSサイズのマニピュレーターでなければ作業が困難な大型施設での作業などに用いられる。大型ハッチの開閉、MS用トーチを用いた重作業もこの範疇に入る。
②重量物の保持、運搬
一般の重機では運搬が難しい大重量物を掴み、移動させる。MSの腕部は100tを越える重量物も持ち上げることが可能で、擱座したMSの回収や大型貨物の短距離輸送も行う。超大型重機として性能を期待され、輸送部隊にMSが配備されることもある。
③MS携行兵装の使用
一般的なマニピュレーターの使用方法のひとつ。ビーム・ライフルなどの大型火砲やビーム・サーベルに代表される格闘兵装などを操作する。兵装へのエネルギー供給/火器管制用のプラグは掌部に設置されるため、マニピュレーターを用いた操作が基本となる。
④マニピュレーターを直接的に使った格闘攻撃
マニピュレーターの先端部(手部)を使った格闘攻撃。パンチや握り潰し、敵機の捕縛などが主なものである。マニピュレーターは披装甲箇所と比較して脆弱であるため、これを用いたパンチなどは緊急の攻撃手段として用いられる場合が多い。
——汎用MS用五本指マニピュレーター——
MS-04(プロトタイプ・ザク)と同時期に採用された、汎用性に優れるマニピュレーター。先端部が五本指タイプとなっており、多様な装備を使用できる。その汎用性や操作性は高く評価され、U.C.0150年代に至っても、これを超える汎用マニピュレーターは出現していない。
■最初期MS搭載型マニピュレーター
最初期の五本指マニピュレーター。MS用マシンガン/ロケット・ランチャーや、ヒート・ホークなどの格闘兵装も使用可能で、この時点で汎用MSのマニピュレーターは完成していたといえる。当然、大型重機としても機能した。
■地球連邦軍共用マニピュレーター(一年戦争時)
一年戦争末期の後期生産型MS以降、地球連邦軍MSで採用された五本指マニピュレーター(手部のみ)。細身のシルエットが特徴で、モデルチェンジも少なく、U.C.0090年代まで使用され続けた。アレックスなどRX系MSにも採用されている。
■統合整備計画準拠型マニピュレーター
ジオン公国軍の統合整備計画に準拠したMS、所謂「第2期生産型MS」で採用された統一規格マニピュレーター(手部のみ)。丸みを帯びた重厚なフォルムを持つ。U.C.0090年代のネオ・ジオンMSも、この改変モデルを使用したと思われる。
■地球連邦軍共用マニピュレーター(グリプス戦役期)
U.C.0080年代中期~後期にかけて採用された五本指マニピュレーター。指の付け根に、粘着弾や信号弾などを発射可能な多目的ランチャーを標準装備する。肩部の補助スラスターも一般的な装備となっている。
■U.C.0150年代標準型マニピュレーター
U.C.0150年代に使用された五本指マニピュレーターで、MSの小型化に合わせてサイズダウンしているが、機能的には過去のモデルと同等である。指先や指の付け根に、接触回線用ワイヤーの射出機が装備されていることが多い。
——作業用マニピュレーター——
宇宙用重機などの作業用アームと同系列のマニピュレーターで、「マジックハンド」などとも呼ばれる。MS用兵装などを、マニピュレーターで直接操作しないモビルポッドなどで採用される。汎用性は低いが、生産/整備コストが安価で、簡易兵器用に適している。
■RB-79(ボール)
原型機であるスペース・ポッド「SP-W03」から継承した、二爪マニピュレーター。先端はモンキーレンチのような二股式で、複雑な作業には対応できない。K型などは、第二肢を持つY字マニピュレーターとなっている。
■MA-05Ad(ビグ・ラング)
ビグ・ラングのAd(可変補給廠)ユニットに内装される三本爪マニピュレーターで、クレーンとも呼ばれる。ビグ・ラングに近づいた味方機を掴み、Adユニット内へと送り込む。MSやモビルポッドを保持するため、大型化している。
■YMT-05(ヒルドルブ)
モビルタンク形態で使用する五本指マニピュレーターとは別に、塹壕構築用や砲架として用いられたショベル・アーム。基本的な構造はショベルカーのそれと同じで、車体の左右に1基ずつ、合計2基装備していた。
■MS-06V(ザクタンク)
半跏したザクを作業用として再生した際に装備された、二指マニピュレーター(マジックハンド)。MS携行兵装の運用能力は持たないが、高い出力を誇る。大型トーチを用いた作業にも対応可能であった。
■ゲゼ
三本指マニピュレーターと、二本爪マニピュレーターを1対ずつ装備するハンドメイドMS。元々大型ジャンクの搬入用で、そのパワーは一般的な軍用MSを凌駕している。投擲や棒状の武装を用いた格闘戦も可能であった。
——クロー・アーム——
汎用性を極限まで切り捨て、指を格闘戦用のバイス・クローとしたタイプ。水陸両用MSやMAなどで採用され、メガ粒子砲などの内蔵兵装を並列装備しているモデルも少なくない。作業性と汎用性を切り捨て、攻撃力に特化した仕様となっている。
■MSM-07(ズゴック)
3本のバイス・クローとメガ粒子砲1門を装備。上腕は蛇腹構造(フレキシブル・ベロウズリム)で、肩に相当する部位は存在しない。作業用としての機能は殆ど無く、純粋に攻撃用マニピュレーターとなっている。
■MA-05(ビグロ)
作業用マニピュレーターを巨大化したような形状を持つ。三本爪マニピュレーター。前腕部分に冷却剤タンクが設置されている。火器類は内蔵しておらず、AMBACシステムと格闘用クロー・アームとしての機能に特化した設計となっている。
■RX-139(ハンブラビ)
通常の五本指マニピュレーターに2本のクローが追加された特殊なタイプ。変形を前提としたマニピュレーターで、クローはMA形態での格闘戦で活用される。MS形態では五本指マニピュレーターとして、MS携行火器などを使用する。
■RX-110(ガブズレイ)
MS形態時の脚部ムーバブル・フレームを利用した、三本爪マニピュレーター。ハンブラビ同様、基本的にはMA形態で使用されるが、MSとMAの中間的形態でも露出する。フル装備のMSを掴むほどの出力を誇る。
■AMA-X2(ノイエ・ジール)
有線制御も可能な一対の三本爪マニピュレーターと、ショルダーアーマー内に二対のサブアーム(二本爪マニピュレーター)、合計6本のクロー・アームを装備する。それぞれ二メガ粒子砲が内蔵し、ビーム・サーベルとしても使用可能だった。
——火器を内蔵する五本指マニピュレーター——
五本指マニピュレーターの「手」部に、火器類を内蔵したタイプも存在している。これらの殆どは指をビーム砲や機関砲としており、汎用性を確保しているかのように見える。だが、大半はクロー・アームと似た攻撃に特化したシステムで、基本的には局地戦用機や第1次ネオ・ジオン戦争頃までのニュータイプ専用MSなど、汎用性との両立が困難なカテゴリーにあるMSに採用されていた。
■MS-07B(グフ)
左手が5連装75mm機関砲(フィンガーバルカン)となっていた。格闘戦が可能となるまでの牽制用として用いられたが、マニピュレーターとしての機能は低くならざるを得なかった。C-3型、H型では両腕がフィンガーバルカンとなった。
■MSN-02(ジオング)
前腕部がサイコミュ制御式有線5連装ビーム砲となっている。サイコミュ・システムを搭載するために機体が大型化しているため、汎用性の確保が難しく、指は全てビーム砲とされた。機能は限定されているが、専用の格闘兵装を装備可能とされる。
■AMX-015(ゲーマルク)
親指をビーム・ライフル、人差し指から小指を一体化した3連メガ粒子砲、前腕部に3連装グレネード・ランチャーを内蔵する。ビーム・サーベルの使用は可能だが、指のほとんどが一体化しているため、汎用性は低下している。
■AMX-014(ドーベン・ウルフ)
前腕部が有線(無線)制御式ビーム砲となるが、ビーム砲口は掌にあるため、手部は五本指マニピュレーターとしても機能する。前腕部を有線ビーム砲化すると同時に、マニピュレーターとしての機能を確保するには最善の策といえる。
後書き
次回 AMBACシステム
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