マイ「艦これ」「みほ2ん」
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第68話<昨日の敵は今日の艦娘>
前書き
北上に何か聞こうとした青葉さんだったが……
「真実でも聞かぬ方が良いこともあるのじゃ」
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第68話 <昨日の敵は今日の艦娘>(改2)
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急に北上がカットインした。
「大井っち……なのか?」
「……」
だが深海棲艦は黙っていた。敢えて、その問いには答えないつもりだろうか。
ちょっと微妙な雰囲気になった。すると今度は金剛がカットインしてくる。
「昨日の敵は今日の艦娘ダヨ。一緒に写真、撮るネ?」
そういって金剛は笑いながら半ば強引に彼女を誘い入れた。
「……そうだな」
私は応えた。
(金剛め、意外と気が利くじゃないか)
妹に似て無茶な言動が多い彼女だが、その場では金剛の提案が最良のものに思えた。
「よし集合だ」
私は金剛の気持ちが嬉しかった。頭の固い指揮官だと、こういう状況では右往左往しそうだ。
その小さい子供はニコニコして愛想を振りまいている。龍田さんと赤城さんが『可愛いぃ』と言いながら近寄っている。
お互い怖いもの知らずだが、それは不思議な光景だった。金剛の言う通り『昨日の敵は今日の友』なのだろうか。
(これも港町という懐の広さからの包容力か)
「あるいは艦娘たちの魔力かな?」
私は呟いて苦笑した。
「何か言いましたか?」
絶妙な突込みを入れてくる龍田さんの微笑が、ちょっと怖かった。
「いや」
ともかく、その深海棲艦の親子も一緒になって全員で記念写真を撮った。
本来は敵だ。お互い警戒すべき深海棲艦も、よく私たちに写真を撮らせてくれたな。
(ひょっとして高度な謀略か? あるいは余裕なのか?)
もっとも艦娘も彼女も全員が浴衣だ。しかも夏の夜の薄暗い写真。
それに加えて艦娘以外は本当の深海棲艦の姿を誰も知らないのが現実だ。仮に、この写真が外部に流れたとしてもバレる事も無いだろう。一般大衆も普通の軍人も、戦場には出ていないのだから。
これは今夜、休暇を取った艦娘たちと深海棲艦だけの秘密だ。
(皮肉なものだ)
写真を撮った後、敵である彼女がふっと私に言った。
「オ前トハ、戦イヅラくナル。私モ可能ナラ戦場を変エよう」
「そうか」
私は何となく返事をした。
だが、よく考えて疑問に思った。
(こいつの一存で実際に可能なことか?)
敵ではあるが、そんなことを勝手に決められるのか?
深海の連中は組織立ったようにも見える。だが以前こいつと話したとき、奴らは比較的、自由に闘っているようなことを言ってたな。
(敵の組織形態なんて我々には皆目、分からんことだ)
顔を上げると無表情の彼女と目が合った。だが物語のように敵と意思が通い合う……なんてことは無かった。
(やはり目の前の『彼女』は私の知っている艦娘では無いのか)
それは当然のことだが少し残念にも感じた。
(なぜ?)
果して彼女は何者なのか? どちらが真実なのかは不明だ。
そもそも縁も何も無い私たちに敵が親しい態度を取る事自体が不可思議である。謎が多いからこそ『もしかして……』という想いになる。
「司令」
祥高さんが声をかけてきた。振り向くと母親がわざわざ、私たちを出迎えに来てくれたのだ。
母親は言った。
「お前たち、迷っりょらんかと思ってな」
「OH、お母様!」
金剛は迷うことなく母親の手を取って言った。
「写真、取りまショ!」
彼女は、いったんその場から散った艦娘たちを大きな声で呼び集めた。ホントに良く通る声だ。
「青葉、プリーズ!」
「はい、はい」
「お母様はコッチヘ」
私たちが改めて写真を撮ったときには既に、あの深海棲艦親子は姿が無かった。
でも母親は浴衣姿の艦娘たちと写真を撮って意外に嬉しそうだった。
「お父さんも来れば一緒に撮れただになぁ」
母親の言葉に利根が反応する。
「エース殿は来られぬのか?」
『エース』と言う表現に一瞬、考えた母親は直ぐにそれが父親と理解したようだ。
頷いて利根に答える。
「お父さん、こういう人ごみが嫌でね」
「なるほど」
利根はその一言で、父親の人間像を把握したようだった。
写真を撮った後いったん実家へ向かうことになった。
「あれ? あの敵の人じゃない?」
母親は呟いた。見ると確かに人ごみに『彼女』が居た。
小さい深海棲艦は、やたら可愛い。あいつの実子かどうかは不明だが……まったく謎だらけだ。
でもその娘は私たちに気付くと最後まで愛想を振りまいた。
(出来れば、この子とは戦いたくないものだ)
しかし北上が、ちょっと落ち込んでいるように見えた。すると深海棲艦が彼女に近寄り何か話をしていた。
(あれ? 北上が笑顔に変わった)
祥高さんが聞いてくる。
「待ちましょうか?」
「いや、北上も地図データは持っているだろう、私たちは戻ろう」
「はい」
人ごみから離れて立ち話をしている彼女たちを置いて駅前から実家へ向かって歩き始める艦娘たち。
やがて数分後には少し遅れて北上が走って戻って来た。
そんな北上に何か聞こうとした青葉さんだったが、それを止めたのは意外にも利根だ。
彼女は首を振って言った。
「真実でも聞かぬ方が良いこともあるのじゃ」
「あ……」
その言葉に青葉さんも苦笑していた。
私は感心した。
(利根……大人だね。見直したよ)
そして私は艦娘たちの最後尾から実家へと向かった。
歩きながら私は頭の中で総括する。
深海棲艦というサプライズはあったが、この盆踊りと花火大会の『作戦』も特に大きなトラブルも無く終わって良かった。
気付くと五月雨と寛代が私の両側から手をつないで一緒に帰ってくれていた。
駆逐艦娘の本当の年齢は、小学生よりも遥かに大きい。でも意外と、この背格好の娘が居るだけでホッとする事も少なくない。そういう面で駆逐艦娘は実に貴重だと思う。
「ありがとう」
私は五月雨に声をかけた。
すると彼女は答える。
「いえ、その何か手放しで帰ると心細い感じがするので……」
「……」
やっぱり可愛い。一方の寛代は黙っているが同じ気持ちだろう。
皆で、いったん実家へ戻った。その後で結局、近所の銭湯へ汗を流しに行く事になった。
もちろん鎮守府に戻れば立派な入渠施設はある。でも今日は別に戦闘したわけでもないから普通の銭湯でも良いだろう。
それに、たまには街にある普通のお風呂屋さんに行けば風情もある。
「石鹸は銭湯にもあぁだ(あるよ)」
母親も最初からそのつもりだったのか、ありったけのタオルを準備してくれていた。
「うん」
祥高さんが母親に聞いた。
「銭湯はここから近いのですか?」
母親は答える。
「うちの前を左に出て、大通りを右に行くと川があって……」
説明をする母親を祥高さんが軽く手で制した。
見ると寛代が、いつの間にか地図で検索をして母親が言う銭湯を見つけ出し、通信機能のある艦娘たちに共有し始めていたのだ。
「へぇ、便利なもンだな」
母親の理解も早かった。
艦娘たちは口々に言う。
「銭湯? へぇ、楽しみですね」
「良いねえ、何年ぶりだろう」
その言葉に私は反応した。
「何だ? 北上は経験があるのか?」
彼女は頷く。
「えっと、舞鶴には結構、銭湯がありましたよ」
「あ、そうだったな」
私もかつての軍港を思い出した。
北上は続ける。
「そう思うとね、境港も舞鶴と、似てなくも無いなって」
「そうだな……山もそばにあるしな」
もっとも舞鶴の方が、山は多いが。
私たちは再び実家を出て銭湯へ向かう。
今日はお祭りだったから銭湯も遅くまで営業しているようだ。祭りのお客もソコソコ入っていて、いつもより少し込んでいた。
入り口で時間を調整してから私たちも男女で分かれた。
でも唯一の男子である私は一人だから早く上がってしまう。風呂上りの私は、しばらく脱衣所で新聞を見ていた。
地元紙には特に変わった記事も無い。日本海での戦闘もすべて海軍が戦ったことになっている。艦娘のことは一切触れていない。
(まあ、これが現実だろう)
約束した時間に銭湯の前に出ると祥高さんが待っていた。
「すっかり遅くなってしまったね」
私が声をかけると彼女は言った。
「大淀さんからの通信で……渋滞は解消したのですが、リモコンでの深夜運転は、妖精さんではさすがに危ないのでは? ということです」
「そうか……では日向に一人で鎮守府に向かって……」
言いかけて私は改めた。
「さすがに可愛そうだな、それは」
祥高さんも苦笑している。
「困ったな」
私は腕を組んで思案した。
後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
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最新情報はTwitter
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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