| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ百 後藤又兵衛その十三

「貴殿等はな」
「これからもですな」
「十一人で」
「共に生きることじゃ」
 そうせよというのだ。
「そして共にな」
「同じ場所、同じ時にですな」
「死ねと」
「そうすべきじゃ」
 こう言うのだった。
「それが貴殿達の生き方じゃ」
「そうですか、では」
「これからも」
「うむ、そうされよ」
 ここで後藤はこうも言った。
「わしも迂闊に死なぬ様にする」
「そうされますか」
「必ずな」
 後藤自身もというのだ。
「だからな」
「はい、それでは共に」
「そうして轡を並べる時があればな」
「思う存分に戦いましょうぞ」
「そうしようぞ」
 二人で笑って話した、そして清海も言うのだった。
「ですな、後藤殿がお味方ならば」
「御主もそう言ってくれるか」
「はい、百人力です」
「そうか、そもそもわしが思うに」
「と、いいますと」
「わし等は争うべきではないな」
 飲みつつだ、後藤は清海に言った。
「互いにな」
「それは何故でしょうか」
「うむ、似ておる」
 自分と幸村達はというのだ。
「己を曲げず卑怯未練は嫌いじゃな」
「はい、そう言われますと」
「権威や冨貴も求めておらぬな」
「そうしたものには興味がありませぬ」
 一切という言葉だった。
「我等は」
「そうじゃな、それも同じじゃ。そうした者達が互いに争っていいことはない」
「だからですか」
「争うよりもじゃ」
「共に戦うべきですか」
「そう思う、わしは武士として生きたい」
 これが後藤の第一の願いだった。
「殿の下にいてはそれが出来ぬ」
「そう思われてですか」
「これが一番大きかった」
 出奔の理由は一つではないがというのだ。
「だから出たしのう」
「だからですか」
「うむ、わしは家を出た」
 一万石以上あった禄も捨ててだ、当然家老の地位も官位もだ。
「そうしてここにおる」
「そして時が来られれば」
「戦う」
「武士として」
「そう考えておる」
「そうですか」
「そうじゃ、御主達と共に戦いたい」
 後藤はまた言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧