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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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662部分:第五十二話 パヤパヤ、噛まれるのことその一


第五十二話 パヤパヤ、噛まれるのことその一

            第五十二話  パヤパヤ、噛まれるのこと 
 木の上にだ。その宮殿はあった。やたらと巨大な木のその上にだ。
 質素な場所である。だが後ろに象を描いたと思われる壁画もある。全体的にこじんまりとしているが中々快適そうな場所である。
 そこの主の座、木のベッドにだ。緑の長い髪の少女が寝ている。栗色の目に幼さの残る横に長めの童顔に胸のところとスカート、それに手足が白虎の模様の服で覆われている格好である。尻尾まである。耳も虎のものだ。
 その横になっている少女と共にだ。小さなピンク色の象も寝ている。象の頭には金色の王冠がある。
 その少女がだ。ふとだった。
「むにゃむにゃ・・・・・・」
 象の尻尾に顔を近付けてであった。いきなり。
 その尻尾に噛み付いたのであった。
「パヤ!?」
 噛まれた象はだ。慌てて起き出した。そしてだ。
「パヤ!パヤ!」
「何にゃ?」
「パヤ!パヤ!」
 起きた少女に抗議する。泣きながらだ。
 少女も起き上がってだ。象に応える。
「何にゃ、パヤ」
「パヤ!パヤ!パヤ!」
「何にゃ!?美衣が御前の尻尾を噛んだにゃ!?」
「パヤ!」
 その通りだと頷く象だった。
「パヤ!パヤ!パヤ!」
「だから気をつけて欲しい?」
「パヤ!」
 今度は飛び上がって叫ぶ象だった。
「パヤパヤ!」
「ええい、五月蝿いにゃ!」
 遂に怒った少女だった。
「美以は御前の尻尾なんか噛んでいないにゃ!」
「パヤ!パヤ!」
「違うというにゃ!?」
「パヤ!」
 その通りだと頷くのだった。
「パヤーーーーーーー!」
「そんな筈ないにゃ!」
 少女はまた怒って言う。  
「美以は御前の尻尾なんか噛まないにゃ!」
「パヤ!」
「そこまで言うのなら!」
 さらに怒ってだ。象に怒鳴る。
「ここから出て行くにゃ!」
「パヤ!?」
「この南蛮の主は美以にゃ!」
 つまりこの少女が孟獲なのであった。南蛮王である。
「その美以に従えないのならとっとと出て行くにゃ!」
「パヤヤ!?」
「さあ、どうするにゃ!」
「パヤーーーーーーーーッ!」
 そう言われてだった。象は泣いて何処かに行ってしまった。孟獲はそれを見てだ。ふてくされた顔になり腕を組んで言うのだった。
「暫く何処かで頭を冷やすにゃ」
 こう言ってまた寝る。そこにだった。青髪に茶髪、それにピンクの髪の虎の被り物の三人の少女が来た。どの娘も小柄で可愛い顔をしている。青髪の娘は勝気な顔をしており鳶色の目である。茶髪の娘は赤紫の目で元気そうな顔だ。ピンクの少女は緑の目でおっとりとした顔だ。その三人が孟獲のところに来て言うのだった。  
「美以様、トラはお魚を」
「ミケは果物を」
「シャムは何も。けれど」
 三人はそれぞれ言う。
「とても頑張ったの」
「皆ご苦労だったにゃ」
 孟獲は自分にそうした獲物を差し出す三人にまずは労いの言葉をかけた。
「では後で皆で食べるにゃ」
「はい、それで」
「あの、パヤは?」
「何処ですか?」
「あいつは追い出したにゃ」
 孟獲はむっとした顔になって三人に答える。
「無礼にも美以が尻尾を噛んだと言ったにゃ」
「尻尾?」
「尻尾を?」
「それを?」
「そうにゃ。美以はそんなことはしないにゃ」
 自覚していない。
 
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