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秋祭り

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第三章

「それじゃあ服は残念だけれど」
「ええ。普通の服でね」
「浴衣もないし花火もないし」
 これも夏だった。青空は夏とその祭りが好きなのだ。
「じゃあ楽しみは食べものとお酒だけしかないけれど」
「飲み過ぎないでね」
「わかってるわよ。もうわかってるから」
 未来があまりにしつこく釘を刺すのでだ。青空は思わず苦笑いになって述べた。
「それじゃあ一升で我慢するから」
「我慢するって言える量なの?」
「私的にはそうだから。まあ未来も飲むわよね」
「私も。多少は」
 飲むがだ。青空程ではないというのだ。
「そうするわ」
「まあ。飲んで食べて楽しもう」
 青空はこの秋祭りの楽しみはこの二つしかないだろうと思った。そう思うと酒の制限も残念だった。しかし親友の未来に言われてはだった。
 仕方なく一升で終わらせることにした。それでだった。
 青のジーンズに緑の上着、その上から白いパーカーのハーフコートを羽織ってだ。青空は秋祭りが行われる神社に来た。その前には青いフレアースカートに白いセーター、その上からカーディガンを羽織った未来が待っていた。未来は青空を見るとすぐにこう言ってきた。
「それじゃあ今からね」
「うん、中に入ってね」
 それでだとだ。青空は微笑んで応えた。神社の境内の中は石の道が奥まで届いておりその左右に色々な屋台が連なっている。そこに人が笑顔で集まっている。
 神社の中はそこに色々な木々がある。秋のそうした木々も見たが。
 青空はここではだ。やはりこう言ったのである。
「食べてそうしてね」
「飲もうっていうのね」
「ええ、そうしよう」
 こう未来に言ったのである。
「お酒は神社の中で貰えるわよね」
「本当に一升貰うの?」
「勿論よ」
 明るく答えた言葉だった。
「だから飲まないとね。お祭りじゃないじゃない」
「また。お酒お酒って」
「そう言う未来も飲むじゃない」
「それはそうだけれど」
「じゃあ一升貰うわよ」
 堂々とだ。青空は言い切った。
「それで飲むわよ」
「ううん、一升ね」
「御神酒だしいいでしょ」
「全く。お酒好きにも程があるわ」
「まあまあ。じゃあ屋台で食べものも買ってね」
 未来の心配をよそにだ。青空は神社の境内で酒を一升瓶ごと貰い神主の人の眉を顰めさせた。そうしてから屋台を巡ってだ。
 目当ての焼きそばにお好み焼き、たこ焼きにフランクフルト、それと焼き鳥に唐揚げといった色々なものを買ってだ。未来と一緒に神社の一角に腰掛けてそのうえで飲み食いをはじめた。祭りの喧騒をBGMにしてだった。
 青空は一升瓶を杯ではなく口にそのまま入れてだ。ごくごくと飲んでだ。
 ぷはあ、と酒臭い息を出して左手で口を拭いそれからだ。赤くなった顔で言ったのである。
「いやあ、やっぱりね」
「いいっていうのね」
「最高ね、お酒と屋台の食べ物の組み合わせ」
「まさか杯なしで一気に飲むなんて」
「何かあるの?」
「おじさんじゃない」
 その青空にだ。未来は向かい合ってこう言ったのである。
 彼女はその手に杯がある。その酒を飲みながらの話だった。
「その飲み方は」
「おじさんって。私が?」
「そうよ。せめて杯に注いでから飲まないと」
「いいじゃない。この飲み方が一番美味しいのよ」
「気分的に?」
「そう。最高よ」
 また瓶に直接口をつけて顔を上げてだ。サイダーかラムネを飲む様にしてからごくごくと飲みながらだ。青空はまた未来に言ったのである。 
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