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異世界に転生したら、強くてニューゲームでした。(編集中)

作者:イリア
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成長、そして。

 
前書き
この話から急展開となります。

着いてきてくだされば嬉しいです。 

 
僕が稽古をつけてもらえるようになったあの一件から、10年が過ぎた。

流石お父様と云うべきか、稽古を始めて、僕の魔力は驚くほどに伸びていった。お父様の跡継ぎとして一緒に稽古をしたお兄様には、8歳で追いついた。お兄様はそのとき23歳だったけれど、手放しで褒めてくれて、すごく嬉しかったのを覚えている。

6歳から初等学校に入学したから、稽古の時間は減ってしまったけど、今も続けている。

僕が入学したのは、私立ウィザードリィ学園だ。私立ということもあり、平民に比べると貴族が多い。

身分はなんにしろ、学校に通うようになって、たくさん友達ができたので嬉しかった。

その中でも、特に仲が良いのはジェノヴァ公爵家のご子息、ジェノヴァ・ウェスタリア。

4人兄弟の次男。僕も次男ということがあり、すぐに打ち解けた。爵位を持っていないだけで自分や弟を下にみる兄を、将来見返してやろうと猛勉強している。体格もよくて、知力、体力は高いんだけど、魔力が低いのが悩みみたい。

(僕的には、体力があるのは羨ましいんだけどね…)

僕は、お父様のおかげで魔力は随分高くなった。魔力の高さでは、もう国の10番以内に入っている。そのツケといっては何だけど、魔力の稽古しかやってこなかったから、体力が全くないんだよね…。魔力の試験は難なく突破できるけど、体力テストの結果は散々なものだった。下手したら、そこらへんのスライムにでも殺されそうなくらい。

光魔法の、身体強化を使えば人並みの体力はつくけど、一時的なものだし。やっぱり、これはしっかり鍛錬しなきゃダメかなぁ…。

という訳で、僕は最近お父様の仕事を手伝うようになった。僕の家は、貴族の中でも位の高い家のようで、お父様の仕事は王家に関係するものが多い。王家の仕事と聞いて、最初

(ふぁっ!?そんなすごい仕事してたんだ!)

ってなった僕だけど、聞くとどうやら王家の何でも係、みたいな仕事らしい。今のリベルテ王国国王はチャールズ10世。

先代国王が不慮の病で若くして逝去されたこともあり、まだ政治に慣れていない。そんな国王の補佐を務めるのが、僕らグレイソン家だった。各国との交友関係を潤滑にするために、今度の会合で出すお菓子は何が良いか、と相談されたら、それぞれの国まで、会合相手が何を好むのか調査しにいくこともあるらしい。びっくりした。お父様が、なんでいつも忙しそうだったのか、やっとわかったよ(笑)

その中でも、僕が手伝っているのは比較的簡単なものだ。『◻︎△村に魔獣が出て、住民が襲われている。助けてくれ』みたいな依頼がきたら、現地まで行って魔獣を捕獲する。こういう依頼は結構多くて、何度もやったので僕1人でも任されるようになった。大きな進歩だ。捕獲した魔獣は、大抵誤って村に下りてきてしまっただけなので、森まで連れて行って、帰してあげる。

本当は、今日もそんな依頼を頼まれてたはずなんだけど……。急に、チャールズ10世の側近の方が訪ねて来られて、新しい依頼に変更になった。

どうやら、首都近くの街に魔獣が出たらしい。しかも、火龍や水龍など、龍神の魔獣の次に強いとされる魔獣、「スィエル」だった。俺もよく分からないから、絵を見せてもらった。んーと…。
ポケ◯ンでいうところの、ホウオウみたいな感じ、っていったら近いかも。どちらかというと神聖な魔獣で、普通は街を襲ったりなんかしない。なにやら事情がありそう。

今回は、さすがに僕1人じゃ危ないから、お父様、僕、お兄様で行くことになる。側近の方が乗ってこられた馬車に同乗させてもらい、問題の場所に向かった。


ーー首都、エトワール。古くから栄える地で、人口はおよそ120万人。

多くの重要機関がこの都市に本部を構えている。繁華街もあり、非常に活気のある場所だ。しかし、人々は既に避難を終え、今は全く違う表情を見せていた。いるのは、僕ら3人だけだ。

その真ん中と言える地点で、スィエルは暴れていた。周りには、破壊された噴水や、住宅の残骸が無残に転がっている。近づくと、興奮したのか、更に激しく暴れる。普段なら、人が近づくと飛んで逃げてしまうのだが、今は逃げない。

「これは…誰かに魔術をかけられているな」

スィエルを見据え、お父様が呟く。

「やはり、そうですか。では、まず眠らせて、それから魔術を解きますか?」

「ああ、それが一番だろうな…」

「………??」

僕が1人、会話についていけずオロオロしてる間に、お父様とお兄様はスィエルと戦い始めていた。お父様はショーテル、お兄様はガンブレードに魔力をのせ、強化して使っている。うなじや腹、急所を狙っているが、スィエルも流石の強さだ。やっぱり、簡単には攻撃を喰らわない。近接での戦いとなると、体力のない僕は不利だ。参加出来そうにもないから、サポートに回る。

2人の実戦は、何とも鮮やかだ。動きに、一切の無駄がない。攻撃を躱され、着地したときの姿勢は、既に次の攻撃への体勢に入っている。

《ザシュッ、》
《ギャオオオオオオン!!》

かすった感じの攻撃が何度も入る。でも、それじゃあ決め手にはならないし、ましてや気絶なんかさせられない。かすり傷でも、痛いものは痛いらしい。。攻撃を受けるたびにスィエルは激しく暴れ、また家が何軒か逝った。申し訳なさを感じるけど、仕方ない。

サポートとして、僕が3発ほどアクア・バル(水魔法)を放ったところで、スィエルも疲れてきたのか、動きが鈍くなる。チャンスと見極めたらしい2人は、一気に距離を詰めて、うなじへの集中攻撃に切り替える。僕は、6m位離れたところで、身体強化を2人にかけながら、様子を見守った。

(………?)

何か、おかしい。

さっきまで、お父様やお兄様に反撃していたスィエルが、今は逃げるばかり。

他の人が見たら、疲れて反撃も出来ないんだなって思うのかもしれないんだけど、僕にはそう思えなかった。

ていうか、スィエルの体が仄かに光っている。距離が近すぎるのか、2人はちっともそれに気付かない。

悪寒がする。何かわからないけど、すごく寒い。

(ヤバいっ、……)

《《ドンッ》》 
 

 
後書き
スィエルのイメージは、ホウオウそのものです(笑)

炎系の魔獣を登場させたいな、と思ったとき、真っ先に浮かびました。

アクア・バルはみずのはどうです(笑)
 
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