新訳紅桜篇
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
1 自分の感情には、客観的に。これ、常識。
前書き
鬼兵隊で働くようになって、3ヶ月…
上司のまた子から聞いた話によると、今度江戸の町を、火の海にする計画が実行されるらしい。
もちろん私は、一応「鬼兵隊」のメンバーになっているため、参加しなければならない。
高杉からも、主要メンバーとして、期待されてしまっている。
なんとか計画を阻止できないかと画策するアンナは、ある妙案を思いつく。
だが…それはあまりにも危険すぎた。
昨日、上司のまた子から、「江戸を火の海にする計画」のことを聞いた。
_江戸…銀時たちも住んでいるあの町を…
高杉らは、本気だったのか…。
だが、決して思い通りになんか、させない。
そのために私ができることはないか…
あ、そうだ!
_「先輩ィ、マジですか、それ?」
_「マジらしいッス。また私の腕を鍛えられるッス。
晋助様、やっぱ、素晴らしいッス」
_まったく…また子の高杉愛は、底なしだ。
暇さえあれば、高杉にくぎ付けだ。
あいつのどこがいいんだか…
私には理解できない。
誘拐の復讐の意味をも込めて、今回の計画は、とことん台無しにしてやる。
_「…ところで、実行する日は、いつですか?」
_「3か月後ぐらいだそうッス。」
_ヤバい…あんまり時間がない。
ここは1つ、演技のしどころか…
_「…先輩、実質あんまり時間ないですよね?
必要なものとか、全部そろったんですか?
なんか、お手伝いできることがあったら、喜んでしますけど…。」
_「とりあえず、何かすることあったら、私から言うッス。
だからとりあえず、武器の在庫確認とかから始めるッス。」
_「わかりました。」
_「で、終わったら、その書類を、コピーして、私と武市先輩のとこと、晋助様…
いや、総督のところに持っていくッスよ。わかりました?
で、その書類は、会議ん時に使うから、絶対精確に。
頼んだッス。」
_「分かりました。いつまでに提出すればいいですか?」
_「明日の早朝に会議があるんで、今日中に。
できれば、12時までには頼んだッス。」
_「了解しました。」
また子と別れると、まず昼ご飯を食べに行った。
今日のメニューは、「サバの生姜煮」だ。
これは私の好物。元気が湧いてくる。
受け取って、席につくと、相席で、岡田似蔵が座ってきた。
最近彼は、「紅桜」とかいう最新型の武器を装着したらしい。
なんとも薄気味悪い物体だが…。
_「あ、おはようございます、岡田先輩ィ。
今日は、どうされたんですか?」
_「紅桜を装着して最近、妙に違和感が強くてねぇ…。
なんというか…体が蝕まれるような…
自分の体が、自分のものではないような感じがするんだ。」
_!
それは相当危ないと、見た。
私が鬼兵隊に入った時から、私の本職と、彼の本職「人斬り」 が似ていたからか、
私と彼は、なんとなく仲が良かった。
今では、何でも相談しあう中だ。
もちろん、私は、そこまで深いところまでの付き合いはしていない。
せいぜい、他愛もないことの愚痴をこぼすくらいだ。
…例えば、上司のまた子と、どちらの足が長いかを争ったこと、とか…。
とにかく、しょうもないことだ。
_「それは、ヤバいんじゃないですか?
高…いや、総督にも、相談されました?」
_「いや、まだだ。というより、あの方はもうすでに、気づいてらっしゃると思う。
私は、そういう研究の、被験者になってしまったからねぇ…。」
_「…そうだったんですか…。
ってか、そもそも『紅桜』って、何なんですか?
武器ですか? それとも…」
_「…詳しいことはよく分からないが、どうやら、一見普通の刀だが、
使えば使うほど、体に侵食していくらしい。
まるで、私が私でなくなりつつあるようだ。」
_「へぇ…。」
_「だが今は、この船に、30本以上の紅桜が乗っているらしい。
あの方のご意向で、次 江戸の町を襲撃する際に、鬼兵隊の約4分の1の隊士たちに持たせ、
江戸を、火の海にするつもりだそうだ。」
_「そうだったんですか…。
そういえば私、また子先輩から 今朝、武器庫の中の武器の在庫を確認するように、と
言われました。その『紅桜』とやらも、武器庫の中にあるんですかね?」
_「ああ。多分あるだろう。」
_「わかりました…。では…私は、この辺で。
今から在庫の確認をしませんと。今日中には、書類を作って、提出せねばなりませんので。」
_「頑張りなされよ。」
仁蔵を置いて、席を立つ。
食器を食堂の回収レーンに出し、まず、また子のところへ行く。
書類の形式などの確認をしに。
また子に確認すると、データは全て、最近導入したばかりのタブレットで入力するように、
との、ことだった。
武器庫の前に来る。
また子から預かった鍵を手に、ロックを解除して、中へ入る。
カビ臭かった。
_こんなに臭いと、肺がんになる。
そう考え、在庫を確認しようとあたりを見渡すと、
どう考えても、1人で今日中に終われるような量ではない、大量の武器があった。
_また子のやつ…やってくれたな…
日頃の仕返しか…、まったく。
せめて、入力がタブレット式、というのだけでも、ありがたかった。
こういうところは、鬼兵隊に感謝する。
きわめて、合理的。
ため息をつき、どこから始めるか、目星をつけた。
腕時計を確認する。
_13:16 か…。
とりあえず、15:00までに半分は、終わらせよう。
そう決意して、まずは、左側から攻めることにした。
タブレットのメモ機能を活かし、
次々と片付けていく。
どうやっても届かない位置にある武器が、てこずった。
_う~ん…。どうやってもうまくいかない。
どうしたものか…
仕方がないので、とりあえず、見える範囲の武器をすべて数え上げ、
ひと段落着いたところで、時計を見る。
時間は、18:02を、指していた。
_ヤバい、今日は、晩御飯を食べられそうにない。
とりあえず、食堂で、おにぎりでももらってくるか…。
あ、そうだ。ついでに武器も失敬してこよう。
まだ上の方は数え終わっていないから、1つぐらい失敬しても、多分 バレない。
総督にもまさか、バレまい…。
失敬した武器は、部屋に隠し、脱出用に、取っておこう。
その瞬間、心臓がキリキリと痛みだした。
_ヤバい、「脱出」は、禁句だった。
とにかく、バレる前に 近くにあった武器を、衣装の左胸ポケットの帯の近くに、隠す。
隠し終えた瞬間、高杉が現れた。
_危ない…気づかれたか…?
ハラハラした。
ページ上へ戻る