おぢばにおかえり
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第四十話 神戸に帰ってその二十八
「結構な人ね」
「結構って迷惑してるのよ」
私はこうお母さんに言いました、自分でもむっとしたお顔になっているのがわかります。
「凄くいい加減で適当な子なんだから」
「それで先輩には色々教えてもらっています」
阿波野君の言葉です。
「本当に」
「おお、そうか」
「それは何よりね」
「いや、何でもないから」
私は本能的に変なものを感じて両親に言いました。
「この子とは」
「あれっ、そうなの?」
「何か誤解してない?」
お母さんにこうも言いました。
「ひょっとして」
「いや、だから交際してるんでしょ」
「してないわよ」
ムキになって否定しました、すぐに。
「そんなこと」
「あら、そうなの」
「そんなことある筈ないじゃない」
私は阿波野君を見てからお母さんに言いました、お父さんにも聞こえる様にして。
「絶対に」
「そこまで言うの?」
「この子は只の後輩よ」
心からの言葉でした、というか皆誤解しますけれど阿波野君はたまたま高校と所属の大教会が一緒だっただけです。
けれどです、何かお父さんもお母さんも阿波野君をとてもにこにことして見てです、私に言ってくるのでした。
「そうした子がいるならな」
「言えばいいのに」
「さて、どうした子かな」
「しっかり教えてね」
「教えてって見たままよ」
私はむっとした顔のまま両親に言うだけでした。
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