真田十勇士
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巻ノ百 後藤又兵衛その五
「関心があります」
「それはわしも同じ、とはいってもわしは真田殿より学問はせぬがな」
「それでもですか」
「武芸が好きじゃ」
やはり笑って言うのだった。
「だからな」
「贅沢にはですか」
「興味がない」
「では」
「うむ、そういうことじゃからな」
「このお屋敷にしても」
「この通りじゃ、これはずっとそうであった」
この屋敷だけでなくというのだ。
「わしは贅沢には興味がない」
「武芸にこそですな」
「興味があるのじゃ、そしてじゃ」
「今はもですな」
「うむ、武芸をしようぞ」
こう言うのだった。
「これからな」
「それでは」
「では清海殿」
「道場において」
「稽古をつけさせてもらう」
「そしてですな」
「免許皆伝までな」
まさにその時までというのだ。
「教えさせてもらう」
「それでは」
こう話してだった、一行は道場に入ってだった。
早速稽古をはじめた、後藤は激しい突きを繰り出しつつ相手をしている清海に対してこうしたことを言ったのだった。
「見事」
「左様ですか」
「うむ、これはじゃ」
まさにというのだった。
「天下の豪傑のもの」
「そうした腕ですか」
「まさにな」
そうだというのだ。
「これはな、しかしな」
「まだですな」
「そうじゃ」
こう言うのだった。
「まだまだじゃ」
「そうですか、では」
「励まれよ」
清海に槍を繰り出す、とはいっても先が袋になっている杖と同じものだ。清海も同じものを手にして振っている。
「こうしてな」
「はい、それでは」
「そしてじゃ」
さらに言う後藤だった。
「然るべき強さになれば」
「その時は」
「免許皆伝を授けよう」
「わかり申した」
「早くそこまでになられよ」
後藤は天下一とさえ言われた槍の腕を披露していた、それはまさに変幻自在で前田慶次のそれにも引けを取らなかった。
幸村もその槍を見てだ、思わず言った。
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