歌集「春雪花」
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人も問わぬ
音なき君は
影もなし
忘るもなしや
静心なく
誰も彼を知らない…彼の噂を聞くこともない…。
ここで私は…一体何を為せば良いと言うのだろうか…。
街角で…向かいの歩道で…彼を見掛けることさえ出来ないこの土地…。
穏やかに生きたい…だが、毎日心は乱れ落ち着かず…彼の事を考えてしまうのは…
彼を忘れることなぞ出来ない…きっと、そう言うことなのだろう…。
戯れて
狗尾草を
ついばみて
飛びゆく雀の
空ぞ悩まし
ふと…道端に茂る猫じゃらしに雀が留まる…。
仲間とじゃれては実をついばみ、ついばんでは戯れる…。
暫くすると私に気付き…雀はあっという間に飛び立ってしまった…。
見上げれば…雲の狭間に青空が垣間見える…。
どこまでも続く…彼の上にも続く空…。
あの飛び立った雀が羨ましく…恨めしく…。
この空さえも…悩ましく思うことよ…。
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