実は丸わかり
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第五章
「やっぱりね。私もね」
「嫌いじゃないのね」
「そうなのね」
「だから。あれだけ私のこと好きでいてくれるし」
自分のことが好きならばだというのだ。
「それにね」
「性格いいしね」
「ルックスも結構だし」
「頭もそこそこで」
「まあ。ストーカーだけれど」
「相当変わってるし」
その一途さがストーカーになっているからだ。変でない筈がなかった。このことは否定できなかった。
そうした話をしながら更衣室に入る。自分の制服を入れているロッカーの前に来てだ。
理絵はまずは上着を脱いだ。白いブラが露わになる。胸はあまりない。
そのブラの上にブラウスを羽織りながらだ。理絵は自分と同じく着替え中のクラスメイト達に言った。話はまだ続いているのである。徹についての。
「だから。言うけれどね」
「ええ、それでどうなの?」
「井上君のこと好き?」
「どうなの?」
「嫌いじゃないわ」
顔を赤らめさせて俯いてだ。理絵は気恥ずかしそうに言った。
「だから。待ってるけれど」
「告白をなのね」
「彼からの」
「そうなのよ。けれどね」
「彼、あれで臆病だからね」
「所謂へたれだからね」
恋愛にはだ。そうだというのだ。女の子達はこう指摘した。
「だからね。彼からはね」
「ちょっと告白はねえ」
「できるんならもうしてるわよね」
「とっくにね」
「待ってるのよ」
理絵はブラウスのボタンを留め終えてスカートを履いた。そのうえでそのスカートの中に手を入れて半ズボンを脱ぐ。今度はそうしながら言うのだった。
「私もね。けれどね」
「もう待っても無駄でしょ」
「彼、自分からは告白できないわよ」
「だからそれはないわよ」
「彼からはね」
「じゃあどうすればいいのよ」
半ズボンを脱いでそれを畳みながらだ。理絵は周りに問い返した。
「待ってるのに」
「待つよりアタックしたら?」
「自分からね」
「私から!?」
「そう、あんたから」
「女の子の方からね」
女の子達はこう理絵に告げた。他ならぬ彼女自身に。
「そうしたら?ここはね」
「相手が止まってるのならこっちから動く」
「そうしたらどうなのよ」
「それ。私もね」
どうかとだ。理絵の顔がまた変わった。今度はだ。
張り詰めて今にも千切れそうな顔になる。その顔での言葉だった。
「こうした経験ないから」
「それでなのね」
「言えないのね」
「告白とかしたこともないしされたこともないのよ」
本当にだ。こうした経験は全くないのだ。
「だからどうしたらね」
「やれやれ。じゃあここはね」
「ちょっと一肌脱ごうかしらね」
「?」
周りの仕方ないわね、という顔を見てだ。理絵はきょとんとなった。彼女達の言葉の意味がわかりかねたからだ。
だがそれから数日後だ。徹は急に呼び出しを受けた。
「ねえ、いいかしら」
「ちょっと来てくれるか?」
理絵のクラスの面々が何人かだ。徹のクラスに来て彼に言ってきたのだ。
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