| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

シベリアンハイキング

作者:和泉書房
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一章 カラケレイト
  猛る四足

数秒の後、霧の中に数個の影が動くのが見えた。動きは人より早く、四足の生き物のそれである。恐らく狼であろう。走ったところで追い付かれるのは目に見えている。すぐさま、脇から回転式の拳銃を抜き上空に一撃を放つ。しかし、妙なことに獣たちは逃げる気配が無い。確実に近くにいる。次の瞬間、不意に一迅の風が吹き、霧が晴れた。距離が二十メートルも無い岩のふもとに狼が五匹 。ユスフと目があった瞬間に狼達は猛然と突進してきた。瞬時に持っていた拳銃の引金を引く。一つ、二つとまず額を撃ち抜いた。次の二匹は喉元に弾が当たった。しかし、最後の一匹が三メートルまで迫っていて間に合わない。その一匹が勢いそのままユスフに跳びかかる。次の瞬間、鮮血が辺りに飛び散った。足元に頭を叩き割られ、顔面の潰れた、先程の狼が転がっている。噛まれるより早く、ユスフが背にしょっていた山刀を抜き、一撃を食らわせる方が速かった。辺りに静寂が戻った。危険は全て去った様に思われ、ふと安堵の溜息が出た。仕切り直しとして、山刀の血を拭い、拳銃に弾を込める。その時である、今まで何故気付かなかったのか、誠に不思議なことに、後ろから視線を感じるのであった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧