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歌集「春雪花」

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 夏草や

  なびく白雲

    想い寄せ

 影も絶へにし

    遠き夕暮れ



 青々と繁る夏草…動けぬ身をいっぱいに空へと向ける…。

 空には風に流されるままの白雲…。

 夏草は、揺蕩う白雲を羨ましく思うだろうか…。
 どんなに会いたくても彼に会えない私のように…。


 夕暮れの薄暗い紅の中…想えども彼はいない…。

 まるで…彼に会う以前の…ずっと昔に見た景色のようで…。



 松に鳴く

  蝉も恋しと

   侘び濡れど

 想ふばかりの

    涙なりけり



 松の木に蝉が留まり、耳障りな音をたてる。

 だが、それはまるで…恋しい相手を呼ぶような…。

 私とて、待っていても仕方のないことだと分かっている…。

 しかし…想わずにはいられず、いつかは…と、不相応にも考えてしまうのだ…。

 奇蹟でも起こらぬ限り…有り得ない夢幻…。


 想うばかりで…何も変わらぬ現実に、涙を零すしかない…。

 それが…私の人生なのだから…。



 
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