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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第100話:忠誠心と恋心

 
前書き
みなさ~ん、100話ですよ!
遂に100話ですよ!!
連載当初の想定では、こんなに続ける前に新しいリュカ伝に移行する予定だったのに…… 

 
(グランバニア城・宰相兼国務大臣執務室)
ウルフSIDE

軍部がホザック国境線から兵力を引き上げて数日が経過。
連続で別任務に就かせるのも可哀相なので、一旦王都へ戻し家族等との再会をさせるべく、現在グランバニア城内は見慣れない兵士たちで溢れかえってる。

王都勤務の奴と入れ替わる者もいれば、そのまま地方勤務が継続する者もいる。
地方勤務の奴は何かをやらかした者達だと思っていたが、如何やら大部分の者が自ら志願して地方へと赴いてるらしい。

忠誠心が高いと感心したが秘書官の一人のプロムが教えてくれた。
グランバニア軍は中央よりも戦地(の可能性)方が給料が高いのだそうだ。何時(いつ)何時(なんどき)戦闘が始まるか判らないが、常に危険手当が付随するらしい。
流石は軍務の秘書官だ。そこら辺の事情に詳しい。

だけど本当に忠誠心が高い者は、俺がグランバニアに来る前から地方の危険地帯を巡ってた者も居り、俺のような若造が宰相な事に驚く奴も大勢いる。
そんな中、忠誠心バリ高で俺を若造と見下さない元気な兵士が現れた。

彼は“クロウ”と名乗り、「御高名なウルフ閣下にお会いできて嬉しいです!」と瞳を輝かせながら怒鳴り込んできた。
「何だお前、声デカいなぁ……もっと小さい声で喋れよ。耳遠くねーんだから、俺」

「これは申し訳「ク、クロウ!? 貴方まで戻ってこれたの??」
彼の謝罪を遮ってユニさんが驚きの声を上げ立ち上がった。
お知合いですか?

「ユニ、会いたかったよ!」
お知り合いなのですね。
俺への謝罪を忘れたクロウは、立ち上がったユニさんに近づき抱きしめる。

「ちょ、ちょっとクロウ! 皆が見てるわ……」
「そうか……特定の相手が居ると思われたら、リュカ様の愛人になれないな」
いや、その女は胸が無いからリュカさんの愛人にはなれない……ってか誰だコイツ?

「閣下……彼はユニと一緒にこの国に売られに来た元奴隷です」
またしてもプロムの情報に助けられる。
所謂幼馴染ってヤツか……にしてはグイグイ迫るな、この男。

「因みに二人は恋仲ですよ」
「え、マジっすか!?」
プロム氏の追加情報にガチ驚く俺。

「ちょ……プロム殿! 私はクロウとは……その……別に……」
「そうですよプロムさん。俺はユニがリュカ様のご寵愛を得られなかった時は、結婚してくれってお願いしてるだけで、現在は状況を判別中なんですよ」

「じゃぁもう結果は出てる。リュカさんはその女に手を出さない。出す気が少しでも有ったら、既にその女は処女じゃなくなってるし、一児か二児の母になってるよ。だが俺の知る限りじゃその女は処女で、子供も居ないはずだ……居ないよね?」
「居ないわよ!」

言ってるうちに不安になったから、子供の有無を聞いてしまった。
勿論即答で居ないと睨みながら言われた。
怒らなくても良いのに……

「それにアンタが存在してるのなら、リュカさんの“ユニさん愛人化計画”なんて気にする必要なかったのに。そういうことに目敏い男だから、お二人の気持ちは遥か昔から理解してただろう。手なんか出す気は毛頭無かったろうね……その女、乳小せぇし」

「あ、ホントだ。昔とサイズが変化して無い!」
胸の事を言われ、すぐさま手を当てて確認するクロウ。
そして俺がこの国に来る以前に記憶してたサイズと違わぬ事に驚いてる。

「余計なお世話だ!」
服の上からとはいえ乳を揉んでる男には睨みを利かせないのに、小ささを話題に出した俺には凄く睨んでくる。ラブラブだからか?

「はいはい。乳揉まれてる序に、ユニさんには休暇を与えるから、今すぐ彼氏と一緒に帰りなよ。2.3日ベッドの中で腰振ってて良いからさ」
リュカさん以外に興味が無いと思ってた部下に、実は幼馴染が彼氏だったという事実を突きつけられた事と、リュカさんの判断待ちという不毛な時間を体験してた事で、俺は二人を不憫に思い、気を使って余暇を言い渡した。

「だ、駄目ですよ……仕事はサボれません!」
一瞬だけ嬉しそうな顔をしたけど、すぐに顔を戻して拒否してきた。
真面目だなぁユニさんは。

「そうですよ閣下。俺はもっと重要な要件があってここに参ったのですから」
初めから真面目な表情だったクロウは、継続させた表情のまま本日の出頭目的を臭わせる。
彼女の乳揉みに来るのだって、十分重要だと思うけどなぁ。

「何、重要な要件って? 彼女と3Pしたいから、俺に参加しろとか言う?」
「言いません。リュカ様以外には絶対彼女を渡しません」
俺の冗談にニコリと笑顔で返す彼氏の傍で、顔を真っ赤にして俯いちゃう可愛いユニさん。今更ながらに彼氏が居る事が残念に思えてきましたよ。

「んじゃ本題をそろそろ頼む」
「はい。先ずはリュカ様へのお目通りをお願いします」
「……勝手に会えば良いじゃん」
「そうはいきません。この件では、宰相閣下にも同席して頂きたいのですから」

「ふむ。つまり筋を通したのか? リュカさんに先に会って要件を伝えても、宰相の俺が絶対に呼び出されるから、先に位の低い者に接触をし、上位者へと橋渡しをさせた……と?」
「それもありますが、下っ端の俺が理由で宰相閣下が呼び出されるのは不愉快でしょ?」

「いや、不愉快じゃないよ。だって俺、平宰相って呼ばれてるんだもん。この国のナンバー2なのに、そんなに偉くないんだもん」
「そんな事仰ってるのは閣下だけですよ」

俺の卑下にも似た謙遜プリを見て、クロウは気を使ってくれる。
だけど「いえクロウ。そんな事ないわよ」とユニさんが活発に発言。
何かこの女、俺を蔑む時だけ生き生きと発言する。

ウルフSIDE END



(グランバニア城・国王執務室)
アローSIDE

学校から帰ると城の兵士に『宰相閣下が呼んでたよ』と言われ、何か仕事の依頼があると思い、駆け足でアニキの仕事部屋へ行く。
以前と違い人も多く、部屋に入ると大勢の視線を受けるから少し嫌だ。

手早く要件を済ませようとアニキの机に目をやったが、当人がそこには居なかった。
だけどユニさんが『あっちよ』と応接室を指さし、アニキの居場所を教えてくれた。
オイラはユニさんに『ありがとう』と言って、応接室へ入る。

オイラが入ってくると、アニキはソファーから立ち上がり……
『お前に内密で仕事を依頼したい』
と言って、100(ゴールド)を手渡してきた。

ビックリだ……
100(ゴールド)も貰える仕事って何だろう?
大変な事には違いない。

取り合えず貰うだけ貰って仕事内容を聞こうとしたら、
『詳しくはリュカさんから指示がある。リュカさんの執務室へ行き、指示に従ってくれ』
と言われた。

更に、『俺から100(ゴールド)受け取った事は黙ってろ。リュカさんに『アローを使うなら依頼料は100(ゴールド)だ』と言っておいたから、黙ってればリュカさんからも金がもらえる』って言われた。

おいおい……
200(ゴールド)の仕事って何だよ!?
何か怖いけど、200(ゴールド)の魅力には勝てない。
これまた取り合えずリュカさんの部屋へ訪れる。

リュカさんの部屋へ来たみたが、リュカさんはリュカさんじゃなくなっていた。
え~と……何て言うの?
そう、変装だ!

変なメガネと鼻の下に付け髭をして、何時ものリュカさんとは違う感じになっていた。
ビアンカさんも一緒に居て、やっぱり変装してオイラの事を待っていた。
何時も見慣れた二人だから、変装してても誰だか判る。一体何の意味があるのかな?

「おう、来たな。ウルフに言われたから、先に100(ゴールド)渡しとく」
「あ、ありがとうリュカさん……」
アニキに渡された100(ゴールド)と同じ様に、リュカさんからの100(ゴールド)もポケットに仕舞ってリュカさんからの指示を待つ。

「今から僕は“プーサン”でビアンカは“ルービス”だ。まぁお前は僕らの事を“父ちゃん”・“母ちゃん”と呼べば良い。ほれ呼んでみろ」
「え、急に何?」

何言ってんのこの人?
もう全然意味が解らないよ。
何で急にリュカさん達を父ちゃん・母ちゃんと呼ばなきゃならないの!?

「ほら、日が暮れる前に“モストゥーン村”へ行くわよ」
オイラが困っていると、オイラの入室前には準備が完了してたビアンカさんから、出発の催促がかかる。モストゥーン村って何処?

「モストゥーン村へ直接ルーラで行く訳いかねーから、一番近くのヒストニス村へ行って、魔法の絨毯で西に移動。モストゥーン村が見えてくる前に魔法の絨毯を仕舞って、馬車(パトリシア)と一緒に歩いて入村。うん、急いだ方が良いね」

また知らない村名が出てきた。
ヒストニス村って何処の事だよ!?
何でそんな所に行かなきゃならないの?
ってか、何で直接ルーラで行けないの??

オイラの疑問は何一つ解消される事無く、ビアンカさんに手を引かれ急ぎ足でリュカさんの仕事部屋から出て行く事になる。
オイラもしつこく聞けば良いんだけど、親との記憶が無い為、手を握って出掛ける事に何だか嬉しくなっちゃって、ただ黙って従ってしまう。

連れて行かれるまま身を任せると、グランバニア城の1階に到着。
あまり近寄らない厩舎の方に移動……そこには白い綺麗な馬と、その馬に付けられた丈夫そうだが小汚い馬車があり、馬車の中には色々な家財道具が収まっていた。

夜逃げかとも思ったけど、厩舎に居た係の人もリュカさんの行動に疑問を持つ素振りも見せず、小声で「いってらっしゃいませ」と言って送り出す準備万端だった。
うん。夜逃げじゃ無いな……

「やぁパトリシア。今日はビアンカも一緒だから、喧嘩なんかしないでよね?」
「流石に馬となんか喧嘩しないわよ」
何故ビアンカさんが馬と喧嘩しないか心配してる理由は解らないが、この馬はパトリシアと言うらしい。

そのパトリシアを引き連れて屋根の無い場所まで来ると、リュカさんはオイラの肩に手を置いて優しい声で呪文を唱える。
「ルーラ」

一体何処へ行くのか……
一体何をするつもりなのか……
ってか、200(ゴールド)の仕事って何なのか!?

疑問は何も解決してないけれど、兎も角オイラはリュカさんとビアンカさんを父ちゃんと母ちゃんって呼べば良いらしい。
本当にそれだけなら、こんなに美味しい仕事はない。

やっぱりアニキは優しいなぁ。

アローSIDE END



 
 

 
後書き
新キャラですが、名前を「クロウ」にするか「クロス」にするかで悩みました。
ユニの彼氏なのでクロって名前にしたかったけど、トロの友達っぽくなっちゃうからそれは止めました。
でもクロウって、変換すると『苦労』って出てくるから、失敗かもしれませんね。
今後彼が登場して、変換ミスがあったら優しく教えてください。

全然関係ない話しですけど、ユニクロって安くて良いですよね。 
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