おぢばにおかえり
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第四十話 神戸に帰ってその二十六
だからね」
「泳がないんだな」
「というか水着にならないの」
お父さんに言いました。
「好きじゃないから」
「まあそれはね」
お母さんは水着が嫌という私に言いました。
「別にね」
「いいの?」
「そこまで嫌なら」
それならというのです。
「いいわ、ただね」
「ただ?」
「いざって時は泳げたらいいわよ」
「溺れた時とか」
「そう、助かるから」
だからだというのです。
「それに越したことはないわよ」
「そうなのね」
「やっぱりね」
そんなことをお話しながら海水浴場のところを歩いていたのですが。何か前から見た様な男の子が来ました。
その子を見てです、最初はでした。まさかと思ったのですが。
「えっ・・・・・・」
「あっ、先輩」
阿波野君でした、ジーンズに白いシャツというラフな出で立ちですが間違いなく阿波野君でした。その証拠にです。
私のところに来てです、にこにこと笑って言ってきました。
「そういえば実家こっちでしたね」
「何でここにいるのよ」
驚きを隠せない顔で、です。私は阿波野君に言い返しました。
「奈良じゃないの、お家は」
「こっちに親戚がいまして遊びに来たんです」
「そうだったの」
「まさかお会い出来るなんて思っていませんでした」
「思うも何も」
それこそというのでした。
「どうして会うのよ」
「千里、この子は?」
お母さんが私に聞いてきました。
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