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Dragon Quest外伝 ~虹の彼方へ~

作者:読名斉
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Lv39 アリシュナでの密談

   [Ⅰ]


 度重なる俺達の集中攻撃を受け、テンタクルスはかなり動きが鈍くなっていた。
 出現した時は10本あった触手も、今は辛うじて2本だけが動いているだけであった。もうあと一息といったところである。
 しかし、少し気になる事もあるのだ。
 それは何かというと、テンタクルスの触手の1つに祝福の杖が巻き付いているからである。
(あの杖のお蔭で少し手間取ったが、もうそろそろコイツも終わりだろう。でも……あの杖、最近どっかで見た気がするんだよな……どこだったっけ……)
 などと思っていたその時、前衛3人が剣に炎を纏わせ、攻撃を開始したのである。
 そう、ドラクエでお馴染みの特技・火炎斬りというやつだ。
 3人の掛け声が聞こえてくる。
「ハァァ!」
「ムン」
「セヤァ!」
 炎を帯びた3つの赤い刃は、テンタクルスに容赦なく襲い掛かる。
 そして、その直後、ジュウと焼け焦げる音と共に、テンタクルスはゆっくりと動きを止め、奴の巨体はズブズブと湖の下に沈み始めたのであった。
 俺はそこで安堵の息を吐いた。
(フゥゥ……これで終わりだな。思ったより時間が掛かってしまったが、危険は回避したから良しとしよう)
 ウォーレンさんもホッとした表情で、肩の力を抜いた。
「ようやく倒せたか……。しかし、打たれ強い魔物だったな。初めて見る魔物だが、倒せてよかったよ」
 魔導騎士の1人が相槌を打つ。
「ええ、全くです。おまけに、触手の力も凄かったですよ。私も一度だけ、攻撃を受けましたが、一瞬、気を失いかけるほど強力でしたから」
「俺も目の前で見てたから、よくわかるよ。しかし、ラリホーが効きやすい敵だとは思わなかったな。コータローの早い対応のお蔭で助かったぜ。礼を言うぞ」
 ウォーレンさんはそう言って、俺に笑顔を向けた。
「別に礼はいいですよ。強そうに見えたんで、早めの対応を心がけただけですから」
「なるほどな。でも……あの状況でよくラリホーを選択できたな。新種の魔物の場合、ラリホーやマヌーサ系は中々効かないから、攻撃魔法を選択する事が多いのに」
 嫌な流れになりそうなので、それっぽい事を言っておこう。
「実は以前、コイツとよく似た魔物に遭遇した事があったんですよ。で、そいつが、ラリホーやマヌーサに弱かったもんですから、物は試しにと唱えてみたんです。だから、そう驚くほどの事でもないですよ」
「へぇ、そうだったのか。まぁさっきの戦いぶりを見る限り、コータローはかなり戦闘経験がありそうだから、その辺の勘は冴えているんだろう。あんな戦い方する魔法使い、初めて見たぜ」
「そこまでのモノでもないですよ。さて、それはそうとウォーレンさん。そろそろ移動を再開しましょう。また魔物が来るかもしれませんから」
「ああ、勿論だ」
 ウォーレンさんはそこで魔導騎士達に言った。
「戦闘が終わってすぐで悪いが、動かしてもらえるだろうか。それとできたら、少し速度を上げて頼む」
「ええ、勿論そのつもりです」
 魔導騎士2人は先程よりも幾分力を籠め、オールを漕ぎはじめた。
 舟は静かに動き始める。
 と、そこで、テンタクルスがいた所に、白い杖がプカリと浮かび上がってきたのである。
(ン? あれは……祝福の杖だ。とりあえず、回収しておくか)
 俺は魔導の手を使って、祝福の杖を回収し、暫しそれを眺めた。
(外観はアーシャさんのと同じ物だな。至って普通の杖といったところか。でも、つい最近、これをどこかで見た気がするんだよな……どこでだったか……アッ!?)
 そこで俺は思い出した。
 ついさっきまで一緒にいた人物が、祝福の杖を持っていた事を……。
(そういえば、ロダス神官も祝福の杖を持っていたが……まさか、な。とはいえ、その可能性もあると考えておいた方がいいだろう。魔物達は、人間に化けれる手段を持っているし……。だが仮に、もしそうだったならば、ここから先、イシュラナの神官達は要注意だな。それに、さっきの事もある……油断はしないに越したことはない……)
 などと考えていると、そこでハルミアさん、もといアヴェル王子が俺に話しかけてきた。
「その杖がどうかしたのですか?」
「いや、戦利品としてもらっとこうかなと思いましてね」
「そうですか。……ところで、つかぬ事を訊きますが、コータローさんはアレサンドラ家に仕えておいでなのですか?」
 妙な質問してきたな。
 こんな事を訊いてくるという事は、多分、アーシャさんの件を知ってるのだろう。
「いや、仕えておりませんが……」
 するとアヴェル王子は、少し驚いた表情を浮かべたのである。
「え、そうなのですか? ウォーレンから、ソレス殿下のご息女を王都まで護衛してきたと事前に聞いていたものですから、てっきり、アレサンドラ家に仕えているのかと思ってました。そうですか……仕えておられないのですか……」
 アヴェル王子の表情は、どこか釈然としないモノであった。
 まぁこうなるのも無理はないのかもしれない。
 さて、なんて言っておこうか……。
 とりあえず、ヴァロムさんの事には触れないように注意しながら、それとなく話すとしよう。
「アーシャ様を王都まで護衛したのは、兄であるティレス様から冒険者として依頼されたからなんです。なので、そんな大した理由ではないですよ」
「え? コータローさんは冒険者なのですか?」
「はい。実はそうなんです」
 俺はそこで、首に掛けたドッグタグを見せた。
「そうだったのですか。しかし、ソレス殿下のご子息であるティレス殿から直々に依頼されるという事は、コータローさんは相当に腕が立つ冒険者なのですね」
 この流れを早く断ち切りたい俺は、爽やかに笑いながら話題を変えてみる事にした。
「ははは、そんな大層なもんじゃないですよ。おや……向こう岸が薄らと見えてきましたね。ようやく、地面に足をつけられそうです」
 だが、アヴェル王子はしぶとかった。
「いいえ、とんでもない。……先程の戦いを見ましたが、あれはその辺の冒険者が出来る戦い方じゃありませんよ。高い魔力と武芸を兼ね備えた我が国最精鋭の騎士・パラディンでも、あそこまで魔力制御できる者はどれだけいるか……。それに、魔法の扱いに秀でた第1級宮廷魔導師でも、あそこまで魔力を自在に制御できるのは、そうはいません。オルドラン家の現当主ディオン様やその御子息、そしてアルバレス家の才女シャール様のような、一握りの者だけだと思います。ですから、私はさっき、凄く驚いたのですよ」
「そ、そうっスカ」
 う~ん……何か知らんが、とりあえず、俺はまた余計な事をしてしまったのかもしれない。
 この反応を見る限り、ヴァロムさんによる鬼修行の成果の程は、凄かったという事なのだろう。しかし、今はそれが仇となっているみたいだ。痛し痒しである。
(はぁ……どう答えりゃいいんだよ)
 と、ここで、ウォーレンさんが俺達の会話にログインしてきた。
「今のところ、魔物の気配はないようだな。どうやら付近にいたのは、あの3体だけだったのだろう。ところでコータロー、さっきの光の剣みたいなのは、何なんだ? あんな武器初めて見たぞ」
 ナイスタイミングで話題を変えてくれたので、某奇妙な冒険漫画に出てきたギャンブラーの如く、俺は脳内で呟いたのであった。
(グッド!)
 まぁそれはさておき、俺は魔光の剣を手に取り、ウォーレンさんに見せた。
「ああ、コレの事ですか。これは魔光の剣と言いまして、魔力を刃に変換する魔導器です。魔法使い専用の武器といったところでしょうか」
「ほう……ちょっと見せてもらってもいいか?」
「どうぞ。使い方は簡単で、柄を握って魔力を籠めるだけです」
 ウォーレンさんは魔光の剣を手に取ると、魔力を籠め、光刃を出現させた。
「へぇ、なるほどな……」
「その剣は使用者の魔力圧と、籠める魔力量で威力が変わるんです。なので、扱いが難しいんですが、条件が揃えば、一撃必殺の威力を持っているので、俺は重宝しているんですよ。魔法が封じられても、これがあれば対処できますからね」
「どこで手に入れたんだ?」
「マルディラントの1等区域にある武器屋です。ですが、その剣はマルディラントにいる魔導器製作家が作った試作品なんですよ。しかも、あまり評判が良くなかったそうですから、正式には売りだされてないかもしれませんね」
「そうなのか? だが、あの魔物を一撃で仕留めたところを見ると、中々、良い武器だと思うがな」
「しかしその分、魔力の消費も半端じゃないんですよ。それがこの魔導器の弱点なんです。……ですが、その問題も、もう少しで改善されることになるかもしれませんが……」
「なんでだ?」
「実はこの間、その製作家の方と直接会う機会があったので、そこでこの武器の改善点を伝えたんです。そしたらですね、魔力消費を調整した物を製作してくれる事になったんですよ。まぁそんなわけで、今はそれを心待ちにしているところなんです」
「へぇ、そうなのか。なんか、俺も欲しくなってきたな。今度、その魔導器製作家に会ったら、俺の分も頼んでおいてくれよ」
 この様子を見る限り、ウォーレンさんもジ○ダイ化しそうな気配だ。
 仲間が増えるのはいい事である。
「いいですよ。じゃあ、受け取りに行ったとき、ついでに言っておきましょう」
「では私の分もお願いしといてもらえますか。高い魔力圧も必要なのだとは思いますが、あの威力は凄かったですからね」と、アヴェル王子。
 2人には興味深い武器なのだろう。
「わかりました。頼んでおきましょう」――

 とまぁそんなやり取りをしつつ、俺達は進んで行くわけだが、その途中、俺はミロン君からこんな事を訊かれたのである。

「あのぉ、コータローさん……1つ訊かせてもらってもいいでしょうか?」
 妙な質問は勘弁してくれと思いつつ、俺は爽やかに訊き返した。
「ん、なんだい?」
「さっきの戦いぶりを見ていて思ったのですが、コータローさんて……魔法使い……ですよね?」
「俺か? 俺はただのジェダ……ゲフン、ゲフン。ただの魔法使いさ」
 ウォーレンさんは、すかさずツッコミを入れてくる。
「いや、ただのではないだろ……。というか、その前のジェダって何だ? ジェダって……」
「な、何でもありませんよ。さっきの戦いで喉が渇いたので、舌が引っ掛かっただけです……ナハ、ナハハハ」
 というわけで、相も変わらず、ケイシー・ラ○バックみたいになる俺なのであった。


   [Ⅱ]


 魔物と遭遇することなく、無事、桟橋へと辿り着くことができた俺達は、送ってくれた魔導騎士達に礼を言った後、付近にあるウォーレンさんの馬車へと向かった。
 馬車の周囲には、出発した時と同様、見張りをする兵士達の姿があった。
 見たところ、争った形跡も見られないので、恐らく、何も異変はなかったのだろう。
 俺達が馬車の前に来たところで、兵士達は頭を下げ、労いの言葉を掛けてきた。
「ご苦労様でした、ウォーレン様にハルミア様」
「お前達もご苦労だったな。ところで、何か変わった事はなかったか?」
「いえ、特に何も。ここはずっと平和そのものでした」
「それはよかった。俺達は湖で、強力な魔物に襲われてしまってな。大変だったんだよ」
「なんと……そうだったのですか。御無事で何よりです」
 魔物に襲われたのは、どうやら俺達だけのようだ。
 もしかすると俺達は狙われたのかもしれない。確証はないが……。
 まぁそれはさておき、ウォーレンさんはそこでアヴェル王子に話しかけた。
「さて、ではハルミア殿……これからどうしますかな。もう少し、あの遺跡について調べてみましょうか?」
「しかし、調べると言ってもだな……もうアレには、これ以上の事は記述されていない。その上、我々が用意した鍵でも駄目となるとな……どこから手をつければよいやら」
「ですが、このまま放っておくわけにもいきますまい。半年に及ぶ調査の結果、異変の中心があの島なのは、もはや疑いようのない事実ですからな」
「それはわかるが……」
 アヴェル王子は溜息を吐き、肩を落とした。
 かなり落胆の色が窺える仕草である。
 イシュラナ神殿側に不快な思いをさせてまで挑んだ実験が失敗に終わったのだから、こうなるのも無理はない。
(だがまぁ、俺は自分のやれることはやったし、もういいだろう。結果はどうあれ……依頼は達成だ。ン?)
 などと考えていると、アヴェル王子はそこで俺に視線を向けた。
「ところでコータローさん……帰り際、ハーディン隊長に妙な事を色々と訊いてましたが、もしかして、遺跡の謎がわかったのですか?」
「いや、流石に、遺跡の謎はわかりませんでした。ですが、それ以外に、幾つかわかった事もありましたよ」
「ほぅ……で、どんな事がわかったんだ、コータロー」と、ウォーレンさん。
 俺はとりあえず、兵士達に聞こえないよう小さな声で、自分の見解を告げる事にした。
「では重要なところだけ2つ言いましょう。まず1つ目ですが、ロダス神官は初めてあの遺跡に来たと言ってましたが……違いますね。彼はあの遺跡に以前、来た事があると思いますよ」
 アヴェル王子が眉根を寄せて訊いてくる。
「え……どういう事ですか?」
「どうもこうも、その言葉通りです。それともう1つ。ここが重要なんですが……浄界の門は何者かによって、既に開かれてる可能性がありますね。それを裏付けるような痕跡もありましたし」
 と、その直後、3人は大きく目を開き、俺に詰め寄ってきたのである。
「何だってッ!?」
「えぇッ!?」
「そ、それは本当かッ! なぜそう思うんだ?」
「今ここで、その理由を話してもいいのですが……ここじゃ色々と都合が悪いんじゃないですか?」
 俺はそう言うと、兵士達をチラ見した。
「た、確かに、そうだな……ここじゃあまり大っぴらに話すのは不味い」
「この際だ、ウォーレン。アノ場所へ、コータローさんも一緒に来てもらうのはどうだろう? アノ場所なら、そうそう人目につく事もあるまい」
「そうですな……確かに、あそこならゆっくりと話せそうです」
 名前を言わずに話しているところを見ると、秘密の場所なのだろう。
(しかしこの王子……こんな変装までして外をうろついてる事を考えると、かなり裏でコソコソとしてるに違いない。一体、何考えてんだか……。そういえば、マチルダさんだったか……やる気が無くて、フラフラしてるとか言ってたのは……。だがまぁ、この人の場合、やる気がないというよりも、この人なりに国を思っての行動な気がするから、そこまでいい加減な人ではないだろう。多分……)
 ふとそんな事を考えていると、ウォーレンさんの声が聞こえてきた。
「ではコータロー、とりあえず馬車に乗ってくれるか? 続きは次の所で聞かせてもらうとしよう」
「わかりました」
 とまぁそんなわけで、俺達は場所を変える事となったのである。


   [Ⅲ]


 アリシュナへと戻ってきた俺達は、護衛の兵士達と別れた後、やや西の地域にある真っ白な四角い屋敷の前へとやってきた。
 馬車の車窓から、俺はその屋敷を眺める。
 屋敷は3階建てのローマ建築風の建物で、外観は白く美しかったが、周囲にある建物と比べると、それほど大きくはなかった。見た感じだと、40坪程度だろうか。
 だが立派な庭をしており、そこには、美しい水を湛える丸い池や噴水に加え、綺麗に剪定された木々や、馬にまたがる白い騎士の石像といったモノが、非常に見映えよく配置されているのだ。
 それはまさに、貴族の庭園といった感じの光景であった。
(良いなぁ、こういうの……建物はそんなに大きくはないけど、こんな綺麗な庭を眺めて過ごすのなら悪くない。でも、ここは一体、誰の屋敷なんだろ……)
 つーわけで、俺は訊いてみた。
「ウォーレンさん、ここは誰の屋敷なのですか?」
「ン、ここか? ここはヴァリアス将軍の旧家だ。今は別邸となっている所さ」
「別邸……という事は、ここに将軍の御家族は住んでおられないのですね」
「ああ。ヴァリアス将軍の御家族は今、上のヴァルハイムに住んでいるからな。ここには屋敷を維持管理する使用人が僅かにいるだけだ。一応、自由に使えばいいと言われているんで、俺達は時々、使わせてもらっているんだよ」
「へぇ、そうなんですか」
 昔、アリシュナに住んでいたという事は、出世したからヴァルハイムに引っ越したのかもしれない。
 多分、将軍職は世襲じゃないんだろう……。
 などと考えていると、そこで馬車は止まった。
「さて、それじゃあ、着いたようだから門を開けてくる。少し待っていてくれ」――

 その後、俺はアヴェル王子とウォーレンさんに案内され、屋敷内のとある一室へと通された。
 ちなみにそこは、立派なテーブルとソファーが置かれた広い部屋であった。
 美術品などが飾られているところを見ると、多分、応接間として使っていた部屋なのだろう。
 まぁそれはさておき、部屋の中に入ったところで、アヴェル王子は俺に座るよう促してきた。
「コータローさん、好きな所に掛けてください。私は王子ではありますが、今はお忍びです。格式ばった礼節は必要ありませんから」
「じゃあ、お言葉に甘えまして」
 俺はそう言って、ソファーの1つに腰を下ろした。
 続いて、他の3人もソファーに腰を下ろす。
 というわけで、ここから密談が始まるのである。
 まず第一声はアヴェル王子からであった。
「使用人達には用事を与え、一時的に屋敷から出てもらいました。ですから、今此処にいるのは我々だけという事になります。これならば大丈夫でしょう。さて、それではコータローさん、先程の続きを聞かせてもらってもいいでしょうか?」
「わかりました。お話ししましょう。ではまず、なぜそう思ったのかという事ですが……その前に……皆さんは祭壇のある部屋に来た時、ロダス神官が言っていた内容を覚えてますでしょうか?」
「ロダス神官が言っていた内容ですか……それは部屋の中に入ってすぐにあった、ウォーレンとのやり取りの事ですか?」
「ええ、そのやり取りです」
「あの時の内容といっても、そんなに大した話はしてないぞ。あの神官は、失敗するだろうからやめておけと言っていただけの気がするが」
「ええ、確かにそうなのですが、私が問題視しているのはそこの事ではなく、その後の言葉なんですよ」
「後の言葉?」
 3人は首を傾げる。
 気づいてないようなので、話を進めることにした。
「あの時、ロダス神官はこんな事を言っていたんです。『その石碑に書かれている浄界の門とやらが上がるかどうかは、やってみなければわかりませんからね』とね」
「それがどうかしたのか?」
「門が上がる……門が上がる……なんか気持ち悪い言い方じゃないですか? 普通、門は開くと表現するんじゃないですかね。ウォーレンさんが石碑の内容を解読した際も、『門が開かれる』となってましたし」
「そういえばそんな事を言っていたな……まぁ確かに語呂の悪い言い方だが、それの何がおかしいんだ?」
 ウォーレンさんはそこまで疑問に感じないようだ。
 仕方ない。答えを言おう。
「実はですね、その言葉を聞いてからというもの、私はこう考えてたんですよ。『おや? この人、何で門が上がると思ったのだろう』とね……。そう考えるとですね、導き出される可能性は2つしかないんですよ。1つは間違えてそう言ってしまった可能性。もう1つは門が上がる事を前から知っていたという可能性です」

【アッ!】

 ようやく3人は気付いたようだ。
「まぁそんなわけでですね、それがずっと引っ掛かっていたもんですから、俺はどこかに物が上がった形跡はないかと調べてみたんです。そしたら……あったんですよ。上がった形跡が」
 ウォーレンさんが前のめりになって訊いてくる。
「なんだと……それは本当かッ!? どこにそんな形跡があったんだ?」
「あの紋章が描かれている正面の壁と床の境目ですよ。そこに壁が上がったと思われる形跡がしっかりと残っておりました」
 ミロン君がここで声を上げた。
「あ、そうか! あの挟まった落ち葉が、その証なんですね」
 俺は頷いた。
 ようやく気付いてくれたみたいだ。
 アヴェル王子が訊いてくる。
「なんですか、その挟まった落ち葉というのは?」
 俺はそこで、懐から1枚の黄化した葉を取り出し、テーブルの上に置いた。
「壁と床の間に挟まっていたのは、これと同じ種類の落ち葉です。外から入ってきた落ち葉が、壁と床の間に挟まるという現象は、普通有り得ませんからね。ですから、あの壁が動いたとみて、ほぼ間違いないと思いますよ」
「なるほど……確かに、コータローの言うとおりだ。落ち葉が自然に、壁と床の間に挟まるなんて事は、まずあり得ないな」
「ええ、有り得ません。それとですね、この黄化した落ち葉は、壁が上がった事を証明するほかに、もう1つ別の事も語っているんですよ」
「別の事?」
「ええ。この落ち葉は、こう言ってるんです。……壁が上がったのは、それほど前ではないという事を」
 3人は俺の言葉を聞き、落ち葉を凝視した。
 ウォーレンさんは落ち葉を手に取り、ボソリと呟く。
「まだ完全に枯れていないところを見ると、確かに、そんなに前ではない。そうか……だからコータローはあの時、ハーディン隊長にあんな事を質問していたのか……」
「ええ、だからです」
 アヴェル王子が訊いてくる。
「……コータローさんはどう考えているのですか? ハーディン隊長は、アズライル猊下の一団が我々の前にやって来たと言ってましたが、浄界の門を開いたのはアズライル猊下だと?」
「いや、その辺はまだ何とも……。可能性はあると思いますが、断言はできません。確実な証拠がありませんからね」

 一応、そう答えたが、7割方はそうだろうと考えていた。 
 なぜなら、あの島の厳戒体制を考えると、外部からの侵入は難しいと言わざるを得ないからだ。つまり、浄界の門を開いたのは、あの島に上陸しやすい者の可能性が高いのである。
 そして更に、浄界の門を一番開けやすい条件となると、魔の島にすんなりと上陸できる人物であり、警備する魔導騎士や神官達が怪しむ事など全くない、身元のハッキリとした地位の高い人物、それから遺跡に入る為の鍵を自由に持ち出せる立場の人物であって、立会人である神官達が逆らえない人物で、それでいて、王族に影響力がある人物が、一番可能性が高いのだ。
 要するに、今のところそれらの条件に適合する訪問者は、アズライル猊下の一団だけなのである。
 それだけじゃない。浄界の門が開かれたと仮定してあの部屋の状況を考えると、入り口の扉が開いていて、外は強い風が吹いていたと考えるのが自然だからだ。
 扉を開けっぱなしにしていたのは、恐らく、暗い神殿内に外の光を取り入れる為だろう。
 さっき俺も中に入ってわかった事だが、朝の日射しならば、いい感じに光が届くので、レミーラや松明がなくても十分に明るくできるからである。
 そしてこの事実が、俺がロダス神官に不審を抱くきっかけになった事でもあるのだ。
 理由は勿論、厳戒態勢を敷いているにも拘らず、神殿の扉を閉めなかったからだ。
 そう……あれだけ厳戒態勢を敷き、入口を開けっ放しにするという行動は、首尾一貫していないのである。
 
 俺がそんな事を考える中、アヴェル王子は質問を続けてきた。
「そうですか……。ところで、ハーディン隊長とのやり取りで、最後に王族の者がいたのかどうかを訊いてましたが、あれはどうしてですか?」
「ああ、それはですね。遺跡で試された事は、8割がた成功しているんじゃないかと思ったからですよ」
「コータローもやはりそう思うか」
「ええ。少なくとも、『4つの祭壇の力が満ちた時』というくだりのところまでは成功していると思うんです。実際、石碑に書かれていたとおり、中央の祭壇にあの紋章が浮かび上がってきましたから。となるとですね、石碑は今のところ、嘘は言ってないということになります。で、それを元に考えるとですね、お2人が試された『聖なる鍵』と『光迸る雷の力』の解釈が間違っているのではないかと思うんですよ」
「なるほどな……ちなみにコータローは、何が間違っていると思う? やはり聖なる鍵の部分か? それとも両方か?」
「4つの力の解釈が合っていたとするならば、間違っているのは『聖なる鍵』の解釈となるでしょうね。まぁそれもあったので、私は王族の方が一団にいたのかどうかを訊いてみたんですよ。解釈が合っているのならば、浄界の門を開くには、デインが必要となりますからね」
「だからあの質問をされたのですか。まぁ確かに、石碑は今のところ嘘は言ってない気がします。しかし……そうなると、大きな疑問が浮かび上がってくるんですよ」
 アヴェル王子はそう言って眉間に皺をよせ、難しい表情を浮かべた。
 多分、アノ事だろう。
「それは……なぜ、魔の神殿がデインを扱う者の力を必要とするのか? って事ですかね」
 アヴェル王子は頷く。
「ええ……。私達が小さい頃から教えられてきたミュトラの存在は、邪悪な魔の神とされてますからね。なので、それがわからないのです。それに、そもそもデインは、イシュマリアの血族としての証であります。イシュマリアはイシュラナの御子ですから、当然、ミュトラとは対極の存在なのです。ですから、今の解釈が正しいと仮定すると、あの神殿がイシュマリアの力を必要としている理由が、さっぱりわからないのですよ」
「まぁ確かに、そこは大きな謎ですが……何れにせよ、今のこの状況だと、間違っているのは鍵の解釈だと思いますよ」
(そして……石碑の解釈が正しいならば、必然的に、門を開けた者は本物の聖なる鍵と、デインを行使する者を手に入れているという事になる……か。門を開いたのは敵か味方か……いや、人か、魔物か、と考えた方がいいか。まぁ流れ的に、門を開いたのは後者の方だろう。つまり、魔物の手の中に、『聖なる鍵』と『光迸る雷の力』がある可能性が高いって事だ。はぁ……なんか超面倒な事になってそう……)
 と、そこで、ウォーレンさんが残念そうに言葉を発した。
「フゥゥ……実は、俺もそんな気がしてたんだよ。ギルレアンが試していない事だったから、少し期待はしてたんだがなぁ……やはり、この鍵では駄目だったか」
 ウォーレンさんはそう言って、鍵をテーブルの上に置いた。
 期待してた分、失望も大きいのだろう。
 まぁそれはさておき、聞きなれない単語が出てきたので、とりあえず、俺は訊いてみる事にした。
「今、ギルレアンと仰りましたが、何ですかそれ?」
「ギルレアンとは、500年以上前に、魔の神殿の謎を解こうとした宮廷魔導師の名前さ」
「もしかして、ロダス神官が言っていた異端審問に掛けられたという人ですか?」
「ああ、その人だ」
「そうですか……。でも、その人が試してない事だと、どうしてわかったんです? どこかに記録でも残されていたんですか?」
 ウォーレンさんはゆっくりと頷いた。
「ああ、ご推察の通りだ。実はな、アムートの月に入った頃、俺が城の書庫で調べ物をしていた時に、偶然、ギルレアンの研究記録を見つけたんだよ」
「へぇ……凄いですね。異端審問に掛けられたという事は、その人の主義主張などが記述された物は、普通、焚書扱いになってそうなもんなのに……。奇跡的に残っていたんですね」
 少し偶然過ぎる気もするが、今は置いておこう。
「ああ、全くだ。まぁそういうわけで、偶然見つけたその記録を元に、俺達は色々と考察をして今日は挑んだんだよ。……失敗に終わっちまったがな」
 俺は今の話を聞いて、ようやく合点がいった。
「なるほど、そういう事だったんですか。これで納得がいきました。実は俺、ウォーレンさんがあの鍵を箱から取り出してからというもの、今までずっと疑問に思っていたんですよ」
 ウォーレンさんは首を傾げる。
「鍵が疑問? どういう意味だ?」
「だって、ウォーレンさんは聖なる鍵を入れる鍵穴を見た事ない筈なのに、偽物とはいえ、その穴に入る大きさの鍵を用意できていたので、それが不思議だったんです。でも今の話を聞いてようやく謎が解けました。要するに、その研究記録には、紋章が浮かび上がる事の他に、そこに現れる鍵穴の大きさや、深さの事まで記述されていたのですね」
「あ、ああ、そのとおりだが……お前って、本当に細かいところまでよく見てるな。そんな事まで気にしてるとは思わなかったぞ」
 ウォーレンさんはそう言って、驚いた表情を浮かべた。
「凄いですね……コータローさんて本当に凄い洞察力してます。こんなに深く物事を見れる人、私は初めて見ました」と、ミロン君。
「まぁ性分みたいなもんだよ」
「しかし、ウォーレン……隠居生活を送るバジャル殿に無理を言って作ってもらったが、その鍵は無駄になってしまったな。バジャル殿には悪い事をしてしまった」
「致し方ないでしょう。私も、そう簡単にはいかない気がしてましたし。それに、バジャル殿自身が、上手くいく保証はないと言ってましたのでな」
「バジャル殿?」
 ウォーレンさんが答えてくれた。
「その昔、イシュマリア城で魔法錬成技師をしておられた方だ。今は隠居して、オヴェール湿原を越えたところにある、ラズリット荒野におられるがな」
 ラズリット荒野……確か、ピュレナとオヴェール湿原の間に広がる荒野の名前だ。
「ン? という事は、3日前、俺達とオヴェール湿原で出会った時は、そこから帰る途中だったのですか?」
「ああ、そうだ。まぁその時は、コータロー達とこんな風になるとは想像もしてなかったがな」
「俺もですよ」
 同感であった。
 ベルナ峡谷でヴァロムさんに拾われ、今はこの国の王子と話をしているのだから、人の縁というものはよくわからないものである。
 とはいえ、今はこんな話をしていても仕方ない。
 それに、俺も他にしなきゃならない事があるので、今日は終わりかどうかを確認する事にした。
「ところで、これからどうされるのですか? もう今日は終わりですかね?」
 するとアヴェル王子とウォーレンさんは顔を見合わせ、少し肩を落としたのである。
 アヴェル王子はボソリと呟いた。
「これからか……どうするといいのだろうな。あの神殿が怪しいのは、魔物の勢力調査で間違いないと思うのだが、如何せん、その先に進む為の手がないんではな……」
「魔物の勢力調査?」
「そういえば、コータローには言ってなかったか……。まぁついでだ、話しておこう。そのかわり他言無用だぞ」
「わかりました」
 俺が頷いたところで、ウォーレンさんは話し始めた。
「我々はヴァリアス将軍の命令で、半年もの間、新種の魔物の出現地域を調査していたんだが、調べてゆくうちに、ある事実が判明したんだよ」
「ある事実?」
「ああ。それはな、あのアウルガム湖を中心にして、弧を描くように、新種の魔物達は出現しているという事がわかったのさ。しかも強い魔物ほど、アウルガム湖よりでな。だから俺達は、その湖の更に中心に位置するあの遺跡に目を付けたんだよ。そしてつい最近になって、今度は湖の生き物がいなくなるという怪現象まで現れたもんだから、俺達はイチかバチか、あの石碑に書かれている事を試す事にしたのさ」
「そういう事があったのですか……。だからあの遺跡に拘っていたのですね」
「ああ、それが理由だ。まぁかなり大変な調査だったがな」
 この口ぶりを見る限り、相当広範囲に渡って綿密に調査をしたのだろう。
(なるほど……新種の魔物が出現する区域の中心が、あの島だったのか……。それなら、あの遺跡が怪しいと考えるのは当然だろう。となると、ここで考えられるのは、ラーのオッサンがフィンドで言っていた『精霊王リュビストが施した浄化の結界』の話だが……ここで確認するわけにもいかないから、今は記憶に留めておくだけにしよう)
 俺はそこで、ギルレアンの研究記録について訊いてみる事にした。
「ところで、そのギルレアンという方の研究記録には、他にどんな事が書かれていたのですか?」
「まぁ色々と書かれてはいたが、遺跡に関しては、あんなもんだ」
「そうですか……ちなみに、ギルレアンという方は、聖なる鍵について、どういう風に考えていたのですかね?」
「ギルレアンの研究記録には、こう記されていた。『聖なる鍵とは、恐らく、古の魔法錬成技法によって創られし鍵・アブルカーン。アブルカーンなくば、門は開けぬであろう』とな」
 また新しい単語が出てきた。
「アブルカーンですか……」
「ああ、アブルカーンだ」
「なるほど。ところで……アブルカーンって、なんですか?」

【……】

 すると次の瞬間、シーンとこの場は静まり返ったのである。
 遠くで鳴く小鳥の囀りも聞こえるくらいに……。
 暫しの沈黙の後、ウォーレンさんが口を開いた。
「ハァ!? 何言ってんだ、お前……からかってるんじゃないだろうな」
「いいえ、真面目に訊いてます」
「ア、アブルカーンとは、古代魔法王国カーペディオンの遺物として知られる魔法の鍵の事ですよ。我が国にもその昔、あったと云われております。まぁここでは一般的に、カーンの鍵とも言いますがね。というか、知らないのですか?」と、アヴェル王子。
 俺はコクリと頷いた。
「ええ、全く」
 古代魔法王国のくだりから察するに、多分、俺が所有しているカーンの鍵の事で間違いないだろう。
 つまり、俺は今、かなりデリケートな話題をしているという事である。
(要するに……ウォーレンさん達はバジャルという人に、カーンの鍵モドキを作ってもらっていたという事か。なるほど……だが、アヴェル王子とウォーレンさんには悪いが、鍵に関してこれ以上の協力は難しいな。俺も役目というのがある。とりあえず、余計な事は言わないでおこう)
 と、ここで、ミロン君は探るように訊いてきた。
「コータローさん……本当に知らないんですか? 貴方ほどの魔法の使い手が、アブルカーンの事を知らないって変ですよ。本当はからかってるんじゃないんですか?」
「いや、本当に知らない。つーか、古代リュビスト文字も俺は読めないしね。だから、さっきの遺跡では何が何やらサッパリだったんだよ。なんつーか、その……意味不明? みたいな……」
「そ、そうなんですか。なんか不思議な方ですね。コータローさんて……」
 ミロン君はそう言って、微妙な表情を俺に向けた。
 どうやら、俺はまたもや、この国における一般常識の欠落を露呈してしまったようである。残念!
 まぁそれはさておき、アヴェル王子が仕切り直しとばかりに、俺に話しかけてきた。
「それはそうとコータローさん、話は戻りますが、魔の神殿がデインを必要としている事について、貴方はどう思われますか? 是非、貴方の意見を聞かせてもらいたい」
 また難しい事を訊いてくるな。
 仕方ない。とりあえず、あまり深い話はしないでおこう。
「私が今考えられるのは3つの可能性だけです。まず1つ目は、あの石碑が嘘を言っているという可能性。2つ目は、イシュラナか、もしくはイシュラナ神殿側が嘘を言っているという可能性。そして3つ目は、私達の解釈が間違っているという可能性です。しかし、今はこれらの疑問に対して確実な決断を下せる材料がありません。ですから、それらを裏付ける証拠でも出てこない限り、問題は解決しないと思いますよ。まぁ、これが俺の意見です」
 俺がそう告げた瞬間、3人は無言になった。
 だが程なくして、ウォーレンさんとアヴェル王子の笑い声が、室内に響き渡ったのである。
「フハハハ。コータローはハッキリと言ってくれるな。お蔭でスッキリしたよ」
「ああ、ウォーレン。やはりコータローさんは思った通りの方だ」
 意味が分からんので、俺は訊ねた。
「あのぉ、どういう意味ですか?」
「決まっている。今言った2つ目の言葉は、ここに住む者なら、躊躇する言葉だからだよ。普通は中々言えない言葉だ」
 それを聞いた途端、俺はサァーと血の気が引いた。
(ヤ、ヤバ……よく考えたら、コレって思っきり異端者発言やんけ……ちょっ、どうしよう……)
 俺の表情を見て察したのか、ウォーレンさんは頭を振った。
「心配するな。密告したりはしない。俺もどちらかというと、イシュラナ神殿にはよく思われてない方だからな」
「それを言うなら、俺の方はもっとだ。というか、今日の一件で、俺に対するイシュラナ神殿側の覚えは最悪になっただろうから、多分、次の国王はアルシェスで決まりだな。ハハハ」
 2人は腕を組みながら、豪快に笑っていた。
 しかもアヴェル王子はいつの間にか、人称が私から俺に変化していたのである。
 どうやら、これが素の姿なのかもしれない。
 そして俺とミロン君は、若干引き気味に、そんな2人を見ていたのであった。
(なんなんだこの人達は……イシュラナ神殿の事が嫌いなんだろうか)
 とりあえず、訊いてみた。
「あの失礼ですが、お2人は、イシュラナ神殿側の事をあまりよく思ってないのですか?」
「まぁそういうわけでもないんだが、何かと面倒な団体だからな。俺達も色々と衝突する事があるのさ」とウォーレンさん。
「俺はあまりではなく、大嫌いだよ。まぁついでに言うと、イシュラナ神殿側も俺の事を嫌っているから、お互い様だけどな。しかもご丁寧に、俺に仇名までつけて広めているくらいだ。お蔭で世間では、フラフラ王子と呼ばれるくらいに出世してしまったよ。全く、ありがたい話だよ、ホント」
「ハハハ、相変わらずですな、アヴェル王子は」
 2人は気の合う友人のような雰囲気であった。
 多分、いつもこんな感じなのだろう。 
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