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Dragon Quest外伝 ~虹の彼方へ~

作者:読名斉
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Lv33 王都オヴェリウス

   [Ⅰ]


 ピュレナの丘を抜け、その先に広がる褐色の荒野を俺達は進んでゆく。
 だが王都へと近づくにつれ、荒れた野は徐々に鳴りを潜め、周囲は次第に、美しい緑の草原が広がる風景へと変化していた。それはあたかも、今まで進んできた道のりを逆再生しているかのようであった。
 そして、緑の草原を更に進み続けると、周囲はいつしか、幾つもの湖や沼が点在する、瑞々しい緑の湿原へと変貌を遂げていたのである。
 ラティの話によると、この辺りはオヴェール湿原と呼ばれている所だそうだ。
 豊かな自然の営みが見られる所で、湿原にある小さな湖や沼には、そこで羽を休める水鳥や水面を飛び跳ねる水生生物の姿が確認できる。また、その畔には葦のようなイネ科の雑草が群生していた。
 水分を多く含む陸地部分に目を向けると、辺り一面に青々とした苔の様なモノが覆っており、その様子はまるで、フカフカの緑のカーペットが敷かれているかのようでさえあった。
 しかも、このオヴェール湿原には背の高い木々が殆ど見当たらない事から、見渡す限りの開放感と豊かな自然を感じられる、美しい水と緑の園となっているのである。
 とはいえ、決して良い面ばかりではない。
 ラティが言うには、今の時期は良いらしいが、雨季であるゴーザの月になると、高温多湿の上に害虫なんかが大量発生して、とてもではないが、人の住めるような状態ではなくなるそうだ。
 つまりこのオヴェール湿原は、鳥や昆虫、その他の動物には楽園かも知れないが、人が居住するには少々過酷な環境なのである。この辺りに町や村がないのは、恐らく、これが理由なのだろう。
 ましてや、雨季ではない今ですら、生臭いジメジメとした空気が漂っている事を考えると、ゴーザの月のオヴェール湿原が過酷な環境になるのは、想像に難しくないのである。
 言っちゃなんだが、俺は日本の梅雨時期が大嫌いだ。
 そんなわけで俺からすると、景色は美しいが、あまり長居したくない場所とも言えるのであった。が、しかし……今はそんな事を考える余裕など、俺にはなかった。
 なぜなら、俺達に迫りつつある危機に比べれば、その程度の不満など些細な問題だからだ。 
 そして俺は今、その事について、頭を悩ませているところなのである。

 俺は周囲を警戒しながら、心の中で溜め息を吐いた。
(はぁ……王都に近づくにつれて、シャレにならないくらい魔物も強くなってきている。下手を打つと、全滅もあり得るかもしれない。はぁ……やだなぁ、もう……早く王都に着かないかなぁ……)
 そう……実はこの湿原に入ってからというもの、その美しさとは裏腹に、えらく凶暴な魔物と遭遇する事が多くなってきたのである。
 ちなみに遭遇した魔物はと言うと、リカントマムルと思われる茶色い狼男型の獣人や、ガメゴンと思われる亀と竜が合体したような魔物、そして、四つん這いで遅い掛かる赤い人型の悪魔モンスターであるレッサーデーモン等であった。
 流石にこういった魔物になってくると、攻撃魔法や攻撃補助魔法に耐性がある上に、通常の物理攻撃にもある程度耐性をもっている為、俺達は慎重に戦う事を余儀なくされた。
 対応を間違えると一気に窮地に陥ることも考えられるので、俺も戦闘の際には、その都度、皆に細かい指示をし、最善の方法を模索せざるを得ないのである。
 まぁその甲斐もあってか、なんとか無事に旅は続けられているが、いい加減俺達も疲れてきているので、そろそろ王都に着いてほしいというのが正直なところなのであった。
 おまけにこの湿原に入ってからというもの、俺達以外の旅人の姿も見てないので、余計にそう考えてしまうのである。
(はぁ……俺達だけだと、なんか心細い。王都はまだだろうか……ン?)
 と、そこで、俺はラティと目が合った。
 するとラティは俺の表情を見て察したのか、今思った事について話してくれたのである。
「コータロー、このオヴェール湿原を抜けたら、王都はすぐそこやで」
「へぇ、王都はこの湿原の向こうか。じゃあ、もうちょっとなんだな」
「せやで。その内、オヴェリウスのごっつい大きな白い城塞が見えてくるさかい、すぐにわかるわ」
 さっきラティから聞いたのだが、なんでも王都オヴェリウスは、4層の構造を持った真円を描く城塞によって守られているそうだ。そして、その城塞の中心にイシュマリア城があるそうである。
 いまいちピンとこないが、ラティ曰く、この国でそんな構造を持つ都は王都だけらしいので、かなり特徴のある都なのだろう。
「大きな白い城塞か……どんなのか興味あるな」
「へへ、それは着いてからのお楽しみやな。まぁそれともかくや、今日が晴れでホンマよかったわ。雨の日のオヴェール湿原は最悪やからな。辺り一面、水溜りになるさかい」
「ラティさんの言うとおり、この辺りは雨が降ると、かなり増水しそうですわね……」
 アーシャさんはそう言って、周囲に目を向けた。
「本当ですね。この辺は水の抜けるところがなさそうです」と、サナちゃん。
 まぁ確かに水捌けは悪そうだ。
「ホンマにそうなるで。雨量によってはやけどな。この街道も水浸しになる事もあるさかい」
「え、この街道もなのか?」
「そうやで」
「マジかよ……そりゃ、最悪だ」
 どうやらこの辺りは、雨の日は要注意のようだ。
 まぁ湿原というくらいだから、当たり前なのかもしれないが……。
「そう考えると、ここ通る商人とかは大変だな」
「ああ、言うとくけど、このアルカイム街道はな、あんま商人は通らへんで。王都と南部地方の物流は、向こうの方にあるアレスティナ街道を通るのが主流なんや。ピュレナの丘を抜けた所に大きな十字路があったと思うけど、商人はあそこからアレスティナ街道へ迂回するんやわ。遠回りになるけどな。せやから、ここ通るんは、ワイ等ドラキー便に冒険者、それと巡礼者くらいやで」
「へぇ、そうなのか。まぁ天候に左右される道じゃ、物資の輸送は難しいわな」
 よくよく考えてみれば、俺達は裏道に近いルートを進んでいるのだから、それが当然なのかもしれない。
 多分、ソレス殿下達は、向こうのアレスティナ街道を通ったのだろう。
「そういうこっちゃ。それにオヴェール湿原の辺りは、向こうと比べると路面の状態も悪いさかい、物流には向かんしな」
「まぁ確かに、道はガタガタだな……馬車に乗ってるとよくわかるよ」
 俺はそこで街道に目を向けた。
 すると、延々と続く凸凹とした轍が、否応なく視界に入ってくるのである。
(この分だと、まだまだ振動に悩まされ続ける事になりそうだな。はぁ……ン?)
 と、その時である。
「何だありゃ?」
 100mほど先の街道に、十数名の人だかりと、幾つかの馬車や馬の姿が見えてきたのであった。
 ちなみに、そこにいる者達は殆どが茶色い鎧を着ており、今は前方にある何かを見ているところであった。
(あの鎧の統一具合……もしかすると、前にいるのはどっかの兵士かもしれないな。何かあったのだろうか?)
 ふとそんな事を考えていると、レイスさんの声が聞こえてきた。
「コータローさん、前方で何かあったみたいだ。どうする?」
「アレじゃ進めないので、手前辺りで一旦止まりましょう。俺が行って様子を見てきます」
「了解した」
 そんなわけで、俺達は予想外の所で足止めを食う事になったのである。

 馬車が止まったところで、俺は皆に言った。
「ちょっと向こうの様子を見てくるんで、皆はここで待っててください」
「気を付けてくださいね、コータローさん」
「わかりましわ。何かあったらすぐに知らせてください」
「ええ、勿論です」
 と、ここで、ラティが訊いてきた。
「コータロー、ワイはどうする?」
「好きにすればいいぞ」
「ほな、ワイはここで休んでるわ。直射日光の下やと、微妙に疲れるんや。なんかあったら呼んでや」
「ああ、そうするよ。じゃあ、行ってきます」
 俺はそう言って馬車から降りる。
 するとそこで、レイスさんも御者席から降りてきたのである。
「コータローさん、私も行こう。シェーラ、とりあえず、この場を頼む」
「わかったわ」
「じゃ、行きましょうか、レイスさん」
「ああ」――

 茶色い鎧を着た兵士達の所にやって来た俺達は、何があったのかを知る為、とりあえず、近くの兵士に訊いてみる事にした。
 俺は一番手前にいる、槍を持った髭面のオッサン兵士に声を掛ける。
「あのぉ、何かあったんですか?」
「ン?」
 オッサン兵士はこちらに振り向いた。
 その際、この兵士が着る鎧の胸元に、王家の紋章が刻み込まれているのがチラリと見えた。
 もしかすると、ここにいる者達はイシュマリア城の兵士なのかもしれない。
 まぁそれはさておき、オッサン兵士は言う。
「ああ、魔物に手酷くやられた冒険者の一団が前にいるんだよ」
「魔物にやられた冒険者の一団ですか……」
「先程、我々が蹴散らしたから、魔物はもういないがな。今は宮廷魔導師であるウォーレン様が、冒険者達の治療に当たっているところだ」
(ウォーレン様?)
 よくわからんが、今は置いとこう。
「へぇ、なるほど。で、冒険者の方達はどんな感じなんですか?」
「……あの様子だと、何人かは、もう助からないだろう。手足を引き千切られている者や、内臓を食われている者もいるようだしな」
「ウッ……それは、また気の毒な」
「可哀想だが、あそこまで酷いと、幾ら回復魔法が得意なウォーレン様とはいえ、手の施しようがないに違いない」
 オッサン兵士は悲しげな表情でそう告げると、少し肩を落としたのであった。
(手足を引き千切られて、内臓を食われているだって……うわぁ……ほんとかよ。可哀想に……)
 スプラッター系が苦手な俺は、今の話を聞き、身の毛がよだつ気分になった。
「コータローさん、とりあえず、どんな状況なのかだけでも見ておこう」
「ですね。いつ頃出発できるかわかりませんし」
 本当は見たくなかったが、いつまでも足止めをくうわけにはいかない。
 その為、俺は渋々、治療現場を見る事にしたのである。

 俺とレイスさんは人だかりの端へ移動し、前方の街道に視線を向けた。
 すると、10mくらい離れた所に2台の馬車があり、その付近で倒れている十数名の冒険者と、そこで治療に当たる2人の男の姿が、視界に入ってきたのである。
 冒険者達の構成は、魔法使い系の男女が4名に戦士系の男女が6名、それから軽装備をした盗賊系の女性が2名の、計12名の者達であった。歳は20代から30代で、そこそこ旅慣れた雰囲気が漂う冒険者達である。
 それと、治療にあたる魔導師だが、1人は口と顎に髭を蓄えた長い黒髪の男であった。歳は40代くらいで、全体的な印象としては、ワイルドな雰囲気を漂わせた魔法使いといった感じだ。
 もう片方は、痩せ型で眼鏡を掛けた金髪の少年であった。ボブカット気味の髪型をしており、年の頃は10代前半といったところである。頬の辺りに少しソバカスがあるのが特徴で、結構、大人しそうな感じの子であった。
 それから2人共、白いローブに杖という出で立ちをしており、その身に纏うローブの胸元には、光と剣をあしらった王家の紋章が描かれていた。つまり、王宮に仕える宮廷魔導師なのだろう。
 この2人のどちらかが、兵士の言っていたウォーレンという宮廷魔導師に違いない。
 まぁそれはさておき、現場の状況だが、先程の兵士が言ったように、街道には引き千切られた手足や内臓に加え、血生臭い臭気が漂っており、かなり凄惨な様相となっていた。
 気を抜くと吐いてしまいそうな光景だ。
(アーシャさん達を連れてこなくて正解だったようだ。これは、女子供の見るものではない)
 地に伏せる冒険者達に目を向けると、その内の半数は、もう完全に手の施しようがない状態であった。
 残りの者達もかなり重傷であり、2人の魔導師は今、その者達の治療に当たっているところである。
(うわぁ……思ったより、酷い状況だな。この出血量だと、負傷者は傷が治っても絶対安静だろう。だが……問題はそこではない)
 と、そこで、レイスさんが口を開いた。
「むぅ……これは酷い。あの者達の装備を見る限り、かなり修羅場を潜りぬけてきた冒険者だと思うが、ここまで手酷くやられるとは……。一体、どんな魔物にやられたのだ……」
 そう……今問題なのは、冒険者達の容体も然る事ながら、この惨状を創り出したのは、どんな魔物だったのかという事なのである。
 冒険者達の装備は、つい3日前に見たレイスさん達の装備と遜色のない物なので、それがどうしても気になるのであった。
「確かに酷いですね」
(レイスさんの言うとおり、一体、どんな魔物にやられたのやら……ン?)
 と、その時、治療している中年の魔導師と俺は目が合ったのである。
 すると目が合うや否や、中年の魔導師は俺の方へ向かい、大きな声で話しかけてきたのであった。
「おい、そこのアンタ! 魔導の手を装備してるって事は、かなり腕のある魔法使いと見た。こっちに来て手を貸してくれ!」
 俺に話しかけているのだとは思うが、違う可能性もある為、とりあえず、背後を振り返って確認する事にした。
「おい、アンタだ。今後ろ向いた、アマツの民のアンタだよッ!」
 俺は自分を指さした。
「俺?」
「そう、アンタだ。早くコッチに来て手を貸してくれッ」
(はぁ……仕方ない。今度から魔導の手は、人目につかないようにしとこう……)
 俺はレイスさんに言った。
「それでは、ちょっと行ってきます」
「うむ、頑張ってくれ」
 というわけで、俺は凄惨な殺人現場へと向かい、渋々足を踏み入れたのである。

 俺が来たところで、中年の魔導師は口を開いた。
「アンタ、回復魔法は使えるか?」
「ええ、まぁそれなりに」
「よかった。じゃあアンタは、馬車の付近で倒れている戦士2名の治療を頼む」
「あの冒険者達ですね。わかりました」
「情けない話だが、俺の弟子は魔力が尽きてしまって、もう魔法がつかえないんだ。おまけに薬草まで尽きてしまってな。だから頼んだぜ」
 要するに、今はこの中年の魔導師しか、魔法の使い手がいないのだろう。
 そして、そんな所にやって来た俺は、飛んで火に入る夏の虫って事のようだ。
(ついてないなぁ、俺……まぁいいや、とっとと終わらせてしまおう)
 負傷している冒険者達の所にやって来た俺は、まず怪我の確認をする事にした。
 すると、2人の脇腹や太腿の辺りに、深い裂傷があるのが目に飛び込んできたのである。
 結構出血もしており、早く治療しないと不味い状態であった。
 ちなみにその裂傷は、爪や牙で切り裂かれたような感じだ。
 これを見る限り、彼等を襲ったのは、鋭い爪や牙を持つ魔物と見て間違いないようである。
(どんな魔物か気になるところだが……今は冒険者達の治療が先だな……)
 俺は魔力を左右の手に分散させ、2人同時に治療を始めた。
「ベホイミ」
 2人の深い傷は見る見る塞がってゆく。
 そして、大きな傷がある程度塞がったところで、俺は治療を終了する事にしたのである。
 今必要なのは応急処置であって、完全に治癒させる必要はないからだ。
 と、そこで、また中年魔導師の声が聞こえてきた。
「ほう、やるねぇ。ところでアンタ、キアリーは使えるか?」
「ええ、まぁ……」
「じゃあ、向こうで倒れている女性2人を解毒してやってくれ。それと回復もだ。頼んだぞ」
「了解」
 とっとと終わらせたい俺は、指示のあった女性達の所へすぐに向かった。
 それからキアリーとベホイミの順で、俺は迅速に治療を開始したのである。

 程なくして治療を終えた俺は、中年の魔導師の所へ行き、4名の治療結果を報告した。
「終わりましたよ。毒に侵された女性達は、それほど傷も深くないので、もう大丈夫でしょう。ですが、一番最初に治療したあの戦士達は、かなり出血が多かったので、暫くは安静にしてた方がいいですね。まぁとりあえず、そんな感じです」
 中年の魔導師はやらかい物腰で返事をした。
「おぅ、終わったか。こっちも終わったところだ。いやぁ、アンタがいて助かったぜ。俺も魔物を追い払うのに結構魔法を使ったもんだから、焦ってたんだ。面倒な事をさせちまったかも知れねぇが、勘弁してくれ」
 結構、陽気なオッサンのようだ。
 今までは切羽詰まった状況だったから、少々強引な物言いだったのだろう。
 それからこの人も、俺と同様、魔導の手を装備していた。
 これを装備しているという事は、第1級宮廷魔導師なのかもしれない。
「ああ、気にしないで下さい。ところで、彼等は一体、どんな魔物に襲われていたんですか?」
「ン、襲っていた魔物か。そうだな、4体いたんだが、その内の3体はベギラマを使う大きな肉食の魔獣だった。俺も初めて見る魔物だから上手く説明できんが、姿を簡単に言うと、サーベルウルフに似た魔物だ。ただ、サーベルウルフと違うのは、背中に蝙蝠の様な羽が生えていたのと、足が6本あった事。それと、顔の周りを縁取るように青い鬣が生えていた事だな。まぁとりあえず、そんな感じの魔物だ。はっきり言って、かなり強い魔物だった。我々も追い払う事しかできなかったからな」
「青い鬣生やしたサーベルウルフですか……」
 サーベルウルフは確か、ドラクエⅡで出てきた魔物だ。
 俺の記憶だと、サーベルタイガーの様な外見の魔物だった気がする。
 この世界では遭遇した事はないが、そこから推察すると、この人は多分、ライオンヘッドの事を言っているのかもしれない。
 とはいえ、確証のある話ではないので、今はとりあえず候補の1つとしておこう。
 俺は他の1体についても訊ねた。
「もう1体はどんな魔物でしたか?」
「残りの1体は、首の所に羽のようなモノがある大きな紫色の蛇だったな。まぁこれはもうそのままだ」
「そうですか」
(首の所に羽の生えた紫色の蛇か……なんだろう。ドラゴンかなんかだろうか……わからん。どんな魔物だ一体……)
 ふとそんな事を考えていると、中年の魔導師はそこで自己紹介をしてきた。
「そういえば名前を聞いてなかったな。これも何かの縁だ、名乗っておこう。俺の名は、ウォーレン・シュトナルデ・サンドワールという。まぁ見ての通り、王宮の魔導師ってやつだ」
 俺も簡単に自己紹介をしておいた。
「私の名前はコータローと言います。まぁ見ての通り、旅人ってやつです」
「コータローだな。よし、覚えたぜ」
 続いてウォーレンさんは、後ろにいる眼鏡を掛けたひ弱そうな少年を指さした。
「それと、こっちが弟子のミロンだ。お前も挨拶しろ」
 少年は慌てて俺に頭を下げ、若干ドモリながら自己紹介をしてきた。
「は、初めまして、コータローさん。わ、私は、ミロンと言います」
「よろしくな、ミロン君」
 俺はミロン君に微笑んだ。
「こいつは友人から預かった子なんだが、中々の素質がありそうな奴でな。2年ほど前から、俺が面倒を見てるんだよ。っとそうだ、こんな事してる場合じゃないな」
 何かを思い出したのか、ウォーレンさんはそこで、兵士達に向かって指示を出した。
「おい、誰でも構わないから、彼等の馬車に、亡くなった冒険者の遺体を乗せてやってくれないか。このままにしておくのは忍びないんでな」
「は、畏まりました、ウォーレン様」
 何人かの兵士が返事をし、遺体の運搬に向かう。
 それからウォーレンさんは俺に振り向き、申し訳なさそうにお願いをしてきたのである。
「コータロー、すまいないが、あと少しだけ手を貸してくれないか? 出血の多かった冒険者達は安静にしておかなければならないから、魔導の手を使って、静かに彼等の馬車へ乗せて欲しいんだ。頼めるだろうか?」
 乗りかかった船だ。仕方がない。
「いいですよ。手伝いましょう」
「すまんな。では始めよう」
 そして俺とウォーレンさんは、負傷者の運搬作業に取り掛かったのである。

 魔導の手を使って移動しなきゃならない冒険者は4名だったので、それほど時間はかからなかった。
 だが兵士達は、遺体を毛布にくるんで人目につかないよう処置してから馬車に搬送してたので、少々大変だったみたいだ。
 とはいえ、それらの作業も人手があった為、あれよあれよという間に片付いていき、15分もすれば、馬車で通っても問題ない状態になったのであった。
 粗方片付いたところで、レイスさんは安堵の表情を浮かべた。
「これで旅が再開できそうだ。ではコータローさん、我々も馬車に戻るとしようか」
「ええ」
 と、その時であった。
 慌ただしい声が、この場に響き渡ったのである。

【ウォーレン様! 西の空より、魔物がこちらに迫っておりますッ!】

 俺達は一斉に、西の空へと視線を向けた。
 すると、こちらに向かって飛んでくる十数体の魔物の姿が、視界に入ってきたのである。
 ウォーレンさんは舌を打つ。
「チッ……あれは、さっきの魔物だな。さては、仕返しにきやがったな……」
「あれがそうですか」
 俺は魔物達を凝視した。
 距離にして1000mはあったが、魔物達の姿がおぼろげながら見えてきた。
 すると思った通りであった。魔物はやはり、ライオンヘッドだったのである。
 敵の姿が分かったところで、俺はライオンヘッドの特徴を急いで思い返した。が、しかし……それを思い出す事により、俺の脳内に焦りが生まれてきたのである。
 なぜなら、今の状況を考えると、こちらが不利なのは明白だったからだ。
(不味い……ライオンヘッドはゲームだと、マホトーンとベギラマを多用してくる強力な魔物だ。これだけ沢山いると、今の俺達では対応できん気がする。幸い飛ぶスピードはそれほどでもないから、馬を飛ばせば振りきれるかもしれない。ここは、逃げるが吉だ……)
 俺はウォーレンさんに急いで忠告した。
「ウォーレンさん! あの魔物はそれ程速く飛べないみたいですから、すぐに出発しましょう。今、襲われたら、こちらが圧倒的に不利です」
「あ、ああ……そのようだ。よし皆の者ッ すぐに王都へ向け、出発だ! 冒険者達も急げ!」
「ハッ」
「は、はい」
 動ける数人の冒険者も、返事をすると慌ただしく動き出した。
 俺達も急がなければならない。
「レイスさん、俺達もすぐに出発しましょう」
「ああ、急ごう」
 その言葉を皮切りに、駆け足で馬車に戻った俺達は、ウォーレンさん達の後に続く形で、すぐさまこの場を後にしたのであった。


   [Ⅱ]


 ライオンヘッドの執拗な追撃から無事に逃れる事が出来た俺達は、ウォーレンさん達と共にオヴェール湿原を抜け、その先に青々と広がるアルカイム平野を北に向かって馬を走らせた。
 するといつしか前方に、広大な湖と、白い山のようなモノが見えてくるようになったのである。それはまるで、雪化粧したかのような山であった。
(なんだあの白い山は……雪? なわけないか……。ラティならわかるかもしれない)
 というわけで、俺は早速ラティに訊いてみた。
「なぁラティ、あの白い山はなんなんだ?」
 すると予想外の言葉が返ってきたのである。
「は? 何言うてんねん。山やないで、あれが王都オヴェリウスやがな」
「マジかよ、あんなに馬鹿でかいのか?」
「そりゃそうや。この国最大の都やさかいな」
 ラティの返答を聞いた俺は、自分の思っていた王都とのギャップがありすぎた為、ちょっと衝撃を受けてしまった。
 実を言うと俺は今まで、王都はマルディラントを少し規模拡大した街程度にしか思っていなかったからだ。
 まさか、ここまで馬鹿でかい城塞都市だとは、夢にも思わなかったのである。が、しかし……近づくにつれ、俺は更なる衝撃を受ける事になるのであった。
 俺達の前方に厳かに鎮座する王都オヴェリウス……それは、丸い城塞を4層に渡って積み重ねた構造の都市であった。
 全体像を何かに例えるならば、4段式の真っ白なウェディングケーキといった感じだろうか。
 そして積み上げられた城塞の最上段には、全ての街並みを見下ろすかの如く聳える、西洋風の美しい純白の王城が建立されているのである。
 そう……このオヴェリウスは、巨大な街全体が1つの建物のようにさえ見える、壮大な構造の都なのだ。
(すげぇ……世界遺産のモンサンミッシェルも街全体が建物のようだが、このオヴェリウスは規模が更にデカい上に城塞の威圧感が半端ない。まさかこんな都だったとは……グレートだぜ!)
「ここまでくれば、着いたようなもんやから、楽にしてええで」
「長かったですわ……」
 アーシャさんはそう言って顔をほころばせた。
 だがそんなアーシャさんとは対照的に、サナちゃんは少し寂しそうにボソリと呟いたのである。
「あの都が、私達の旅の終点なんですね……」
「ん、どうしたのサナちゃん。なんか元気ないね」
 サナちゃんは俺に潤んだ目を向ける。
「コータローさん……コータローさん達は王都に着いたら、どうされるんですか? すぐに発ってしまわれるのですか?」
「俺達かい? アーシャさんはともかく、俺は暫くの間、王都に滞在する事になるだろうね。まぁ色々とやる事があるもんだからさ」
 するとその直後、サナちゃんはパァと明るい表情になったのである。
「ほ、本当ですか。じゃあ、また私と会うことが出来るんですね」
「まぁ会うことは出来るだろうけど……」
「よかった。コータローさんは気の許せる方ですので、もっと色々とお話をしたいんです」
 そしてサナちゃんは、屈託のない笑顔を俺に向けたのである。
 なんか知らんが、俺はサナちゃんにえらく懐かれたようだ。
 長い逃亡生活の中で、気の許せる者と会えたのは俺達くらいらしいので、仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。
 と、そこでアーシャさんが話に入ってきた。
「何をするのか知りませんが、私も手伝いますわよ。王都にあるアレサンドラ家の別邸に着いたら、私もしばらく滞在する事になりますから。というか、貴方は私専属の護衛なのですから、それを忘れて貰っては困りますわ」
「え、あれってまだ正式な決定じゃなかった気が……」
「何を言ってるのです。もう正式に決定しましたわ。私がしたと言ったら、したのです」
 アーシャさんはそう言って、サナちゃんに笑顔を向けた。
 サナちゃんも微笑み返す。
 その瞬間、なぜか知らないが、2人の間に張りつめた空気が漂いだしたのであった。
(えっと……何……この微妙に重い空気……)
 そんな中、KYのラティがログインしてきた。
「ほなワイも、王都に暫くいようかな。コータローと一緒にいると、おもろいし」
「おいおい、ドラキー便はどうすんだよ」
「ああ、それは気にせんでええで。ワイ等の仕事は基本的に、物流組合に出向いて、自分の行きたい配達地域の書簡を選んでるだけやさかいな。配達が終わったらそれで一区切りつくんや」
「ドラキー便て、そういう体制なのか。てっきり担当地区でも決まってるのかと思ったよ」
 ラティの話を要約すると、配達地域は早い者勝ちということなのだろう。
 まぁそれはさておき、俺達がそんなやり取りをしている内に、オヴェリウスの城塞はもう間近に迫るところにまで来ていた。
(色々とあったけど、この旅も終わりか……サナちゃんじゃないけど、少し寂しいかな……)
 アーシャさんはそこで、感慨深くボソリと呟いた。
「長かった旅も、これで終わりですわね。楽しい旅でしたわ」
「ええ、マルディラントを発ってから6日しか経ってないですが、10日以上旅してきたような気分です」
 俺はそう言うと、今まであったイヴェントを感慨深く思い返した。
 サナちゃんも俺と同じ思いなのか、静かに頷いていた。
「本当ですね。色々とありましたけど、無事ここまで来れたのはコータローさんやアーシャさんのお蔭です。ありがとうございました」
「はは、サナちゃん。礼を言うのは早いよ。まだ王都には着いてないからね」
「そうですね。では着いたら、改めてお礼を言わせてもらいます」
 サナちゃんはそう言ってニコリと微笑んだ。
 俺も微笑み返す。
 そして、俺達は、それぞれが色んな思いを胸に秘めながら城塞門を潜り抜け、この旅の終点である王都オヴェリウスへと足を踏み入れたのであった。


   [Ⅲ]


 王都の中に入った俺達は、ウォーレンさん達の後に続いて、大通りを真っ直ぐに進んで行く。
 街の中に入って分かった事だが、王都もマルディラントと同様、古代ギリシャや古代ローマのような建築様式の建物ばかりであった。
 これを見る限り、どうやらこの国の建物は、山の中にあるガルテナのような場合を除いて、どこもこんな感じなのかもしれない。
 それと街の雰囲気だが、俺達が進むこちら側の通りは人も疎らで、あまり活気のある所ではなかった。これは恐らく、アルカイム街道側から商人があまり出入りしない事が関係しているのだろう。アレスティナ街道側は賑わっているに違いない。
 まぁそれはさておき、通りを暫く進むと、中央に大きな木が1本生えた丸い広場が見えてくるようになった。
 程なくして俺達は、その広場へと入ってゆく。
 すると、前方にいるウォーレンさん達は、その広場に入ったところで馬車を止め、俺達にも止まるよう、手振りで合図してきたのである。
 レイスさんは指示に従い、馬車を止めた。
 ウォーレンさんがこちらへとやって来る。
「コータロー、今日は世話になったな。お蔭で助かったよ」
「ああ、気にしないでください。まぁこれも何かの縁だったんでしょう」
「そうかもな。ところで、お前達はこれからどこに向かうんだ?」
「え、この後ですか……ちょっと待ってください」
 俺はとりあえず、アーシャさんとサナちゃんに小さく耳打ちをした。
「どうします? この人に2人の事を話してもいいですか?」
 2人は頷く。
「もうここまで来たら、いいですわよ、仰っても。それに、この方に場所を訊いた方が早いですわ」
「私もアーシャさんと同じです。ですが、念の為、王女というのは伏せておいて下さい」
「わかった」
 一応、2人の了解は得られたので、簡単に話すことにした。
「ええっと、実はですね、俺達はこれから2つの場所に向かう予定なんです」
「2つの場所? どこだ一体?」
「1つは旧ラミナスの公使が住まう館で、もう1つは、マルディラントを治めるアレサンドラ家の別邸です。ちなみにですが、ウォーレンさんはそれらがどこにあるのか、わかりますかね?」
 するとそれを聞いた瞬間、ウォーレンさんは渋い表情になったのである。
「勿論知っているが……お前達、一体そこに何の用があるんだ? その2つがあるのは、この国の大貴族が住まうオヴェリウスの第3の階層・ヴァルハイムだぞ。王都に住む者でも、限られた者以外立ち入ることが出来ない場所だ」
 今言った第3階層というのは、王城の1つ下の階層の事を言ってるのだろう。
 要するに、このオヴェリウスもマルディラントと同様、身分によって住まう所が違うという事だ。
 階層が4つもあるという事は、マルディラント以上に厳格な住み分けをしているに違いない。
 まぁそれはともかく、俺はとりあえず、アーシャさん達の事情を説明する事にした。
「それなんですけど、あまり大きな声では言えないのですが、ここにいる2人の女性はそれら所縁の方々なのです。もう少し詳しく言いますと、こちらの方はマルディラントの太守、ソレス殿下のご息女で、こちらの方は、旧ラミナス国要人のご息女になります」
「な、なんだって……」
 ウォーレンさんはアーシャさんとサナちゃんに驚きの眼差しを向けた。
 ここでアーシャさんとサナちゃんが話に入ってきた。
「ご挨拶が遅れました。私はアーシャ・バナムン・アレサンドラと申しまして、マルディラント太守、ソレス・マウリーシャ・アレサンドラが長女であります」
「私はイメリアと申します。こちらに駐在する旧ラミナス国公使、フェルミーア・オセルス・サナルヴァンド閣下は、血縁上、私の叔母になります」
「なんと……」
 ウォーレンさんは2人の自己紹介を聞き、かなり驚いていた。が、しかし……程なくしてウォーレンさんは難しい表情になり、残念そうにこう告げたのであった。
「そうだったのですか。ですが……それが本当だとしても、今のオヴェリウスではそう簡単にヴァルハイムへは行けぬでしょうな。いや、それどころか、御2人には申し訳ないが、今のオヴェリウスでは、その下にある第2の階層・アリシュナにすら入れない可能性が高いのです」
 どうやら、色々と難しい事情があるようだ。
 もしかすると、ヴァロムさんの事が関係してるのかもしれない。
 俺は訊いてみる事にした。
「今のオヴェリウスでは、と言いましたが、最近、何か事情が変わったのですか?」
「コータローも知っていると思うが、オルドラン家のヴァロム様の一件があってからというもの、オヴェリウスはずっと厳戒態勢を敷いているんだ」
 どうやら俺が思っている以上に、ヴァロムさんの件はややこしい事になっているのかもしれない。
「厳戒態勢……ですか。俺も道中、噂で聞きましたが、それほどまでに警戒しているのですか?」
「ああ……地下牢に幽閉されたヴァロム様は、イシュマリア全土にその名を轟かせた稀代の宮廷魔導師であると共に、その祖先は大賢者アムクリストの弟子の1人だ。しかも、今は隠居されたとはいえ、ヴァロム様自身が、その遺志を継ぐ正統なる元継承者でもあった。それ故、国内外の影響力も一際大きい事から、この国の重鎮達は混乱を避ける為に、魔導騎士団を動員して警戒に当たらせているのさ」
 俺はウォーレンさんの話を聞き、思わず溜め息をこぼした。
「はぁ……まさかそんな事になっているんなんて」
 と、ここで、レイスさんが話に入ってきた。
「挨拶が遅れましたが、私はイメリア様の護衛を任されたレイスと申す者です。貴殿に1つお訊きしたいのだが、イメリア様の身分を示す物を騎士に見せたとしても、門を潜るのは難しいのであろうか?」
 ウォーレンさんは首を縦に振る。
「ああ、難しいと言わざるを得ないな。今のオヴェリウスは、イシュマリア王が認めた通行証がない限り、貴族が住まうアリシュナから上へは出入りできない状態だ。しかも、その更に上のヴァルハイムに行くには、イシュラナの神官達の頂点に立つ、教皇アズライル猊下が認めた通行証も必要になってくる。だから、今言ったような事をそのまま門にいる騎士に話したところで、まず信じてはくれまい。いや、それどころか、下手すると、不審者として連行される可能性の方が高いくらいだ。残念だが、今のオヴェリウスは、そこまでの厳戒態勢を敷いているんだよ」
「そうであるか……。まさかそこまでの厳戒態勢とはな……」
 レイスさんは少し肩を落とした。
(これはかなり厳しいかもしれない……どうしよう……)
 俺は当事者の2人に訊いてみた。
「そんな状況らしいですけど、どうします、2人共?」
「非常に困りましたわ。私もお父様の元に向かえと兄から言われておりますので」
「私も困ります」
 思った通りの反応だ。
 さて、どうするか……。とりあえず、他に方法がないかだけでも訊いてみるとしよう。
「あのぉ、ウォーレンさん。何か他に手はないんでしょうか? 俺もアーシャ様達を無事に送り届けるように言われたので、そこに案内できないとなると、ちょっと困るんです」
 ウォーレンさんは顎に手を当て、何かを考える仕草をする。
「ふむ。まぁない事もないが……」
「本当ですか?」
「ああ。だが、今すぐには無理だ。それをするには、少し時間がいるからな……。ところで、今日の宿はどうするつもりなんだ?」
「え、宿ですか? まぁこうなった以上、その辺の宿でも探すしかないでしょうね」
「そうか。もしなんなら、俺の所にでも来るか? いや……俺が考える方法でヴァルハイムに行くつもりなら、これを機にアリシュナへ来た方がいい。その方が後の段取りもやりやすいからな」
「え? でも俺達は通行証なんてないですから、アリシュナとやらに入れないのでは?」
 するとウォーレンさんは不敵な笑みを浮かべたのであった。
「なぁに、心配するな。俺と共に門を抜ければ大丈夫だ。こう見えて俺は、結構信頼されている宮廷魔導師の1人なんでな。それに、門を警護する魔導騎士も俺の顔をよく知っているから、深くは詮索せん筈だ。で、どうする? できれば今決めてもらいたいのだが」
 これはチャンスかもしれない。
 だが、初対面の俺達にここまでしてくれるのが、少し引っ掛かるところではあった。
 まぁ2人は大貴族の縁者なので、そこを期待しての事かもしれないが。
(さて、どうすべきか……)
 俺はともかく、アーシャさんとサナちゃんは流石にこのままにしておくわけにはいかない。
 その為、俺はとりあえず、2人の意見を聞いて返事する事にしたのである。
「2人はどうする? ウォーレンさんはこう言っているけど」
「コータローさんにお任せしますわ」
「私もお任せします」
「そっか。じゃあ、俺の判断で決めるね」
 2人はコクリと頷く。
 了解を得たところで、俺はウォーレンさんに返事をした。
「では、よろしくお願いします、ウォーレンさん」
「そうと決まれば善は急げだ。俺達の後について来てくれ」
「はい」
 そして俺達は、ウォーレンさんの指示に従い、移動を再開したのであった。 
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