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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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580部分:第四十五話 魏延、一目惚れするのことその十二


第四十五話 魏延、一目惚れするのことその十二

「非常に腕が立ち人望もある方ですから」
「そんなに立派な方なんですか」
「ええ、そうよ」
 黄忠が劉備に答える。
「丁度浪人になるし声をかけてもね」
「いいんですね」
「相手の立場にはこだわらないし」6
 そういう人物であるとも話された。
「だからね。いいと思うわ」
「わかりました。それじゃあ」
 そこまで聞いてだった。劉備はあらためて頷いた。
 こうして一行はそのまま巴蜀に向かうことになった。その中でだった。
 魏延は馬岱と隣同士になる。するとすぐにだった。
「ふんっ」
「ふんっ」
 顔を背け合う。お互いにだった。
「何故御前と一緒なんだ」
「それはこっちの台詞よ」
「それだけが不愉快だ」
「そうね。それは同意するわ」
「ううむ、この二人は」
「どうしようもねえな」
 関羽と馬超はそんな彼等を見て苦笑いになっていた。
「こういうのを言うのだろうな」
「犬猿の仲ってな」
「ほう、間違えなかったな」
 趙雲がここで馬超に突っ込みを入れた。
「犬猿の仲と言ったな」
「そうだけれどよ。おかしいか?」
「御主は何かと言い間違えるからな」
「あたしだって勉強はするさ」
 それはだというのだった。
「それはな。鈴々と違ってな」
「どうしてそこで鈴々なのだ」
「いや、あたしと頭は似たものだからな」
「確かに頭はよくないかも知れないのだ」
 自分でもいささか認めるところではあった。
「しかしそれでもなのだ」
「それでも?どうしたんだよ」
「腕は立つのだ」
 それはだというのだった。
「そっちでは翠に負けないのだ」
「いいや、あたしの方が強いぞ」
「鈴々の方が強いのだ」
「あたしだっての」
 お互いに言いはじめた。ここでも不毛なやり取りになる。
 しかしだった。馬超は切り札を出したのだった。
「これだけは負けないぞ」
「何がなのだ?」
「胸だよ、胸」
 自分の胸を左手の親指で指し示して話す。
「それは負けないからな」
「うっ、それはなのだ」
「見ろ、この胸」
 怯む張飛に指し示してみせる。その胸は上下に揺れてさえいる。身体を動かせばそれだけで揺れるまでの胸だったのだ。
「どうだよ」
「うう、そこでそれを出すのだ」
「幾らでも出すぞ。どうだよ」
「いいや、それでもなのだ」
「それでも。何かあるのかよ」
「志では負けないのだ」
 今度言うのはこのことだった。
「鈴々の志は。誰にも負けない位大きいのだ」
「大きいっていうんだな」
「そうだ、大きいのだ」
 今度は張飛が胸を張って言い切る。
「それは胸を張って言えるのだ」
「あたしだってな」
「翠はどういった志なのだ」
「決まってるだろ、天下に平和を取り戻すんだよ」
 それを言うのであった。
「それしかないだろ、やっぱり」
「それは同じなのだ」
「そうだな。それは同じだな」
「だからこれからもなのだ」
「どうするんだよ」
「たっぷりと食べるのだ」
 そうするというのである。
 
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