俺が愛した幻想郷
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俺は愛せる? 幻想郷...
吸血鬼ってこんなん?
第三十一話 可愛い可愛い相棒
前書き
三十話の更新日が2016/08/06、そして三十一話――今話の更新日が2017/08/03
ぎりっぎり1年じゃないですね!!
わーすごい! ぜんっぜん良くない! ご め ん な さ い
俺愛を楽しみにしてた方には本当に申し訳ないですね...... 何遍もこのセリフを吐いてるので全く信ぴょう性のない『申し訳ない』ですが、もはや申し訳めっちゃありますが。
ずっと書きたい書きたいとは思っていたのですが、一行書いては休憩して気づいたら違うことやったりを続けて、それまた気づいたらメモ(iPadのメモで書いてるんですよ)をアプリゲームの引き継ぎメモる以外に開かなくなりましてね。
突然書きたくなって数十行書いて、やめてを繰り返して約一年経ちまして、そんなことしてたもんだから書いてることぐちゃぐちゃになっちゃったりして。
今日(夜中どころか明け方ですが)改めて最初から書き直し、俺愛読み返し、色々やって、今話を完成させたわけです。
この約一年の間に、いろんなものにハマったりいろんな書物を読んだり考え方の変化だったりいろんなことをしてきたので、ネタの挟みやパロディーが変化してたり、それこそ書き方が変わってたりするのが見どころだったりします。
そして今回は、ほとんどが琥珀の心理描写です。新キャラが登場するとそうなるのがうp主妹紅クオリティーです。
それでは、私はこれから北米の田舎で木こりと化け物倒しに行ってくるので。
本編、どぞ
「あ、治った」
あれから数十分が経った今、八重歯の違和感はもちろん鋭い五感は元に戻り、すっきりした。
そうだ、これも前の世界で読んでいた本の話だが、吸血鬼に咬まれると吸血鬼になるという話を知っていた。つまり俺は吸血鬼になっていた、そういうことだろう。
吸血鬼に関する――というかメルヘンやファンタジーは読み漁っていたわけで、この手の話は得意だが、咬まれたらずっと吸血鬼の話もあれば、一時的なもので力が戻る話もあった。俺はその中での後者なのだろう。余談だが、この吸血鬼、この流れで行くとドーナツとか好みそうである。
「すっきりすっきり。一時はどうなるかと思った」
もちろんのこと、聞きたくなかった藍さんと橙の会話は聞こえなくなり、猫舌ゆかりんのカップラーメンを啜る音も聞こえなくなったわけだが。
目の前の彼女は治った俺が不満なのか、頬を膨らましていた、とても可愛らしい。飴ちゃんでもあげたいところだけれど、生憎持っていた飴は当の本人が全て食べてしまったのでない。明日にでも買いに行くとしよう。
相棒が吸血鬼とかいう中二病心を大いに擽ぐるこんなシチュエーションを待っていなかったわけではないが、少々リアルは衝撃が強かったわけで、実はわたくしこんな心情を語っている中でもびびっている次第です。それこそ、今後この娘に血をあげることになるのだと考えるだけでゾクッとする。しかしそれもまた、その中二病心を擽るシチュエーションに含まれるわけである。
まぁ何が言いたいかというと、割と満足しているということだ。
ところで、先程の余談を元に一つ疑問が出た。この子は血をご飯とするわけではあるが、飴を食べたわけで、そちらの栄養の補給もできるのか、はたまたそちらも必要なのか。なんだったら吸血はご飯というより、栄養補給――魔力補給になり、ご飯はご飯で必要なのか。
しかも、今回吸血されて俺の身に起こったことを考えるに、一時的に吸血鬼になったわけだが、つまり吸血鬼を共有するだけの吸血かも知れない。とも思ったが、なら今の現状この子にメリットはないので今、血をもらおうとしたことの理由がつかないのでこれは伏せておくとしよう。
とは言え、飴のフレーバーの区別はつくみたいだし、この前のやりとりからして好き嫌いもあるみたいだ。例え栄養として必要でなくとも、彼女の喜ぶ顔が見れるならご飯という"おやつ"をあげよう。藍さん直伝のメモにも書いてあったしな。メモ? そうか、メモを見よう。何の為に藍さんがあれを俺に渡したと思っている。
「そう言えば、なんでさっき俺に『好き』なんて言ったんだ?」
机の引き出しに閉まったはずのメモを取り出しながら、血を吸い終わってから今までずっと俺を凝視していた彼女にそう聞く。
見つけた四つ折りのメモを開きながら彼女を見ると、今まで一度も見せなかった恥ずかしそうな顔を見せ、目を逸らしてきた。
なんだ、血が欲しくて堪らなくて勢い余って言ってしまった感じだなこりゃ。(訳:くっそ可愛いなこいつ)
「あったあった。好きな物はできるだけ与える、と。もういっちょ吸血しとくか?」
好きと言われたお返しというかなんというか、いじり倒したくなったのでそう聞くも、彼女は更に顔を赤くし、両手で顔を隠して慌てた。ふむ、やはり血が飲みたくて完全に理性が吹っ飛んでたタイプだな。(訳:んもう! 可愛すぎる、愛らしい、でもまた血吸われたら俺の理性が危ないのでNG)
式神の属性......? ん〜 火タイプとか水タイプとか、神タイプとか悪魔とか......? いや、吸血鬼なんだから吸血鬼タイプで良いのか。
メモの②にチェックを入れ、隣に『吸血鬼タイプ』と寄せて書く。
式神の名前は主人が決める。そうか、なるほどな。確かにそろそろこの子だとか彼女だとか言うのは可哀想だし、お前なんて以ての外だ。
とは言え、名前か...... 名前のセンスないんだよな俺。お花のように可憐な、それでいて恥じらいを持った表情はまたキュートな、そして吸血鬼なんていう属性を持って、舌から吸血するもはやキス――もっともディープなキスをするような吸血をする...... いやいや、深く考えるからダメなんだ。俺の名前を思い出せ。
「色...... 色か」
ふと机の上に無造作に置いてある長ズボンを目につけ、ポケットからはみ出た、バイトしてた頃につけた傷が大袈裟に見えている長財布を見た。
「......小豆色。あずき、あずきだ!」
良い名前かどうかはさておき、名前を思いついた俺は笑顔で彼女(仮)を見た。すると彼女(仮)は隠していた顔を見せ、頭にハテナを浮かべるような表情を見せた。
「俺の式神を『あずき』と命ずる! 良いか......?」
困惑の表情を浮かべていた彼女は、次第に納得したように表情を変え、"あずき"となった。同時に、③にチェックを入れ、あずきと寄せて書く
先程の羞恥顔は除き、飴をあげたときからまるで表情をほとんど変えないので、実は俺の思い込みかもしれない部分は多々ある。しかし、後ろを向き、窓に反射するあずきの顔を見て確信した。にへらと笑みを浮かべて嬉しそうに「えへへ」と声を漏らしている。
あずきは主人の前ではポーカーフェイスなのだと悟った瞬間だった。別にいいのに。
式神の弱点を知る。あずきの弱点...... こう、あれか、真名を明かすみたいなあれか? 冗談はさておき、弱点か...... 弱点は今はわからないが、後々わかってくるだろう、保留と。
躾とかペットじゃあるまいし...... ペットっぽいけども。知識はその都度教えるとして、どこからどこまで知らないことがあるのかもわからないのでこれも保留と。
式神が逃げるようなことはしない、もちろんする気は無い。チェックを入れておく。
⑦⑧⑨に限っては藍さんの単なる橙好きによる発作と見て良いだろう。しかしこれは俺にも感染しそうな発作であることは間違いないのでチェックチェックチェック!
式神が主人よりも成長するとダメ、か。主従関係が滅茶苦茶になっちゃいけないわけだ。なんだかもう既に強さのパラメーターはあずきが上回っているし、主導権を握られているような気もするし、なんだったらあずきが色々合わせているような気がしなくもないけど、了承のチェックと。
とりあえずと全部を比較し、検討して回ったメモをもう一度折って同じ場所へしまう。ご主人様が黙々と紙切れにチェックを入れているのを何も言わずに見ていた可愛い可愛いあずきちゃんに目をやると、こちらの視線に気づいて何かご注文ですかと言わんばかりに姿勢を正す。犬か貴様。
「あずき」
「ん」
ふんす、と鼻息を吐きながら名前を呼ばれた嬉しさを隠すように冷淡な返事をしたあずき。隠せていない目つきはキラキラと光っている。
「今日から俺が君のご主人様だ」
「ご主人様」
彼女の小さな唇から漏れる澄んだ――しかしまだ舌足らずな幼い声で俺の言葉の一部を復唱する。ご 主 人 様、と。いえ、まだ俺の理性は蒸発していない、こんなんで壊れたら今後が思いやられる。しかし踏ん張る。それほど愛らしくて堪らないんだよ察せ。
「俺はここに来たばかりだし、幻想郷のことはまるで分からない。あずきに教えられることは少ない。それだけじゃない、君を相棒にするだけの力が俺にあるとは思えないよ。そんな俺がご主人様でも良いのか?」
こくん。
あずきは一切の迷いもなく声のない返事を、そして了承をした。
「そうか。じゃあ、相棒になった印だ、ハグをしようじゃないか!」
すいません、理性はあるんです。先程から何度もしつこくすみません、あるんです、保ってるんです。ただのハグです。あずきを抱きしめたかっただけなんです。
心でしつこく訴えかけるように謝りながら、驚きで目を見開いているあずきを抱き締めてみた。
ちょうど彼女の顔がある俺の耳元に、子犬が鳴くような声が小さく聞こえた。彼女がもし普通の人間であり、心臓があったなら、血が通っていたら、とても暖かかっただろう、心臓の音は高鳴り、俺に音を聞かせただろう。
彼女は本物の吸血鬼、抱き寄せた身体は冷たい。心臓の音は俺のだけ。
こんなにも可愛い彼女も、化け物であると再度確認したのだった。
後書き
生前では感じられなかった暖かみ、いい匂いがする。
人間は――琥珀様は、凄いんだなぁ。
もし私に心臓があったら、ドキドキしてたんだろうなぁ。
私はご主人様――琥珀様の背中に手を回し、同じように抱き締め、琥珀様は私とは違う、生き物なんだなと再度確認した。
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