魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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真・四十三話 悪の心はひたひたと
前書き
これから聖の内面がどんどん白日の下に晒される事になります。
「ちょっと待って、俺一人で薬位塗れるっていったぁ!?」
「もう、あんまり動かないでほしいの!傷口に誤って塗れちゃったらどうしちゃうの!?」
「…………これは、どういう状況なんだ?」
「なのはが橘の野郎の治療中、以上」
「いや、それは見ればわかるんだけど……」
現在、アースラ内の医療室。そこではなのはが全の掌の傷に薬を塗っている。
というのも、艦に常駐している医師が全の治療を渋った為にこうしてなのはが薬を塗っているという訳なのである。
医師としてどうかと思うような行動だが、過去が改変されている為仕方なしかと全も殆ど諦めている節があるが、しかしそこからのなのはの行動に全は驚いた。
だったら、私が治療するのと言ったのだ。
どのような意図があるのかわからなかったが、半ば強引に全を席に座らせ切り傷などによく効くと聞かされていた薬を持ってきて全の傷口に塗っているという所なのである。
「ま、まあ。とりあえず、現状を確認したい。ヴィータ、説明を頼む」
「つってもなぁ、あたしがいたのって最後らへんの数秒間だけだぜ?最初っからいた橘から聞いた方が早いと思うぞ」
「それもそうなんだが……」
クロノは目線を横に向ける。
「だから、そこまで乱暴にする理由は、ってぇ!!??」
「動きすぎるからなの!!」
なのはによって結構強引に薬を塗られている全の姿があった。
あれはまだ少し掛かるだろう。
その光景を見ていた全員の気持ちが合致した瞬間であった。
「あそこまで強引に塗られるとは……」
右手を包帯で適切に巻き、項垂れる全。余程きつかったのだろう。
「そ、それでその時の状況を説明してもらえるか?」
「ああ、別に構わない」
そこから何とか持ち直した全が当時の状況を説明し出した。
補足などには呆けていながらもその様子を見守っていたなのはも加わりクロノ達は状況を理解した。
「なるほど。敵は橘の姿をしていたのか……」
「ああ、最期らへんにあたしもいたからその辺は分かるぜ。でも疑問がある。何でそいつ、橘の姿でなのはを襲ったのかって事だ」
「それについては簡単だろ」
「え?」
「何でそないな事わかるんや?」
ヴィータがさっきから感じていた疑問に対し全は簡単だろと返すとその疑問の答えが分からない全以外の全員が全に視線を向ける。
「そいつは本来の姿で高町を襲撃したら厄介な事になるってわかってたって事だ。つまり……俺たちの知っている人物で尚且つ信頼を得ている人物に限定される」
「っ、そうか。普段の姿でなのはを襲撃する……ん?しかし、疑問が残るぞ、そこまで僕らと信頼関係を得ているその人物……まあ、Xとしよう。そのミスターXはなぜなのはを襲撃する必要がある。理由は?」
「そこまで分かっているなら苦労はしない。それに理由が分かれば自ずと誰が実行犯かわかるだろうに」
「それもそうか……」
「誰なんだろう……」
「でも、許せないよね。私たちはその人の事を信頼しているのにその人はまったく信頼してなかったって事でしょ?」
「逆かもしれないぞ」
「逆って?」
「つまり確実な信頼を獲得する為に邪魔な存在である俺を排除する為に俺に化けて高町を襲った、とかな。これが一番確率が高い理由だろう」
「しかし、それだけの理由で……」
全が語った理由に対し、全員難色を示す。まあ、仕方ないだろう。それで信頼を得たとしても意味がないからだ。なぜなら将来それがバレる可能性だってあるからだ。
「何かに追い詰められた人間は何をするかわからない。人というのはそういうものだ」
「「「「「……………………」」」」」
全の言葉に誰も言葉を発せない。
その時
「なのはっ!怪我したって本当か!?」
聖が血相を変えて医務室に入ってきた。
「大丈夫だったのか!?怪我は!?」
「だ、大丈夫なの。バリアジャケットが少し破けただけだから」
「そっか、良かった…………おい、橘!」
おっ、こいつようやく橘と呼んだと全が見当違いな事を考えていたら聖が突然全の胸倉を掴んできた。
「何だ?」
「お前、何でなのはを襲撃した!?」
「………………は?」
「お、おい聖。お前、何言ってるんだ?」
「こいつがなのはを襲撃したんだろ!?ここに来るまでたくさんの局員がそう言っていたぞ!」
「違うんだ聖。あれは橘に化けた何者かの犯行だ」
「それがこいつの自作自演の可能性だってあるだろう!」
「それは、そうかもしれないが……」
聖の言葉に全員が納得しかける。確かにそうなのだ。
自身の信頼を勝ち取る為に全が自作自演を演じた。そう捉える事も出来るのである。
「それで俺に何かメリットがあるのか?」
「あるだろ!?この艦内でお前はある程度肩身が狭いからな。これを契機になのはを救った英雄とでも見られればある程度自由に動ける。それがメリットだ!!」
「そんなものをメリットなどとは言わない」
全はそう言って強引に聖の手をどけると、医務室を出ていこうとする。
「おい、まだ話は」
そう言って聖が肩に手を置こうとした瞬間
「そんなに、俺の存在が怖いのか、高宮?」
全はそう言った。
その言葉に思わず聖は動きを止める。
「な、何を言っているんだお前?僕が?お前を怖いと思っている?何を根拠に」
「じゃあなぜ、あんな声高々に俺の自作自演などと言った?あれは見方を変えればお前が俺の存在を邪魔に感じたから言ったとも捉える事が出来るし、他にも俺を排除しようと考えてあんな事を言ったとも捉えられるぞ?」
「お前の考えだろう!?そんな独りよがりな考え」
「お前の考えも所詮はお前の妄想にすぎん。言うだけならばタダだからな。だが」
全はそこまで言って区切ると、振り返り
「真実を知った時、お前はどんな反応をするんだろうな」
そう言って全は今度こそ、医務室を後にした。
「な、何が真実だ。あいつがやったに決まってるのに……それよりも、なのは」
聖が気を取り直してなのはに向き直ると、なのはの様子が変だった。
俯き、その表情はわからないがどこか怒っているようにも感じた。
「ど、どうした、なのは」
「何で、あんな事言ったの!?」
「っ、え?」
なのはは涙を流しながら聖に詰め寄る。
「何で自作自演なんてひどい事言ったの!?」
「そ、それは可能性の話であって」
「あんな言い方じゃそれで確定って言っているようなものなの!それに橘君が守ってくれなかったら私、ここには元気じゃいられなかった!今頃、病院のベッドの上なの!私たちはまず橘君に感謝しないといけないのに、なのにあんな追いつめるような事言うなんて……………………今の聖君、全然聖君らしくないよ!!」
そう叫んでなのはは医務室を飛び出していく。
「ま、待てなのは!」
「待ってやなのはちゃん!」
「なのは!」
「なのはってば!!」
「おい、待てよなのは!」
その場にいた聖を除いた全員がなのはを追いかけて医務室を飛び出していく。
医務室には聖だけが残されていた。
「何でだ……何で誰も理解してくれないんだ……僕のやっている事は正しい事なんだぞ……」
『マスター……』
聖のデバイス、アルトリアは聖のその言葉に愕然とする。
あれが正しい事……?と。
(あれが正しい事などあり得る筈がない……マスター……私はもう、貴方にはついていけない……貴方の懸念は正しかったようです。天照大御神様)
自身を作成し、聖に渡した天照大神の言葉に今更ながらにアルトリアは同意せざるを得なくなってしまった。
《アルトリア、私は貴方を高宮聖という転生する男の下に送ります。しかし気をつけなさい》
《気をつける、とは?》
《あの男はどこか、歪んでいる。その歪みがいづれあの世界に波紋を広げるかもしれないから》
《…………わかりました、心に留めておきます》
その時の会話を思い出し、アルトリアは決心する。
(いづれ貴方の下につくかもしれませんね、全……)
そんな事を思いながらそれでもを願うアルトリアだった。
後書き
本編中でなのはがこんなの聖らしくないと言っていますが、ぶっちゃけるとこれが聖の本性です。今までのは猫かぶりです。自身の考えが正しい、他の意見は正しくない。そんな独りよがりな考えを前世の頃から持ち続けています。後、聖のデバイスであるアルトリアに離反フラグが立ちました。というのも元々あの聖を転生させた神が作ったデバイスと思わせておいて、アルトリアの製作者は真白。理由は彼の歪みを知っていたから。だからデバイスに監視させる為に同じデバイスを作り聖を転生させた神が送ったデバイスは自身が回収し、自身が作ったデバイスを送りました。
さあ、色々とフラグが立った本話、回収されるのは大逆転の際に回収されますのでご期待下さい!
(後、感想ください!!誹謗中傷以外!!!)
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