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一の葦の年

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第二章

「富と栄誉を手に入れるか異郷で死ぬか」
「どちらかですね」
「我々の進む道は」
「そういうことだ、諸君達はどちらを選ぶ」
 コルテスは部下達に問うた。
「勝利か死か、どちらを」
「言うまでもありません」
 部下達は皆コルテスに強い声で答えた。
「勝利です」
「他には何もありません」
「そうだな、ではだ」
 彼等の強い声を受けてだ、コルテスは彼等にあらためて話をした。それは一体どういったものかというと。
「この近くにとりわけ強大な国があるな」
「アステカという国ですね」
「あの国がありますね」
「そうだ、しかしこの国は周辺諸国といつも戦争を行っていてだ」
 何故戦争を行っているかまではコルテスはこの時は知らなかった、聞いていることは聞いているが軍人でもある彼は確かな情報でなければ信じていなかった。
「諸国と険悪な関係にあるという」
「ではその諸国と手を結び」
「そのうえで、ですね」
「アステカを攻める」
「そうしますか」
「そうだ、確かに彼等の数は多いが」
 ここからはコルテスが確かに知っていることだった。
「馬も銃もない、砲もな」
「武器自体は劣悪ですね」
「鉄のものはありません」
「戦えば我々が有利です」
「これまでもそうでしたし」
「あの国についてもそうだ、この辺りの国々には馬も鉄も火薬もない」
 その全てがというのだ。
「だから勝てる」
「幾ら我々の数が少なくとも」
「一度戦いになればですね」
「周辺諸国を抱き込めば余計にですね」
「勝機が見えますね」
「そうなる、だからだ」
 それ故にというのだ。
「アステカに行くぞ」
「わkりました」
 部下達はコルテスに意気込んだ言葉で応えた、そしてだった。
 彼等はアステカに向かいつつ周辺諸国との外交を進めていった、そのうえで湖の上に浮かぶ石造りの巨大な街の前まで来た。
 その水上都市を見てだ、スペイン人達は思わず息を飲んで言った。
「何という街だ」
「あの様な街を見たのははじめてだ」
「ただ巨大なだけではない」
「湖の上に浮かんでいる様だ」
「この世のものとは思えない」
「何という不思議な街だ」
「全くだ、あの様な街は見たことがない」
 コルテスも息を飲んでから言った。
「実に不思議な街だ、そして非常に栄えているという」
「では、ですね」
「あの街、アステカに入り」
「これからですね」
「必要ならば戦いだ」
 そしてというのだ。 
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