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悪魔の劇薬

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第七章

「お茶はな」
「それとはまた違って」
「コーヒーだよ」
「そうした名前ですか」
「まあ飲んでみな、これが御前さんが探していた毒の正体さ」
「飲んでも何もないですね」
「実は毒じゃにからな」
 イブンもこのことは保証した。
「だからな」
「はい、まずはですね」
「飲むことだ」
「わかりました」
 ハンスも頷いた、そしてだった。
 彼は実際に杯を手に取ってそのうえでコーヒーを一口飲んでみた、そして一口飲んで思わずこう言った。
「なっ!?」
「どうだい?」
「何ですかこの味は!?」 
 これまでで最も驚いた声だった。
「何ていいますか」
「苦いだろう」
「苦いなんてものじゃなくて」
 その仰天している声で言うのだった。
「もうそれこそ」
「泥水かい?」
「そんな風ですよ」
「ははは、最初は皆そう言うんだよ」 
 イブンはコーヒーを飲みつつハンスに話した、見れば彼は周りの客達と同じく明るく楽しい感じで飲んでいる。
「泥水みたいだってな」
「というか本当にそうじゃないんですか?」
「泥水に金を払って飲むかい?」
「まさか」
「そうだよ、だからな」
「これは泥水じゃないですか」
「そうだよ」
 やはり笑って言うのだった。
「コーヒーさ」
「そうですか」
「まあどんどん飲むことだ」
 一口で驚かずにというのだ。
「そうすればわかるさ」
「わかるというと何が」
「コーヒーのよさがな」
「そうなのですか」
「一杯飲み終えるとな」
 その時にというのだ。
「はっきりわかるさ」
「そうなのですか」
「コーヒーのよさがな」
「それでは」
「ああ、苦くてもな」
「それでもですね」
「まずは飲むんだ」
 最後まで、というのだ。
「それからだ」
「最後まで、ですか」
「そうしたらわかるからな」
「このコーヒーがどんなものか」
「そうですか、それじゃあ」
 ハンスはイブンの言葉に頷いた、そしてだった。
 何とか彼にとってはこの上なく苦いコーヒーを飲んでいった、苦労して最後まで飲んだ。そうすると何故かだった。 
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