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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  それは違うよ



「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・・!!」

《プットッティラ~ノ ヒッサ~ツ!!》

「――イヤァッ!!!」

ドギュォッッ!!


使い魔との交戦に、仮面ライダーオーズは苦戦していた。
いや、苦戦しているのはほむらや杏子も同じだが、彼の場合は肉体の浪費が激しい。

というのは当然と言えば当然だ。
先の救助活動で、惜しみもなくガタキリバコンボを使ってしまったのだから、体力をかなり削られているのは当たり前だった。

そこにこの強力な使い魔だ。
銃を使うこの使い魔に、最初こそは速さで迫ろうとラトラーターコンボで挑んでいたオーズだが、それよりも相手の弾幕生成の方が圧倒的に多いのだ。

このままでは身体がもたないと判断し、一撃にかけてプトティラへとコンボチェンジ、ストレインドゥームを発射したのだ。





「外した!!」

「キキキキキッッ!!」

ドドドドドドドンッッ!!!


遠距離からの一撃を回避し、一斉掃射を仕掛けてくる銃を使う黄色い使い魔。

ガガガガガガガッッ!!!と、紫の装甲を火花が覆い、腕をクロスしてそれに耐えるオーズ。
このままでは変身も維持できない。さらには体力も持たなくなる。

そうなると、選ばれるメダルは限られた。


《コブラ!カメ!ワニ!!》

「変身!!ハァッッ!!」

《スキャニングチャージ!!》


ブラカワニコンボへとチェンジし、コンボソングも鳴り終わらないうちにスキャニングチャージで地面を滑走していく。
両足にはそれぞれワニのような上顎と下顎のエネルギーが生成され、蛇のように走るオーズは使い魔の弾丸を次々に回避して行く。

すぐ真横を弾丸が飛来し、さらにはギリギリで回避し、すぐ横で爆発もある中、その微妙な合間をオーズは縫って使い魔へと迫った。


「アぁぁあああああ!!」

「ギィッ!!」

ドォンッッ!!


寸前まで迫り、あと一息で辿りつくところで、使い魔が銃を巨大な大筒にしてぶっ放してくる。
それはオーズの脚を狙っており、接近していることもあって、回避するだけの余裕はない。

だから


「ハァッッ!!」

その砲弾を脚で挟み込んだ。
そして体を捻ってそれを粉々に砕き、爆破。

その爆炎の中から、オーズが回転して飛び出し、使い魔の腰から挟み込んで地面に叩きつけた。


そして放されると錐揉み回転して使い魔は吹っ飛んだ。
直後、使い魔はカァッッ!!と一瞬発光すると、盛大に爆発し、粉々になって果てる。



「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・」

肩で息をし、杏子とほむらの方を見やるオーズ。

二人とも応戦しているものの、その表情はあせり始めている。
恐らくは勝てるのだろうが、その後再び襲われたら対応できないだろう。

さらに、ここはまだ第三階層。
この先にいる使い魔がこれよりも強かったら、と考えると、これ以上ここで力を浪費は出来ない。




「ほむらちゃん!!杏子ちゃん!!」

「「!?」」

「そいつらちょっとこっちに」

《サイ!ゴリラ!ゾウ!!》

「寄せてくんない!?」

《サッゴーゾ!!―――スキャニングチャージ!!》


------------------------------------------------------------



「是ぁァァアアアアッッヅアッ!!」

ボボボボボボボボボォゥッッ!!
ズバガンッッ!!


使い魔溢れる魔女の間。
視界を覆う膨大な数の刃が、高さ一メートルの世界を支配する。

その高さは、丁度使い魔の頭部の高さである。
圧倒的な刃の膜に、黄色や赤の頭に穴が開いて消滅していった。



「すごい・・・・」

その光景を見ていたまどかの口からは、そんなありきたりな感想しか出てこなかった。
実際には多少の高さの違いがある刃だが、上から見ると一瞬で地面が鉄に変貌していくかのようである。

しかし、一見圧倒的な力で敵を蹂躙できているかのようだが―――


「はぁぁアアアッ!!―――――ッ、ハァッ、ハッ、ハッ・・・・クソ」

翼刀の息はやはり荒い。

使い魔を消し飛ばし、障害物も砕き、魔女の隠れる場所をすべて消滅させた。
魔女の体色は、忌々しいことにマミと同じ黄色だ。
障害物がなくなったこの場では、一目瞭然で見分けられる。


それに向かって、刃を放とうとする翼刀だが

(グゥっ・・・!!)

この魔女に命中させるには、精度と威力が必要だ。
全体攻撃ならともかく、あの小さな魔女に当てるには一発の刃が望ましい。

しかし、やはり右腕がそれを鈍らせるのだ。

「クソッ!!」

バァァアアアアア!!!


結局、その一発は打ち出せずに広域の刃で魔女を狙った。
しかし、その隙間をチョロチョロと逃げ、また使い魔が地面から湧き出てきてしまう。

やはり、自分一人ではとどめはさせないらしい。



同じように、ふたたび全域攻撃の刃で使い魔を殲滅、魔女の姿をいぶりだす。


そして


「さやかちゃん!今だ!!」

「はいッ!」

姿を露わにされるであろう魔女に向け、さやかが一直線に飛び降りてきた。

「あろう」というのは、まだ刃が地面を覆っているからだ。
飛び降りのさなかでそれが晴れるだろうことを考え、一瞬の隙も与えずに倒すつもりなのである。


(ずれた場所にいても、マントで修正できる・・・・これであの魔女も―――!!)

さやかの両眼が、晴れていく地面から順に魔女の姿を探してく。

と、急に一つの黄色い影が中心部に向かって突っ込んで行った。
無論、魔女だ。目標は翼刀。


相手を危険と判断したのか、疲弊している翼刀を狙いに来ており、弾丸のような素早さで迫って行っていく。
魔女の周囲をリボンが渦巻き、数本のドリルのように変貌し―――


「させるかぁ!!」

その魔女に、さやかが一気に落下していく。

マント下から剣を次々に取り出し、魔女に向けて放つさやか。
魔女もそれを回避するものの、それによって動きを制限され、そこに向かってさやかも加速していった。


「こ れ で 終わりだァ!!」

ズッ、ドンッッ!!



「うぉっ・・・・・」

翼刀の目の前で、土煙が吹きあがる。

その中でたなびくマント。
しゃがみ込み、魔女のど真ん中に剣をつき立てるさやか。

魔女はというと、その衝撃に四肢が砕けて地面に力なく横たわっていた。
血しぶきだろうか、魔女の顔にかかったそれが、ツゥ・・・とつたって地面に落ちた。


「フフ・・・・」

そして、少し笑って消滅する。

「・・・・・」




「翼刀君!!さやかちゃん!!」

「まどかっ!!」

と、そこに映司とほむら、杏子の三人が駆けつけてきた。

三人とも息は荒く、肩が上下している。
修復する余裕もないのか、二人の魔法少女の服は少し破損している。


「魔女は・・・・」

「今・・・さやかちゃんが倒したよ・・・・それで・・・・」


地面へと降り、集合する一同。
あとからやって来た三人に、魔女のこと、そしてマミのことを告げた。


「マミが・・・・魔女に喰われただと・・・・!!」

「マミちゃんは・・・その・・・戦える体調じゃなかった・・・」


映司たちの方も大変だったようで、使い魔三体に足止めを食らっていたそうだ。

最後にはサゴーゾコンボのスキャニングチャージで二体まとめて吹き飛ばしたそうだが、流石に一気にここまで来るには時間がかかったようだ。



そんなことを離していると、風景が歪んで元に戻っていく。

翼刀もヴァルクヴェインを腕に翳し、元に戻して剣をしまう。



結界が解け、戻ってきたのは病院の上層階だ。
壁に大きなガラス窓がはめこまれており、そこから町が一望できる。

太陽が申し訳ない程度に顔をのぞかせており、もう一分もしないでその全身を地平線に隠してしまうだろう程に沈んでいた。


「眩し・・・・」

その光に、さやかが目を細める。
ふと、太陽から目を逸らして下を見ると、そこには避難した患者たちがまだ残っていた。


よく見えないが、あそこに恭介もいる。
そう考えると、「自分は誰かを救える」という思いが、胸いっぱいに広がった。

そうしていると、頬を一滴の涙が伝った。


「あ・・・・れ・・・・」

「さやかちゃん・・・・」

「あ、あはは、なんでだろうね。なんで涙が・・・」

「だって・・・だって・・・・」

さやかか振り返ると、そこには目に涙を溜めたまどかが。

戦いが終わり、一気に静かな世界に戻ってきた彼女たち。
胸に残ったのは、仇を討てた爽快感ではなく、大切なものを失った虚しさだけだった。


「マミさんが・・・死んじゃって・・・・」

「う・・・ぐ・・・・うぇぇえええええええ・・・・」


そして二人は泣いた。
恐らく、そのまま座り込んで泣き崩れるほどに泣いた。

だが、それでも二人は抱きしめあい、互いを支えて泣きじゃくった。


一人ならくじけてしまいそうだったが、誰かがいれば支え合える。



失ったものは大きい。
だけど


沈んでいく太陽が、オレンジから薄くなっていって黄色に輝く。
まるで、その人の死を表すかのように。



------------------------------------------------------------



「はぁ・・・・・」


その晩。
美樹さやかは帰宅して重い溜息をついた。

今日はいろいろなことがありすぎた。


強大な魔女。
偉大な先輩の死。

そして――――


「あっ」

恭介への告白もあった。

こんな大事なこと・・・と思ったさやかだが、他にあったことを考えると、また涙があふれてきてしまう。


だけど


(こんなんじゃマミさんに笑われちゃう・・・・私はみんなを助けられる。マミさんとか翼刀さんみたいにならなくても、できることをやればいい)


パンパン!と頬を叩いて、気合を入れ直すさやか。
ふと携帯を見ると、メールが数件入っていた。


それは翼刀やまどか、さらにはあって間もない映司からの励ましのメールだった。

携帯画面を下にスクロールし、最後のメールを見る。
それは、恭介からのメールだった。


『明日、待ってるからね』

「・・・・・・」

不謹慎かもしれない。
マミさんが死んで、それでもこんなメール一件で笑っちゃう私は。


でも、良く考えてみればあのベッドはきれいだった。
血の一滴もないのだ。魔女に襲われて、そんなことがあるのだろうか?


病院から出た時、それが気になって翼刀に聞いてきたら

『・・・・そう・・・かもな・・・でも・・・』

『私!マミさんはまだ生きてると思うんです!!どこかで、きっと!!』

『それは・・・・』

翼刀の口調は重かった。
どうやら彼らの中では、マミは死んでしまったことになっているらしい。
それは杏子も、ほむらも同じだった。


だが、自分はそうは思わない。
きっとどこかで、生きている。
マミさんがそう簡単にやられるもんか。


だから――――きっと――――



「嬉しそうだね、さやか」

「あ・・・キュゥべえ」

「今日はお疲れだったようだね。とても強い魔女だったらしいじゃないか」

「もう・・・重要な時にいないんだから!!あたしたちがどれだけ大変だったと・・・・」

「ごめんよ。でも、僕にもいろいろとやることがあってね」

「やること?」


部屋にいきなり現れたキュゥべえだが、この生物の神出鬼没なところは今更だ。
別段恥ずかしいものを見られているわけではないので、特に気にせず会話を続ける。


「そうさ。僕にも僕の目的があるのさ」

「目的・・・って、なに?」


キュゥべえの言葉に、当然ながら疑問を浮かべるさやかだが 、キュゥべえはそれに答えることなくベッドの脇に置いてあるソウルジェムの近くにぴょこんと飛び乗った。


「綺麗なままだね」

「うん?それはまあ翼刀さんのおかげで・・・・」

「いいことさ。君自身をきれいに保っておくことは、戦いを優位にし進めることになるんだから」

「え?・・・うん・・・・・・・」


キュゥべえの言葉に、少し違和感を感じながら、さやかが返事をする。
そして、その違和感に気付いた。


「私自身・・・・?」



キュゥべえは言った。
この宝石こそ、美樹さやか自身なのだと。


「ど、どういうこと?・・・あ、そっか!ソウルジェムは魔法少女の証、私自身だから―――」


取り繕うように言葉を綴るさやか。

どういうことかわからないが、本能が警鐘を鳴らしている。



『この先を知ってはならない』




だが、そんなことを知ってか知らずか。
目の前の白い獣は、呆れるように息を吐いてから呟いた。


「・・・・それは違うよ美樹さやか」


それは、あくまで事務的な音だった。
かわいらしいその声であるにもかかわらず、機械の駆動音を聞いているような感覚。

そして、真実は告げられる。


「このソウルジェムは、その輝きから濁りまで、一片の違いもなく、すべてが君自身なのさ」




to be continued
 
 

 
後書き

キュゥべえの作戦。

キュゥべえ
「上げて落とす。それだけさ」


マジで最低だ・・・・

原作のキュゥべえは自分から何をするわけでなく、あくまで傍観するだけでした。
しかし、このキュゥべえは「自ら」動き出しました。


一体それはどういう違いなのか・・・・



映司はというと

ラトラーターで無理。
プトティラで一撃狙って無理。

映司
「やば・・・も、もう・・・体力もたない・・・」

《ブラカ~~ワニ!!》

映司
「楽になった!!まだ行ける!!」

みたいな。

サゴーゾの歌が簡単だったのは、いい加減しつこいかと思ったので。



それにしても・・・・



ストーリーの展開上仕方ないとは言え、さやかがマミさんの死に動揺しなさすぎじゃないか?とか思いましたけど・・・・

うまく言いわkゲフンゲフン!!
・・・いや、話を進められてよかったですよ。

あっはっはっは!!


さて・・・こっから落としていきますよォ!!!(虚淵的な意味でな意味で)


そろそろ唯子の方も書かないとかなぁ・・・と思いはじめています。


キュゥべえに「コンチクショウ!!!」と思ったそこのあなた!!
きっと我らが主人公が、気持ちよく倒してくれますよ!!


翼刀
「次回、堕ちる魂」

ではまた次回


 
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