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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  不吉な雲と二回戦


「はッ・・・・・?」

「お、起きたかい」

「アインハルトさーん!!」

「おめでとう!!」

「おめでとうございます!!」


選手控室のベッドルーム。
そこで目覚めたアインハルトは、いきなり仲間たちの出迎えを受けた。

最初こそボーっとしてしまっていたものの、翼刀に勝ったことを思い出し始める。


「わ、私!!」

「ああ、お前の勝ちだよ。よくもあそこまで翼刀を押し込んだなぁ」

「やった・・・やりましたよ!!ヴィヴィオさん!!」

「おめでとうございます!!すごかったですよ、アインハルトさん!!!」


キャッキャとはしゃぐ少女たち。

見ると、床には蒔風の剣が突き刺さっている。
組み合わせた「林山」の効果で、バリアの中で寝ているうちに疲労を回復してくれたのだろう。



楽しそうな雰囲気だが、別の控室ではそうもいかず・・・・


「何で負けちゃうの~~~!?」

「痛い!!痛いって!!う~ん、まだ何か隠してるとは思ってたけど、まさかあそこまでとは思いませんでした!!」

「何誇らしげなのよ!!」

「アウチッ!」


その部屋では翼刀が唯子にポカポカと叩かれていた。
だが翼刀は誇らしげだ。


彼も元々道場で習いながらも教える立場だった。
伸びしろのある子とのああいう関わりは、やはりうれしいい物なのだ。

そうしていると、別室からアインハルトの声が聞こえてきた。
何はともあれ、翼刀も唯子も彼女が勝って不満などない。


祝福の言葉を投げかけに向かった。



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「二回戦は?」

「休憩を挟んでやるらしいよ」

「で、昼を挟んでから三回戦か」

「大丈夫か?アインハルト」

「あ、はい」



二回戦のトーナメント表を見ながら、水分補給やストレッチで時間をつぶしていく選手たち。
そして一回戦での疲労を回復したところで、第二回戦開始のアナウンスが鳴った。


「あ、始まります!!」

「じゃあ私たちも行こっか」

「宜しくお願いします!!」



選手たちは闘技場へと向かう。

が、その時蒔風たちは―――――



「来るのか?」

「五分五分・・・いや、来る:来ない、で4:6くらいの比率かな」

「来る確率40%か・・・・」

「そもそも、それってなんなんです?」

「「災害」」

「え?」

「ああほら、俺もうちょいここにいるから、唯子のセコンドついてってやってくれ」

「あ、はい」



コロシアムの外周のてっぺん。
仮にコロシアムをお椀にしたならその淵の一番上で、翼刀を行かせて蒔風とショウが残った。


「で?」

「新たな世界の結合。その際構築を計算したら、出るかもしれないという結果が出た、ってのは話したな?」

「ああ、だから確実性はないと」

「40%とか言いながら、実はそれすら机上の空論を越えていない。だから大会中止も呼び掛けるわけにはいかなかったんだが・・・・」

「まあ赤銅の戦いで一回延期になってるくらいだからな」

「・・・こりゃくるぞ」

「オレらでどうにかできると思うか?」

「撃退か、やり過ごすくらいにはな。ありゃ怨念の塊だ。ヘタすりゃ紀元前からの」

「あー、確かそうだったな」

「覆すには根源から何かをいじくらなきゃならん」

「うーむ」



そう言いながら、蒔風目を凝らして遠くの空を見る。



暗雲が立ち込めていた。




------------------------------------------------------------




『では!!外の方は少々風も強くなってきましたが、第二回戦を始めたいと思います!!』


司会者の言葉やアナウンスに従って、選手たちがそれぞれのリングに上がる。
ヴィヴィオ、リオ、回復したアインハルト、遠くの方では知った顔もちらほらと。


「なんか私たちおざなりにされなかった?」

「言わないで!!」



そして


『こちらのリングでは、またまた「EARTH」所属VSチームナカジマのメンバーで対決だ!』



「綺堂唯子選手、コロナ・ティミル選手。リングに上がってください」

「「はい!!」」



審判に呼ばれ、リングに挙がる二人。
さっきの試合からして、恐らく審判がついたのだろう。


だが審判からしても、あんなもん自分がいたところでどうにかできるものではないだろ!!と内心突っ込んでいる。


だから



「あの・・・・何かあったらお願いしますね」

「オレに頼んじゃうの?それ」


翼刀に済みませんが、と手を出して頼んできた。
まあ確かにそうする気ではあったけど。

ちなみにコロナのセコンドはオットーがついている。



「大丈夫じゃね?すぐに終わるかと思うし」

「は?」


「余裕ですね。先ほどはアインハルト様に負けてしまったのに」

「いやぁ、俺と唯子は戦い方違うし」

「そうなんですか?」




『では各リング!!試合・・・開始ィッッ!!』

プーーー!!!



ブザーが鳴る。
それぞれの試合が始まった。



------------------------------------------------------------



「うひゃぁ・・・・・・」



試合が始まり、目の前の光景に唯子が唖然としていた。
何せ地面や周囲の物体をかき集め、目の前に巨大なゴーレムが出来上がっていくのだから。


何も知らなかったわけではない。
今まで練習を共にしたときも見たし、一回戦でも使っていた。


だがこうして目の前でメキメキと出来上がっていく様は圧巻という物だ。


「これが私のゴーレム生成!!唯子さん!!行っきますよーーー!!」

「うわわわわわわあ!!」

ドゴーン!!!



書いてみると何ともしまらない効果音だが、実際にはとんでもない音だ。
唯子が走って避けなければ、今ごろぺしゃんこだっただろう。


しかも


「あれ?あのゴーレムってステージ削って作ってるよね?」

「はい!そうです!!」

「じゃああれに乗ってる限りコロナってば場内?」

「えっと・・・・どうなんでしょう?」


くるりと二人の首が審判に向く。
するとそこにはいつの間にか蒔風が到着しており、審判とあれこれ話していた。

そして二人そろってサムズアップを決め、結論を言う。


「面白いから採用!!」

「こらぁ!!」

ドガッッ!!



蒔風の言葉に突っかかる唯子だが、コロナのゴーレム・ゴライアスはかまうことなく攻撃してくる。


「ちょ、容赦ないって!?」

「唯子さん相手に手なんか抜いてられませんから!!少しでも隙があったら叩きます!!」



「唯子ー、光栄なことだぞー!しっかり受け止めてやれー」

「ちょっと翼刀うるさい!!こういうのって言うのはいいけど言われると腹立つんだね!!」

「「「いやおいお前」」」


翼刀どころか蒔風とオットーも一緒になって突っ込む。


唯子と言えば、リング内を駆けまわってゴライアスの攻撃を回避しているところだ。

回避し続けている。
しまくっている。

だが相手はゴーレム、疲れなどないし、拳が砕けてもすぐに再生される。


しかも


「ゴライアス、ギガントナックル!!」

「GHOOOOOOOOOO!!!」

ズッドン!!


「うっそぉ!?ロケットパンチ!?きゃぁあ!!」

ドゴゴガン!!!!



リングを走り回る唯子目掛けて、ゴライアスの両腕が分離して発射された。
彼女の姿が、凄まじい轟音と共に吹き上がった土煙の中に消える。


「決まった!?」



ゴライアスの上でガッツを取るコロナだが、さすがに完全にやれたとは思っていない。


現に、土煙の中から声がしてきた。



「ふっふっふ。さすがはゴーレム生成の天才、コロナちゃんだね。でも、日本じゃ二番目よ」

「わ、私ミッドチルダなんですけど・・・・」



「ミッドって日本になるのか?」

「さあ?俺も知らん。規模からして都市国家になるんじゃないか?学園都市みたいに」

「なるほど」



「じゃ、じゃあ一番は誰ですか!?」


コロナの言葉に、唯子が返す。

「それは―――――」


直後、土煙が一気に晴れ、その姿があらわになると同時に


「私よ!!」


堂々と宣言した。

踏みつけたのだろうか、ステージにめり込むゴライアスの左拳に片足を乗せ、右拳は片腕でつかんで、肩に回して背中に担いでいる。


何ともかっこいいシーンだが、言ってることはメチャクチャだ。

そう思っていると、唯子が足元の左拳と、背負った右拳をぶつけてかみ合わせ、ゴツゴツと殴って削って行った。
そして――――


「どうよ!!」

そうしてできたオブジェは、どうよと言われても返答に困る形をしていた。
人型だと言われればそんな気もするが、言われなければただのガラクタ。


ポカーン、とする翼刀たちセコンド。

コロナといつの間にか腕が修繕されているゴライアスが、動きをシンクロさせて頭をコリコリと掻いて数秒考え込む。
しかしわからなかったようで、結局質問した。



「な、なんでしょう?それ」

「翼刀」


「えッ!?」

「なに?俺はあんなわけわからん物体だと思われてんの!?」

「ボコボコにされた翼刀」

「訂正された!!」



愕然とするメンバー。
ポカーンの中にコロナとゴライアスが入り、翼刀が抜けて唯子に突っ込んでいた。


「おいなんだそれ!!俺はもっとこう・・・」

「ってこれのどこが翼刀なのよッッ!!(バガンッッ)」


「「「とか言いながら蹴り砕いた!?」」」


「翼刀はもっとかっこいいわよ!!」

「あ、うん・・・照れること言うなよ」

「えへへ~」


「な、なんだこれは・・・・これがバカップルってやつなのか・・・・」



頭を押さえて、怯えるようにガタガタする蒔風。
目の前の空間を一体どうすればいいというのか。


「蒔風ェ!!」

「何だ!!ショウ!!」

「爆破しろ!!」

「それでいいのか!?」

「だめでしょう」


客席からのショウの言葉に反応する蒔風。
そしてオットーからの冷静な突っ込み。



とまあともあれ




「ここは勝ちに行くわよぉ~~~!!!(ブンブン!!)」

「ッ!!ゴライアス!!全力防御!!」

「GOOOO!!!」


唯子が駆け出し、ゴライアスが迎え撃つ。
ステージを殴りつけ、波打った地面が唯子に襲い掛かるもそれをジャンプして回避する唯子。

中の唯子に向かってゴライアスの拳が飛び、しかしそれは触れた瞬間にパニッシャ―キックで砕け散った。


「う・・・!!!」


スタン、とゴライアスの頭上に着地する唯子。
ゴライアスは残った左腕で唯子を鷲掴みにしようとするも、それよりも早く唯子の拳が脳天に当てられた!!



「パニッシャァー!!パンチッッ!!!(ヒュゴッ)」

ガバァンッッ!!


唯子の拳により、ゴライアスが砕け散ってコロナの身体が落ちる。

何とかゴライアスを再構築しようとするコロナだが、それよりも早く唯子につかまれ、お姫様抱っこで着地させられてしまった。


「う・・・」

「大丈夫?」

「あ、はいまあ一応・・・」

「じゃあよかった」



そういって唯子がコロナを降ろす。

しかし


「はい♪」

「あれ?」


降ろされたのは、リング外だ。
ちなみに唯子はステージの上にいる。


「そんなぁ!!」

「コロナお嬢様!!まだ一歩!!一歩で戻れれば!!」

「この状況でそれ言いますか!?オットーさん!!」


確かに、そうして戻れば続行だ。
だがコロナの目の前ではニコニコとしゃがみ込んでこっちを見ている唯子がいる。

足を延ばせば届く位置のステージだが、これでは弾かれてしまうだろう。

しかも


「キラキラしてきれいなデバイスだねー!!」

「ブランゼルーー!?」

《申し訳ございません、マスター》


デバイスを奪われていた。

これでは地面を作って移動ができない。
それなら一歩も動かないで戻れるというのに。



「う・・・・う・・・・」

「どうしたの?コロナちゃん」

「う・・・えーい!!」


打つ手なしとみてやけになったのか、コロナが飛びつくようにステージへとジャンプした。

その跳躍に唯子は少し驚いていた。
まさかコロナが自分を飛び越えるとは思っていなかったからだ。


だが



ガシッ

キャッチされ


パスン

受け止められ


ストッ

元の場所に戻された



「う、うわーん!!!」

「うぇ!?な、泣いちゃった!?」



「あー、唯子いけないんだー」

「悪いんだー」

「鬼畜ー」

「オニー」


『と、ともあれ、戦いは素晴らしいものでした。一歩跳躍して戻されたのであれば、唯子選手の勝利です!!』


そんなこんなで、唯子の二回戦は終わった。

オットーに泣きついて、皆に慰められるコロナ。
唯子もごめんね、と言いながら笑って頭を撫でていた。

まあコロナもガチ泣きというよりはギャグ調の泣きだったし。



他のステージでも、二回戦が終了していく。



これでまた休憩をはさんで第三回戦となる。



が―――――




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「何だこの計器の反応は!?」

「さっきまでこんな反応無かったぞ!?」

「急に出現したんです!!自然現象とは思えません!!」


「ま、まて・・・・この先って言ったら・・・・」

「か、格闘大会やってるドームじゃないですか!!」

「関係各所に連絡を取れ!!ハザードレベル7!!スーパーセル級の大嵐が来るぞ!!!」



「きょ、局長・・・・」

「なんだ」


「あの嵐の中に・・・・魔力反応が・・・・・」

「なに?」

「しかも・・・巨大な人型をしたものが、逆さまに浮遊しています・・・!!!」




------------------------------------------------------------



ピンポンパンポーン

『ただいま、ミッドチルダに暴風警報が発令されました。観客、選手の皆さんはスタップの指示に従って、速やかに避難してください。繰り返します。ただいまミッドチルダに――――』



「な、なに!?嵐!?」

「どういうことだ!!さっきまで確かに風は強かったが、嵐なんてものが来るほどではないぞ!!」


観客も選手もざわつく。

当然だ。
そんな大嵐であるならば、ミッドの気象センターが予測できていないわけがない。


だが、現に来ているのは大災害レベルのスーパーセル。
大会は中断され、観客の避難に全力が注がれていた。



「押さないでください!!決して走らないで・・・・」

「避難経路はこちらです!!パニックにならないで、走らずに向かってください!!」



さっきまでの歓声が、すべて悲鳴と怒号に変わっていた。
晴れていた空は一瞬にして暗雲に覆われ、まるでこれから先の事態を暗示しているようだった。






と、そこで






《キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!》







空から、笑い声が聞こえてきた。
だがそれは爽快なものではなく、まるで逃げ惑う自分たちをあざ笑うかのような、癇に障るような醜悪な笑い。



見上げると、暴風は止み、変わりに破壊が巻き起こっていた。

どこから飛来してきたのか、瓦礫が舞って、客席に突っ込む。



だがそれをなのはの砲撃が打ち砕き、フェイトが下にいた人たちを救出、避難させていた。


「ち、来ちまったか」

「ショウ!!あれが何だか知ってるの!?」



見上げるフェイト。


そこには、嵐の姿などどこにもなかった。




あったのは









巨大な姿をした、ドレスを着こんだ人形のようなものが、逆さまになって浮遊している姿だった。





「ショォウ!!!」

「なんだ!!」

「客席は任せるッッ!!!」




客席を守るのがショウなら、リングの選手を守るのは蒔風や翼刀の仕事だ。

あれに目的はなく、通過していくだけだろう。
ただ、こうして現出してきた意図はわからないが、こちらと交戦する意味はないはずだ。




しかし






ボシュッ!!


その宙を浮く巨体の袖の中から、黒い煙が伸びてきた。
それはボフッ、と蒔風の前に落ちると、煙は引き、人型の何かになった。


まるでそれは影のようなものだった。

しかしフリル付きのスカートや、その容姿から、彼が連想できることはただ一つ。




「まるで魔法少女か・・・・それがお前の役者かい?舞台装置の魔女よ」


影は黙って動かない。
だが、一つだけはっきりしていることは



「交戦の意思あり、か・・・翼刀!!」

「はい!!」


「全選手をこの場から迅速に避難させろ!!どんな手段を使ってもかまわない。どうなったってここよりは安全だ!!」


「わ、わかりました!!!」



そうして翼刀も駆けだす。

しかしその眼前で、ボフッ、という音がそこかしこで聞こえてきた。




「な・・・・・」

「こんなにたくさん!?」



それもまた、蒔風の前に現れた影と同じようなものだった。
ただ、一人一人は別人のように容姿が違う。






「チッ。出現は気紛れだからともかくとして、なんでこっちに脅威を奮う必要があるんだ?」

「ショウ!!あれは・・・あれはいったい何なんだ!?」



先ほどのフェイトに続き、シグナムからの質問。
彼女らもまた、黒い影に行く手を阻まれている。


それに対し、隠す必要もないとショウが答えを述べた。


頭上に迫る、巨大な影。
それを見上げて、名称を上げた。



「舞台装置の魔女・ワルプルギスの夜・・・・・紀元前からの、少女たちの怨念の塊さ」




to be continued
 
 

 
後書き

あれ?大会の爽快感が一瞬で消えたぞ?
しかもワルプルギス到来。


見滝原に行く前には、こんな所を通過していたんですねぇ。



でも向かってくるなら迎撃もしましょうが、彼女(?)は基本通過するだけです。
出現すれば破壊を振りまきますが、見滝原のときだって別に何かを目的にしていたわけではありません。


しかし、今回ワルプルギスの夜は明らかに侵攻してきました。


その目的とは一体!?





というか大会の唯子が

ロケットパンチ→マジンガー→Z→怪傑ズバット!!

みたいな?

お前何歳だよ。





蒔風
「次回、防戦。VSワルプルギス」

ショウ
「来るにしても、ここまでやってくるとは思わなかったぞ・・・・」




ではまた次回

 
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