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もっと高く

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第一章

        もっと高く
 心斎橋まおみはこの日も部活の高跳びの練習を熱心にしていた、学校の体操服である半ズボン姿で何度も何度もだ。
 跳ぶ、しかしだった。
 どうしても目標の高さを跳べずにだ、背面跳びで跳び込んだマットの上で落ちるハードルを見て苦い顔になった。
 そしてだ、マットから出てから言った。
「もう一回よ」
「今日はもう止めたら?」
「もう遅いわよ」
「部活の終わる時間過ぎてるし」
「だからね」
 同じ陸上部の同級生達はそのまおみに止める顔で言った。
「もうこれ位にして」
「今日はね」
「それで明日ね」
「また明日練習して」
「その時にね」
 明日こそというのだ。
「跳べればいいじゃない」
「そうなればいいでしょ」
「だから今日はね」
「これ位にして」
 そしてというのだ。
「お家に帰りましょう」
「後片付けをして」
「そういえば」
 まおみは友人達に言われて少し高跳びから目を離した、そして周りを見るとだった。
 もう暗くなっている、それで言った。
「もうね」
「終わった方がいいわよ」
「これ以上やったら夜になるわよ」
「だからね」
「もう帰ろう」
「それじゃあ。けれど」
 友人達に言われて帰ることにした、しかし。
 そのことを決めてもだ、まおみは苦い顔でこうつぶやいた。
「中々跳べないわね」
「その高さね」
「目標にしてる」
「それがっていうのね」
「まだっていうのね」
「そうなのよ、何度も何度も跳んで」
 そしてというのだ。
「跳び方も助走の仕方も考えて」
「それで跳んでも」
「まだっていうのね」
「跳べない」
「そうだっていうのね」
「そうなの、どれだけどんな跳び方をしても」
 練習をしても工夫をしてもというのだ。
「跳べないのよ」
「まあそれなね」
「何度も何度も練習して」
「そうしてね」
「跳べる様になる」
「それしかないから」
「結局は」
 友人達もこう言うしかなかった、既に高跳びのポールもバーもマットもなおしだしている、そうしつつ話していた。 
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