| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

仏門・・・というか白夜叉

「ふい~・・・さすがに、白夜叉相手にそう簡単に勝たせてはくれないか」
「さすがに、まだ16、7年しか生きとらん若造に負けることはないのぅ」

ボロボロになった神主衣装から普段着に代わりタオルを取り出して汗を拭く一輝に、扇子を取り出して自身を扇ぐ、こちらも汗をかいた白夜叉。全力を出すと危険極まりない二人のため、ゲーム盤を展開、一部制限を付けて思いっきり戦っていたというわけだ。どんだけ戦いたいんだよ、一輝は。
なお大まかな制限としては、一輝はアジ=ダカーハ使用禁止。白夜叉は火力に制限、と言った形である。当然それ以外にも霊格的な色々が制限かかっているのだが、それは割愛。

「しっかし、シ○カのやつも融通が効かんものだ。アジ=ダカーハがいかに危険とはいえ」
「一応湖札も俺と大差ないくらいには強いんだから危険物のはずなんだけどな」
「まあ、そこは認識の違いじゃろう」

危険物を近づかせず、それに十二分に対応できるだけの戦力を監視にぶつけておく。とっても普通で、そして問題の起こりにくい判断だ。一輝としてもただそれをされたら面白みがないと殴りこみをかけかねないのだが、久しぶりに会う白夜叉との会話に戦闘だ。ちゃんと飴まで準備されている。釈○すげえな。さすがは仏門のトップ。

「それに、同レベルの実力を持っているとしても相性というものがある。最強の神殺しの力を十全に使いこなせる初対面の神霊なぞ、私であっても近づきたくはないのう」
「よく言う。白夜叉は神霊じゃなく星霊だろうし、本気だせばどうにか抑えられたと睨んでるんだがな」
「霊格を開放しゲームを開催すれば、ゲーム盤に閉じ込めるくらいのことは出来ただろうが、勝てたかと言われると怪しいところだ。証拠もない話だが、あれを倒すにはいくつかの条件があると睨まれておった」
「条件?」
「うむ。その辺り、あのマスコットから聞いておらんのか?」

さすが白夜叉様、今日初対面なのに肩乗り状態のアジ=ダカーハをみてしっかりマスコット扱いしてくれる。確かに狙ってはいたが全員が全員「何ふざけたこと言ってんだ!?」なリアクションをしてくるがためにそろそろ飽きてきた一輝としても、これくらいのノリが気楽ですらあった。

「んー・・・何も聞いてねえな」
「おらんのか?自らという終末を踏破した英雄に対し、それなりに興味があるものと思ったのだが」
「その辺りは、人類最終試練の先輩としてか?」
「はてさて、どうかの?」

既にクリアされた人類最終試練とはいえ、自らの手札につながる可能性が少しでもあれば明かしてはこない方針のようだ。

「まあ、あれだ。あんまり詳しくはねえんだけど、箱庭に現れる・・・ってか現れた三大人類最終試練、あれは全て外界における終末の具現・・・みたいなもんなんだろ?」
「まあざっくりといえば、そんなところだ」
「だとすれば、それ相応の・・・『外界を救う英雄』が倒さなけりゃならない存在、結果逆説的に『世界を救う英雄として誕生した者』でないと倒せないものと想像しているんだけども?」
「当たらずとも遠からず、ってとこだな」

と。一輝と白夜叉だけだったその場に新たな人物が現れる。カツ、カツ、と足音を響かせて歩いてくるその姿を見て・・・

「何か胡散臭いおっさんが出てきたな。なんだ、観光名所か何かなのか、ここ?
「言わんとすることは理解できるから困るのぅ。というか帝釈天、おぬし霊格が減りまくってはおらんか?」
「ええい、事情を察してくれてもよさそうなやつが味方してくれないとは!」

味方はいなかった。ドンマイ極まりない。

「・・・つか、帝釈天、って言ったか?このおっさんが?」
「うむ。霊格やらなにやらに違和感しか存在せんが、帝釈天で間違いない」
「ふぅん、これが・・・」

と、胡散臭いものを見る目でその男・・・白夜叉曰く帝釈天を眺めた一輝は、とりあえず浮かんだ疑問を解消することを優先した。

「おかしいな、お前らんところからも来るように言われてた男思うんだが、自分から来たのか?」
「まあ最初は呼び出そうって話になってたんだが、部下に『どうせ暇してるんだから行ってきてくださいよ。そんでとっとと片づけてきてください』と言われてしまってな。書をだしてからいくら待っても来ないもんだから、しびれを切らしたらしい」
「それはそれはご愁傷さま」

言外にお前のせいだと言った帝釈天に対して一切気おうことなく発言して見せるのが一輝クオリティだ。

「まあいいや、1つ手間が省けたってことだろ?それで?当たらずとも遠からず、ってのはどういうことだ?」
「私からも聞いておきたい、帝釈天。おんしら、アジ=ダカーハの謎を解いたのか?」
「いや、はっきりとその謎を解き明かしたわけじゃない。だからあくまでも俺の考察に過ぎないが・・・そこまで外してはいないだろう」

やけに自信満々な様子に二人そろって首を傾げつつ、まあ暇だし時間もあるし何よりも暇だから話を聞く方向に移行した。一輝が空間倉庫からちゃぶ台を取り出してその上に茶菓子を並べると、三人はそれぞれ正三角形を描く位置に座った。そろって一口茶をすすり、始まる。

「まず前提条件としてお前に知っておいてもらいたいのは、アジ=ダカーハを倒す条件、あれを俺達が満たしても倒すことはできなかった、ってことだ」
「それは神霊だったから、ってことじゃなく、か?」
「ああ。人間に降天しても、倒せなかった」

だとすれば、一輝に倒すことが出来たという事実にも疑問が生まれてくる。だからこそ、彼は一輝を呼び出したのだろう。

「俺は・・・というより俺達はお前がどのような功績を持っているのかも、どのような世界から現れたのかも、どにょうな霊格の保有者なのかも知らない。知らないからこそ真正面から尋ねさせてもらうぞ」
「どうぞ。他言無用を守ってくれるなら話してもいい。元々白夜叉には話す予定だったし・・・マジモンの帝釈天だってんなら、実力、立場双方文句なしだ」

含みのある言い回しが帝釈天の中で引っかかったが、一旦脇において話を進める方針で決定した。

「あくまでも、俺が読み解いたクリア条件なんだがな。
“アジ=ダカーハを倒し得る武力を持った人間の英傑”。
“アジ=ダカーハが内包する終末論Xの謎を解いた賢者”。
“アジ=ダカーハを不倒と知りながら挑む異世界の勇者”。
以上の三つだ。心当たりはあるか?」
「・・・異世界の、ってのはどういった理由からの条件付けだ?」
「単純な、と言ってしまえばそれまでだがな。あれがあくまでも人類史を終わらせる終末論であるのなら、それを解決するのは外界の人間の責務であろう、って考えからだ」
「ふむ、なるほどな・・・」

腕を組み、顔を上に向けて、じっくり30秒ほど悩んでから。あらゆる可能性を考え、結論を出す。

「まず、1つ目。これは該当するだろうな。一応生まれながらの神霊ではあるんだが、それなりに面倒な成り立ちのせいで人間でもある。武力は言うまでもないだろ」
「不思議な小僧だとは思っていたが、本っ当に面倒な生い立ちをしておる」
「白夜叉に言われたくねえ」
「それは同意だな」

解せぬ・・・とつぶやく白夜叉をよそに、一輝は話を続行した。

「次に、二つ目。これについては正直分からん。あの一時、一瞬だけ真実を知ってた可能性はある、な」
「・・・どういうことだ、それは」
「今はアジ=ダカーハの真実は頭の中にない。湖札も叡智系統のギフトを持ってるけど、そこにも載ってないのは間違いない。ただあの一瞬だけは、その知識を保有していた、かもしれない」

詳細は後からまとめて話すから一旦流してくれ、と一輝が言うので二人もそれ以上言及しない。その様子を見てから一輝は再び口を開いた。

「最後に、三つ目。これだけは、絶対に、該当しない」
「・・・ほう?」

この上なく、はっきりとした断言。

「では、お前は外界の出身ではないと?」
「広義の意味では外界・・・箱庭の外側の出身だがな。人類史、って意味合いでは無関係だ」
「となると、神霊であるのだし、神話の類か?」
「そうでも無い。人が主となって作られる世界だ。妖怪も悪魔も天使も神様もいたけどな」
「・・・要領がつかめんな。つまり、どういうことだ?」

問われた一輝は茶を飲み干し、新たに注ぎながら二人に問う。

「これから話す内容は、ぶっちゃけ俺の主催者権限のクリア条件だ。十割全部話しはしないが九割九分話すことになる」
「なっ・・・!?」
「一輝、それは、」
「まあ待て。別に、浅慮な考えで話すわけじゃない」

いいから落ち着け、と本人に身振りで示されてしまっては落ち着くしかない。浮かせた腰を再び下ろして、二人も茶を飲む。

「その代わり、二つほど頼むことがあるんだがな」
「内容を申してみよ。自らの霊格をさらそうというのだ、ある程度聞き入れる」
「そいつはありがたい。ま、そうはいってもほぼ一つみたいなもんだ」
「逆に言えばその一個はかなりの危険物ってことになるんだよなぁ・・・」

と言いつつも帝釈天にも否はないらしい。それを確認してから口を開く。

「まず一つ目。他言無用と私闘禁止、ってことで契約(ギアス)結んでくれ。自分の弱点晒す相手にいつでも襲われかねない状況は作りたくない」
「まあ、当然だの」
「むしろ拍子抜け・・・ってか、それくらいで教えていいものではないと思うが」
「事情が事情なんだよ。ガチで何かあった時どうにかできるやつとか、俺の知り合いじゃ白夜叉くらいしかいねえし」

荒事の気配がする。

「んで、二つ目なんだが。まあ察してるかもしれないけど・・・俺が討伐が必須の魔王に墜ちたとき、そっちで何とかしてくれ」
「・・・つまり、討伐しろ、と?」
「ああ。ただ魔王に墜ちた程度なら放置してほしいが、マジで危険物になったら頼むわ。武力的に頼める奴も少ないし」

で、どうだ?と。
それなりに重みのある内容を頼まれた二人は、それぞれじっくりと吟味する。吟味したうえで・・・肯定を選択した。
白夜叉は、下層を救った一輝に対する恩賞として。
帝釈天は、新たな人類最終試練の誕生を防ぐために。
それぞれが、その真実を聞く。



 ========



「とまあ、こう言うわけだ」
「なるほど・・・まーた、スケールの大きな話だのう」
「そして確かに、その霊格ならあらゆる条件を無視してアジ=ダカーハを討ち取れるだろう。その段階で切り離されたやつが再び人類最終試練となることもない。ないが・・・」
「まあ、そうなるのは分かる。俺だって知った時は心の中でそうなった」

懐かしいなぁ、と。まだ半年すらたっていないにもかかわらずそう思考する一輝。何を考えているのだろうか、コイツは。

「まあそう言うわけで、な。悪いが帝釈天の疑問については別をあたってくれ。・・・たぶん、アイツを真に倒す役目を担うのは十六夜だっただろうから、そっちからたどるのが正解だと思うぞ?」
「ああ、そうさせてもらう。しっかし、またふりだしの予感がするなぁ・・・」

彼の仕事は片付かない。困ったことに、だ。まあ動けば余計なことしかしないと定評のある神様なので、動けば動くだけ場が乱れることだろう。・・・ダメじゃねえか。

「それよりも、だ。一輝。おんしは自らが最も最悪の形で魔王に墜ちたとして、どうなると予想しておる?それなりに危険物となる予感があったからこそ、聞いたのだろう?」
「あー・・・まあ、突拍子もない予想だって言えばそうなんだけどな」

それでも、実現したときの被害が大きすぎるから。そして、最悪の場合ではなくともそれなりの被害を出せる自信はあったがために。彼はこの提案をしたのだ。

「究極、俺が箱庭に受け入れられでもすれば、人類最終試練になったりする可能性がある、と考えてるな」
「・・・内容は?2000年以降に発生する終末論なんぞそうボロボロ生まれるはずもない。そんな中で発生するなど」
「ああ、違う違う。勘違いするな。俺がなるとして、なにも終末論ってわけじゃねえんだ。あくまでも『人類が乗り越えなければならない試練』だって言うんなら、終末に限らねえだろ」
「・・・そういや、そうだったな」

そこは勘違いするな、と断言した後に彼は語る。漠然としたものであるが故に表現が難しく、どういったものかと考えて・・・

「んー・・・『善悪とは』みたいな感じ、か?人類の終末、それを完全に乗り越えた先に現れるものが何なのかって考えると、そう言う現状『永遠の課題』であるものじゃねえのかな、と」
「あー・・・一理あるっちゃある。確かにお前の成り立ちを考えれば、それの担い手となる可能性も考えられるだろう。が・・・たぶん、それはないだろ」
「うむ。それを担うものについては、より適任者がおる」
「・・・へぇ?」

それはそれで面白そうだ・・・という話は一旦置いて。

「まあだとしても、何が起こるかはわからねえからな。さっきの話は頭の片隅にでも置いといてくれ」
「あいわかった。そうならんよう願っておるた、そうなった時は引き受けよう。いざとなればアジ=ダカーハに使おうとしていた手段を使ってでも止めて見せよう」
「こっちも引き受ける・・・と言いたいところなのだが、生憎俺の霊格は減りに減っていてな。そのときは代役を立てるかもしれんが、それは許してくれ」
「「だが断る」」
「死ねと!?」

シンクロしたボケにしっかりツッコミを入れる帝釈天。さっきまでもシリアスな空気はどうしたのだろうか。

「ああ、その代わり一輝、おんしに頼んでおきたいことがある」
「頼み?なんだなんだ、それなりに世話になってるからある程度は聞くぞ?」
「うむ、まあまずは手を出せ」

言われた通り手を差し出す一輝。その手を握り、用件を伝える。

「実は数年後、第二回太陽主権戦争を行う予定でな」
「あー・・・死人まみれ殺しアリの殺伐とした第一回の焼き直しか?箱庭の住人を間引く感じ?」
「いやいや、次は殺し御法度にするつもりだ。それにあたり一輝には参加者兼主催者として参加してほしい、と」
「無茶言ってねえか、それ?」
「まあ多少はな。だが、それくらい何とかできるはずだ。何が紛れ込むか分からん以上、参加者の中に対処できるものを紛れ込ませたいしのぅ」

と、そう言って。白夜叉は一輝に一つのギフトを譲り渡す。

「というわけで、だ。何が何でも参加してもらうために一つ、太陽主権を譲り渡す」
「まて事後承諾ヤメロってちゃんと許可を取れよそんな面白そうなこと全くもってサンキューな白夜叉!」
「うむ!それでこそ問題児よの!」
「まて今しれっとものすごいことやらかさなかったか白夜王!?」

・・・大丈夫かなぁ、この三人。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧