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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0110話『大淀のちょっとした悩み』

 
前書き
更新します。 

 





私は廊下を歩きながら今日の予定を考えていた。
意外にまだ備蓄期間があったのでこのまま任務と遠征を繰り返していれば大規模作戦までには開発資材以外のカンストも夢ではないのかもしれないと思い始めていたのだ。
しかし、だからといって油断はできない。
月初めのEO消化でどれだけ資材をできるだけ最小限に抑えて期日までに回復するかを考えないといけないからだ。
この際、サーモン海域北方とKW環礁沖海域は大規模作戦が終わるまで見送ろうと考えている。
特にサーモン海域北方の攻略にはボーキを大量に使う編成である旗艦のアイオワ以外は全員空母で埋まっているのだ。
それに戦艦レ級エリートをなんとか退けられても運悪くE風に何度も見舞われたらシャレにならない。
よってそんなに思ったよりダメージの少ないカレー洋リランカ島沖までの攻略にとどめておこうと思う。それでも勲章は四つ貯まるのだから改装設計図は一つは作れるのでいい具合だろう。
特に大規模作戦は苛烈を極めると思うからできるだけ温存しておくのも悪くない。というか本音を言うと初めて開発資材以外の資材がカンスト間近まできているからベストな状態で挑みたい。
そして私の艦隊の練度で甲が通用するのか試してみたいと思っている。
新艦娘掘りでは丙で挑むだろうができるだけ甲で攻略したいしね。
そんな私事を色々と考えている時だった。
曲がり角で誰かと接触してしまった。

「あっ! ごめんなさい!……って、なんだ提督さんか。チャオ♪」

ぶつかってきたのはリベッチオだった。

「曲がり角で私も気を付けなかったのは悪いと思うがそんなに急いでどうしたんだ……?」
「うん! これからキヨシーと一緒にプールに入りに行くんだ!」
「なるほど。それで清霜の部屋に向かっていたのか。だけどここは本棟だぞ? 駆逐艦寮は隣だと思うんだけど……」

私は少し気になったのでリベッチオに聞いてみた。

「それはー……えっとね。怒らないでね? プールに行く道の間にちょうど本棟があるから近道で通らせてもらっているんだー」
「ああ、なるほど。それでよく駆逐艦の子達がよく本棟の廊下を水着で走っているのか。納得した」

そういえばそうだよな。
プールがある場所は本棟が一番近いんだよなぁ。
意外に潜水艦寮の近くではないという苦情もなかったので気にしていなかったな。

「そうか。それなら大淀とか任務の書類を持って歩いている子が多いから気を付けるんだぞ」
「わかったー! それじゃ提督さん、またねー!」

それでリベッチオは元気よく廊下を走っていった。
「走るな」とも言っておくべきだったな……。
証拠にリベッチオが走り去っていった先でまた誰かと接触したのだろう。
「キャー!」という叫び声が聞こえてくるではないか。

「うーん……元気過ぎるのもいいんだけどケガはしないでほしいな……」

ただただリベッチオ含めて駆逐艦の子達が心配になった。
やんちゃな子が多いからなぁ。
後で大淀に頼んで『廊下は走らない』という張り紙を付けるのを話してみるか。
なにかしら検討をしないと接触事故が多発しだしてからでは遅いからな。
さっきもすでに接触事故が起こっているわけだし。
昔の艦時代の記憶があるのだから接触事故の危険性くらいは分かると思うんだけどな……。
主に深雪とかは昔を思い出しているのか走ったりはしないしね。
そんな事を考えていて先ほどまで何を考えていたのか忘れかけていたのでやばいやばいと手帳にメモを取っておくのであった。

そんなこんなで執務室に戻って書類作業に勤しんでいる時であった。
大淀が執務室に入ってきて、

「提督。少しよろしいでしょうか?」
「どうした大淀。表情がどことなく疲れているぞ?」
「提督にもそう見えるのですね……。はぁ」

それで分かりやすいため息を吐く大淀。
いったい何があった……?

「それがですね。プール使用が解禁しましてから本棟を抜ける子が後を絶たないのです」
「あー……その件か。それは私もリベッチオに聞いたから知っているよ。なんでも近道で使わせてもらっているとか……」
「はい。ただ通過するだけなら別に構わないのですが、駆逐艦の子達がよく水着を持って走っている光景をよく目にしまして……気が緩んでいるのではないかと思う次第でして」

それでまた溜息を吐く大淀。
私が思っていた以上に事情は深刻のようだな。

「わかった。それじゃ私も考えていたんだけど『廊下は走らない』の張り紙でも廊下の壁につけておくか?」
「それもいいと思うんですけど……聞いてくれるでしょうか?」

不安そうな表情を浮かべる大淀。
その気持ちは分かるな。
精神年齢が割と高い方の陽炎型の子達はマシな方なんだけどそれ以外の子達は性格もあってかやんちゃな子が多い。
冷静な子もいるにはいるんだけど他の子の特有の個性に喰われ気味なんだよな。
睦月型の子達とかなんかははしゃぐ子が多いイメージだ。

「まぁ後でお知らせでもしておく方がいいと思う。そうでもないと聞かない子が多いだろうし」
「そうですよね……。朝霜さんとか清霜さんとかもよく走っていますし」

礼号組関係で不安な子達の名前をあげられる。
うん、大淀の言いたいことは分かる。
あの二人は夕雲型の中では落ち着きがない子だからな。

「そんなに不安なんだったら大淀がプールに行って直接注意でもしておくか?」

なにげなく私はそんな話をしてみる。
だけどそれで大淀は真剣な表情になって、

「……そうですね。私が直接注意すれば……いや、でもここはやっぱり提督が注意した方が効果はありそうですけど……それに私も実を言えばプールに入りたいですし……いやいや、私事を表に出すわけにはいきません。我慢しませんと……」

色々とぶつぶつ言っている大淀の姿を見て、私は言う。

「大淀。命令だ。頭を冷やす目的でプールに入って来なさい」
「えっ!? そんな、でもよろしいんですか?」
「ああ。もう一人の大淀と交代で入って来なさい。普段から頑張ってもらっているんだからこんな時くらいご褒美があってもいいもんだろう?」

それで私はおそらく部屋にいるであろうもう一人の大淀も執務室に呼ぶ事にして電話を取る。

「……もうっ。こういう時は提督は強引なんですから……。ですがお気持ちは受け取っておきますね。それでは大淀、行ってまいります」

それで大淀はどこか嬉しそうにプールへと向かっていった。

「気持ちの発散も大事だよな」
《はい。大淀さんは普段から真面目ですから少しは休んだ方がいいと思います》

榛名の同意も得られたので良かったと思う。
ちなみにその後のプールでは大淀が駆逐艦の一同に廊下は走らないようにと注意していたという。
その後にプールで気持ちを発散していたとも。
そして廊下を走る子が減ったかどうかは大淀の腕次第だろう。
結果として後日に走る子の数は減ったと思うしな。
さすが大淀だなと思った私であった。


 
 

 
後書き
リベッチオだと思わせて後から大淀にシフトしていく話を書いてみました。
まぁ、タイトルで分かってしまうものですが。
うちの提督像は優しいの一言ですから少し甘いんですよね。
ブラックになられても困りますから調和は取れている感じです。



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