最低で最高なクズ
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ウィザード・トーナメント編 前編
重役は澄ました顔で
ウィザード・トーナメントが残り半月まで迫っていたある時。俺は一人の人物から声を掛けられることになる。その人物というのは学年序列2位。
赤髪が特徴的で、色気の溢れ出す肉体とそのイメージにピッタリな妖艶な空気を感じさせる声。間違いなくカリスマ性を持っているだろう。だがなぜ彼女が俺に声を掛けてきたのかは分からない。
「ようこそ私の城へ。どうぞ自由に腰掛けて下さい。」
「何もかも赤で統一されてて落ち着けない場所だ。まぁ城主が絶世の美女ってのが唯一の救いだな。」
「あらまぁ。面白い冗談を言いますのね。」
明らかに目が笑っていないのが丸分かりだ。表情を隠すのが下手なのかあるいは、こちらに対して初めから敵意を持っているのか。
「折角のお客様ですから紅茶を淹れますね。」
「いや、俺も手伝わせてもらう。」
「いえ、アナタの手を煩わせる訳にはいきません。」
「良いんだよ。これくらいは俺だってできるから。」
俺は紅茶を淹れようとする彼女の後ろに立ち、ティーカップとティーポットを奪い取るように手に取った。彼女はまるで獣を相手にする調教師のように少し色気の篭った笑みを見せた。
俺は黙々と、だが魅せるように紅茶をティーカップに注ぐ。香りだけで上等な茶葉なのが分かった。彼女はというと俺が目の前で紅茶を淹れるのを見ながら感心しているようだ。
「あら、アナタは紅茶なんて入れたことがない人だと思っていたのだけれど上手なのね。」
「昔から親に字の書き方と紅茶の淹れ方はしつこく教えられたからな。もう体が覚えてる。」
ところで彼女についての説明をまだしていなかったな。それじゃあ彼女を紹介しよう。
彼女の名前は「エリナ・ルビーエヴァンズ」。序列は学年2位。彼女の最大の注目点は使う魔法で、上位の魔術士はほとんどが多くの魔法を使える万能な魔術士になろうとする反面、彼女は1つの鋭利な武器を持つほうがよっぽど効率的だと「代償魔法」のみに力を注いだ。
その結果として代償魔法のみなら序列1位よりも優れていると言われている。しかし、代償魔法のみを強化し続けたため、その他の魔法に関しては中の下くらいの実力しか備わっていない。
紅茶が淹れ終わり、2つのティーカップを持って彼女が座るソファーの反対のソファーに腰掛けた。そして、間髪入れず質問をすることにした。
「序列2位が最下位の俺に何のようだ?」
「アナタは先日行われた中間筆記試験において脅威の1位を出したそうですね。」
まだその試験が終わってから4日しか経っていない。テストの結果が公に公開されるのは明日だ。しかし、彼女は公開前にその情報を仕入れていた。
「それは初耳だな。まぁ確かに1問も悩むことなく解けたし、なんなら見直し終わって寝てたよ。」
(魔法の基礎や成り立ち、そこから現れる特徴。俺はそれらを独学で勉強してたからな。授業を頻繁にサボるのは分かっていることを勉強したくないだけだ。)
「無理もないです。私が率いている"派閥"は教師との繋がりも固いものですから。」
(はぁ....そう言えばコイツは派閥のヘッドか。)
この実力が物を言う学園では、序列10位以上の生徒はそのほとんどが派閥を作る。派閥の雰囲気はそれを率いるヘッドに寄るので派閥の認識はヘッドの認識と考えてもいい。
中には派閥を作らずに他の派閥に所属するような奴も数名いる。序列2位のエリナが率いている派閥「ソレイユ」はマーリン学園においては強大な3大派閥の一つで序列10位以内の生徒も2人所属している。一人は序列3位。つまり紗友里だ。
「そこで提案をするわけですが、私の派閥に入り、私のためにその力を使ってもらえませんか?なんなら次回のウィザード・トーナメントのパートナーになって頂いても良くってよ。」
(つまりは「私を生徒会長にするために骨を折ってくれ」って言うわけか。)
「紗友里の入れ知恵か?」
「あら?悪い提案ではないでしょう?」
悪い提案ではない。むしろ普通の生徒ならば間違いなくその申し入れを飲むことだろう。エリナの実力を考えればイザベルより強いことは明白だ。
イザベルの序列は50位。俺が知る真希乃の友人の中では真希乃に次いで高い。ちなみに真希乃の序列は5位。過去に派閥を作ろうと提案されたそうだが、「自分は役に立ちたい人がいるから」と言って派閥を作らず、また所属もしなかったそうだ。
(そう言えば、なんで真希乃はそれを話してくれた時に顔赤くしてたんだ?)
「答えを聞かせてもらいましょうか?」
「じゃあ、普通に断らせてもら......」
ドンッという音がすると彼女は壁ドンのようなことをしていた。どうやら意地でも受け入れるまで返すつもりがないらしい。
「私の聞き間違いかしら?」
「いや、アンタの耳はちゃんとしてるぜ。」
「フフッこれはしつけが必要ね。安心しなさい。私が一晩たっぷり可愛がってあげるわ。」
「はぁ.....わっかんねぇ奴だなぁ。」
次の瞬間彼女の顔が強張り、俺は彼女を押し倒した。彼女はまるで別人を見ているかのように少し恐怖を持った目をしていた。
俺は口づけをするように彼女に顔を近付ける。すると彼女は目を閉じながら抵抗するのを諦めたような顔をしていた。俺は彼女の唇ではなく耳たぶを軽く噛む。
「ひゃん!」
初対面の時とは明らかに声が違う。やっぱり見掛けがすべてで知識も何もない馬鹿だ。勘違いしないで欲しいのが、俺もそんな経験をしていない。ただ、そういう知識だけはあるから試している。
俺は目尻に涙を溜める彼女を見て主導権を獲得したことを確信した。もうここからは俺のペースだ。彼女も変に抵抗してこない。
「まだ無茶苦茶にされたいか?」
「.............っ!」
俺は彼女の耳元で特別声のトーンを低くして、ボソッと呟いた。彼女は寒気が走ったかのようにピクリと身震いした。そして俺は目を瞑ったままの彼女から離れると、普段の声に戻ってもう一度きっぱりとお誘いを断った。
「そんじゃ、誘ってくれたのは嬉しいが断らせてもらうよ。どうせなら次回からは紅茶に入れる睡眠薬は無臭の強力なのを使うことだな。」
俺は何事もなかったかのように彼女の城を出た。どうやら俺が帰ったあとも彼女はしばらくの間ずっと顔を真っ赤にしていたそうだ。少しばかり刺激が強過ぎたのかと俺はほんのちょっぴり反省した。
それから俺はソレイユに所属する奴らから妙な視線を送られるようになった。何でも「ヘッドを堕とした奴」として警戒されているらしい。尋常じゃなく迷惑だ。
だがその視線以上に面倒なのが当の本人であるエリナだ。公の場なら建前として態度を崩さないでいるが、プライベートな環境で遭遇する場合は「ご主人様」と呼んでくるようになった。さながら彼女は奴隷と言った所だろう。
「ねぇアンタ。」
「なんだ紗友里。」
「エリナさんに何をしたの?最近明らかにアンタに対する態度が豹変してきてるんですけど。」
「知らねーよ。本人に聞け。」
(ホントにヘッドならちゃんとして欲しいもんだ。)
ちょっとした出来心で面倒くさいやつに面倒くさい形でなつかれてしまったことを心から後悔する俺だった。
後書き
【現時点での容姿まとめ】
○エリナ・ルビーエヴァンズ
リアス・グレモリー (ハイスクールD×D)
ウィザード・トーナメントにおいては登場するキャラクターの戦闘は全部書こうと思っています。
すでにめちゃくちゃ登場してますが。
次回もお楽しみに。
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