恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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539部分:第四十二話 于禁、事実を知るのことその十五
第四十二話 于禁、事実を知るのことその十五
「劉備殿」
「関羽さん?」
「うむ。どうしたのだ?」
関羽は劉備の隣に寝ている。この時も張飛にまとわりつかれている。その見事な胸が半分見えている。他の面々もそれぞれ寝ている。李典と馬超の寝相の悪さが目立っている。
「眠れないのか」
「于禁さんはお二人に頼りにされてたんだね」
「その様だな」
「けれど私は」
自分はだというのだ。
「そうしたことは」
「できていないというのだな」
「関羽さんも迷惑ですよね」
目は既に開けている。そうして暗い天井を見ながら話すのだった。
「やっぱり。私なんかと一緒で」
「いや、それは違うぞ」
「違うんですか?」
「劉備殿には助けられている」
そうだというのである。
「精神的にな」
「精神的にですか?」
「そうだ、助けられている」
そうだというのである。
「それもかなりな」
「そうだといいんですけれど」
「劉備殿のその明るさ」
関羽が言うのはそのことだった。
「そして穏やかさと優しさ」
「そうしたものがですか」
「私の心を癒してくれる」
さらにであった。関羽は言葉を続ける。
「私だけでなくだ」
「関羽さんだけでなくですね」
「鈴々も。朱里達も皆劉備殿に癒してもらっている」
「癒しですか」
「それは何にも替えられないものだ。そう」
「そう?」
劉備もだ。関羽のその言葉を聞いていた。そうしてだった。
自然と彼女に顔を向けていた。そのうえでの問いだった。
「そうといいますと」
「劉備殿に魅かれているのだ。是非共にいたいとな」
「皆さんがですか」
「劉備殿は劉備殿だからいいのだ」
「私だから」
「そうだ。だから気にすることはない」
「わかりました」
劉備もだ。関羽のその言葉に頷いたのだった。
そうしてだ。微笑んで言うのだった。
「私は私で皆さんに」
「そうしてくれるな、これからも」
「そうさせてもらいます」
劉備もまた同じだった。自分のことには気付いていなかった。そしてそのことに驕ることもなかった。そうしたこと全てが彼女の最大の武器であることもだ。彼女は気付いていなかったのだった。
第四十二話 完
2010・11・8
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