魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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第47話 ダンジョン探索(ライを求めて………そして伝説に………)
C—1………
『ではここから指示を出します。この先100mを右折してください』
ここはC地点。ウーノさんの話だとこの場所でガジェットを製作していたらしい。
明かりも薄暗く、かなり不気味だ。
「足元気をつけろよ」
「ああ、分かって!?」
つまずく夜美を支える。
「言ってるそばから………」
「す、済まない………」
そんなことをしていると…………
ウィーン………ウィーン………
機械音が聞こえてきた。
「なんだこの音?」
「何か動いている?」
その音は俺たちが進む道の先から聞こえてきた。
「あれは…………」
暗く、まだよく見えないが、シルエットは見えてきた。
カプセルみたいな丸いシルエット…………
「ガジェット?」
スカさんにデータを見せてもらったから見覚えががあるけど…………
『ガジェットですか!?おかしいですね、今は全て製造を中止していて稼働させていないはずなのですけど………』
と、そんなことを話していると………
「うわっ!?」
足元に熱線を放ってきた。
「コイツ………ラグナル!!」
『分かりました』
「セットアップ!!」
俺はラグナルをセットアップする。
「我も………」
夜美も俺に続いてセットアップした。
『何故、稼働しているのか分かりません。今こちらで調べてみます』
「どうすればいいですか?」
『破壊しながら先を進んだほうが良いと思います。I型は数も多いので、戦うだけ無駄です。AMFも使えますので、魔力残量にお気を付けて』
「分かりました。聞いたとおりだ夜美。基本俺が前衛で、夜美が後衛で行こう」
「分かった」
「取り敢えず道を作ろう。夜美、頼む」
「分かった、任せろ」
そう言って杖を真上に構える。
「新技だ。闇に飲まれろ、インフェルノ!」
上に出現した魔法陣から巨大な闇の魔力弾が次から次へとガジェットに向かって飛んでいく。
直撃するたびにガジェットを破壊し尽くした。
「…………………俺っていらなくね?」
「どうした、行くぞレイ!!」
「あいよ………」
俺たちは更に奥へと向かって行った。
リビング……………
「おかしいですね…………」
ウーノは零治たちに指示を出しながら、なぜガジェットが動き出したのかを調べていた。
「どうやっても異常なしとしか…………」
「ウーノさん、どうしたのですか?」
その声を聞き、ウーノは振り返ると、風呂上がりの星達がそこにいた。
「おかえりなさい、お風呂はどうでした?」
「気持ちよかったですよ。キャロも大喜びで」
「はい、気持ちよかったです!」
「クキュー!」
「フリード!!」
ソファーの上で寝ていたフリードがキャロのところへ飛んできた。
「ふふ、二人は仲が良いですね」
「はい、フリードはいつも一緒でしたから」
笑顔で語るキャロにその場にいたルーテシア以外の女性陣が和んだのだった。
「そう言えば、レイと夜美はどうしたのですか?」
「それなのですが…………」
ウーノは今起きている出来事を説明し始めた……………
D—8………………
「ディエチちゃ〜ん、どこにいるの〜?」
クアットロが呼びかけるが返事はない。
「一体どうしたというのだ、ガジェットが稼働しているだけでも驚いているのに、まさか襲ってくるとは………」
「ドクターが何かやらかしたのではなくて?」
「それはないのではないのか?しかし…………はぁ………」
目の前にまた現れたⅠ型とⅡ型にトーレはため息を吐く。
「全く、次から次へとゾロゾロと現れて……………面倒だがさっさと倒して先に進むぞ」
「仕方ないですね、ディエチちゃんには今度おごってもらうことにしましょう」
トーレとクアットロも先に進んでいく…………
C—14……………
「魔神剣!!」
斬撃を生み出し、ガジェットを吹っ飛ばす。
「エニシアルダガー!」
ナイフ型の魔力弾を連射する夜美。
「くそっ、キリがない!!」
「もう少しで次のフロアだ!頑張れ夜美!」
節約しながら前に先に進む俺達。
「よし!!」
なんとか抜けた俺たちはその場に座り込んだ。
進んできて分かったことだが………
・あいつらはフロアの境目を超えてこない。その場合、目の前にいても攻撃もしてこない。
・フロアによっては出てくる数も変わる。
・フロアによっては、明るかったり、部屋が狭かったりと、そのフロアごとに特徴が違う。
・なぜかAMFを使わない。
・経路は複数あり、どこにつくのかは分からない。
と、こんな感じだ。
俺たちは今ちょうどフロアの境目に到達し少し休んでいる所だ。
「全く………さっきの場所はガジェットかなり多かったな。やはり選ぶ場所を間違えたのではないのか?」
「そうかもしれないな…………真ん中を行くべきだったか?」
あの後、ウーノさんがアジトのCPUに異常を発見したらしく、ガジェットが動いているのは、対侵入者迎撃用にスカさんが作った、『迷宮ダンジョン迎撃システム』が原因らしい。
スカさんが遊び半分で作ったもので、随分前に廃棄したとウーノさんは言っていた。
話によると、上記で言ったとおりの事が起き、それで侵入者をダウンさせるのが目的だとか………
だけどちゃんと最後まで行けるようにしたのはスカさんの遊び心らしい。
これによりウーノさんのバックアップが無くなった俺たちは自分たちで進むしかなくなってしまった。
しかもそれだけでなく、A〜Fに上がっていくに連れて難易度が上がっていくらしい。
今回ライはFフロアにいるため最後まで行かなくてはならない。道のりはまだまだ先だ。
「でも一気にC−19まで来れたな。結構短縮出来たみたいだぞ」
「そうだな、少し休んだらまた先に進もう」
俺たちは少し休むことにした……………
C—10……………
「IS、ランブルデトネイター!!」
「でやっ!!」
フェリアのISとノーヴェのガンナックルによる攻撃でガジェットが爆発する。
「やったっスねチンク姉!ノーヴェもよくやったっス!!」
「よくやったじゃねぇ!!お前も戦え!!」
お茶らけて言うウェンディにノーヴェが怒る。
「だって、ここのフロアじゃ狭すぎて私のISじゃ、邪魔するだけっスよ………」
「んなことないだろ!現に今ボードの上に乗ってるじゃねえか!!」
「こんな場所じゃ高機動戦闘も出来ないっスよ〜」
「喧嘩は後にして2人とも。少し先に転送装置があるよ」
セインに言われ、ノーヴェとウェンディは喧嘩をやめ、セインの言った転送装置へ向かう。
今、ここにいるのはフェリア、セイン、ノーヴェ、ウェンディ。
鬼ごっこ途中で消えたライを探しにCフロアへ入ったのだが……………
「何で迎撃システムが作動しているのだ?」
入って早々にガジェットに襲われた4人。
フェリア以外、これといった実戦をしていない3人だったが、問題無く戦っている。
いや、主にフェリアとノーヴェの二人だが…………
セインは元々戦う能力では無いので、自身のISでフロアの偵察をしている。
これのおかげで敵の位置を把握しているので大いに役にたっている。
一応、ウェンディもエリアルボードを持ってきてはいる。
何故持っているのかと言うと、単純に鬼ごっこで逃げている時に使っていたからである。
直ぐに皆に文句を言われ、使用不可となっていたが…………
「でも、本当に持ってきておいて良かったっス」
移動中、ウェンディはライディングボードの上に乗って移動していた。
姉が歩いているのにも関わらず…………
「お前な…………」
「いいから行くぞ、ノーヴェ」
「分かったよ、チンク姉」
「みんなここだよ」
そこには怪しく光っている転送装置があった。
「何処に繋がっているんだ?」
「分からない、私もこんなものがあるなんて聞いたことが無い」
「どうする、チンク姉?」
「そうだな」
「当然乗るっス!!」
そう言って後先考えず転送装置に乗るウェンディ。
「おい勝手な事するなよ!!」
「こういう時はショートカット出来るってゲームだとお約束っス!!大丈夫っスよ!!」
3人は暫く考えたが、ハッキリ分からない以上、転送装置に乗らない方が良いという判断になったが………
「みんなも早く来るっス!!」
ウェンディが操るライディングボートに押され、3人共転送装置に乗ってしまった。
「「「ウェンディ!!!」」」
「無限の彼方へ、さあ行くぞっス!!!」
こうして4人は目的地の分からない場所に転移したのだった…………
リビング……………
「大丈夫かな、夜美お姉ちゃん、お兄ちゃん…………」
キャロが心配そうに呟く。
「大丈夫ですよ、元々ドクターが初期に遊び半分で作ったものなのであんまり危険性はなかった筈です」
ウーノの言葉に少し明るくなったキャロ。
しかし………
『さて、それはどうかな?』
ウーノの展開していたディスプレイに黒い影の男が現れた。
「あ、あなたは!?」
『私はメルフィス、貴様なら私の名前を知っているだろう、ウーノ』
と影の男は言っているが……………
「………………………誰でしたっけ?」
『俺はお前らが作ったアジトの自己防衛プログラムのコアだろうが!!!』
もの凄い怒鳴り声でウーノに怒った。
「……………………………ああ」
『絶対思い出してないだろ!!』
「私は覚えていないのですが…………ドクター?」
ウーノは回線を開き、スカリエッティのラボへ通信を送る。
すると、スカリエッティの部屋がディスプレイで表示された。
「ドクター?」
『なんだいウーノ…………ヒック…………』
「ドクター…………まさか………」
『今私、思いついたのだけどね、今度みんなでピクニックなんてどうかな?せっかく零治君達もいるのだから、どこかへ連れて行くべきだと思うのだけれど………』
「ドクター!!その零治君達がピンチなんですよ!!」
『そうなのかい?またどこかの少女を引っ掛けてきたのかな。全く、私の娘たちもいつか彼の毒牙にかかると思うと…………』
ブツブツと自分の世界に入るスカリエッティ。
「ドクター…………」
頭を抱えるウーノ。
「使えないな………」
冷たい言葉で罵る加奈。
「そんな事言っちゃ駄目ですよ加奈………」
「ルーちゃんどうしたの?」
「ゼストが大の字で寝てた……………」
少しムッとした顔で言うルーテシア。
そんなルーテシアを見て、キャロは苦笑いしかでなかった……………
D—5……………
順調に進んでいた俺たちだったが、ここに来て奇妙なフロアに出た。
「夜美、見てみろ」
「なんだ?」
次のフロアに入った俺達はそこにポツンと置いてある箱に目が行った。
「これって……………」
「宝箱だな……………」
そう、そこにはゲームみたいに宝箱がぽつんと置いてあった。
「どうする?レイ」
「開けてみるか」
俺は全く躊躇せず、箱を開けた。
「これは…………」
中には、2本のビンの飲み物と紙が入っていた。
『魔力回復薬。失った魔力を回復します』
「「……………」」
二人は無言になり…………
「「一応持っていこう…………」」
使わずに一応持っていくことにした。
C−13……………
「やっぱり駄目っス!!こんなフリがあったら試さないと芸人じゃないっス!!」
「落ち着け、ウェンディ!!お前は芸人じゃないはずだ!!」
「そんなの関係ないっス!!人としてフリがあったならそれに乗らなければ腐ってしまうっス!!」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!!」
「…………………はぁ………」
そんな様子を見ていたフェリアはため息をついた。
今の状況を説明しよう。
ウェンディがしようとしていること、それは…………
『修理中、使用してはいけません』
と転送装置の隣に立て札が立っていた。
「行かなければならないっス!!ダメと言われると無性にやりたくなるっス!!」
「やめろって!!またスタート地点に戻りたいのか!?」
さっき4人の転移先はまさかのC—1、『スタートに戻る』だった。
フェリア達はまた一から始めてここまで来たのだ。
「いやっス!!絶対に使うっス〜!!」
そんなウェンディを3人がかりで抑えて今回はスルーしたのだった……………
リビング……………
「一体何が目的ですか?」
今、リビングではメルフィスによって、3組のダンジョンの様子をディスプレイで表示され、私達はそれを見ています。
トーレとクアットロもこのダンジョンにいることに驚きました。
多分アジトに着いたとたん、巻き込まれたのでしょう。
しかしディエチはどこに行ったのでしょう?
『そんな事決まっている。私はスカリエッティに復讐するために行動を起こしたのだ』
「復讐?」
『私は作られてすぐに気に入らないとFフロアに破棄されたのだ!!気に入らないのその一言で!!Fフロアに捨てられた私は、気づかれないように少しづつデータを吸収してきた。全てはスカリエッティに復讐するために………そして私に転機が訪れた!!』
「転機とは?」
『スカリエッティがいきなりガジェットの製作をストップし、Dフロアから先を遮断したのだ。そうなれば後は自由だ。そこで私は一気に周りの残っていたデータを吸収し、様々なデータを手に入れ、アジトのCPUの掌握方法を見つけ、今に至ったというわけだ。このアジトのCPUを掌握出来ればこちらのものだ、これでスカリエッティにも復讐できる』
やられましたね………
廃棄したものをちゃんと確認しとくべきでした………
『だが安心しろ。まだ彼女達に手をかけるつもりはないさ。しばらくはこのショーを楽しませてもらうとしよう。その後、全ガジェットを使ってこのアジトを破壊することにする』
「くっ…………」
タイミングの悪い…………
ドクターがいれば何とか出来ると思いますが、今は泥酔していて訳が分からなくなっていますし、お酒の入った頭で何とか出来るとは思えません。
「大丈夫ですよ、ウーノさん」
そんな私を見て星ちゃんが言いました。
「レイと夜美に任せれば大丈夫です」
「零治君と夜美ちゃんですか?」
「はい、あの二人なら必ず成し遂げてくれます。それに……………」
そう言って零治君達の映像を見る星ちゃん。
「レイは家族のピンチに絶対負けません!!」
そう力強く宣言したのだった。
「それに加奈にジェイルさんを起こしに行くように頼みました。加奈は容赦無いから多分正気に戻ると思います」
それはそれでドクターは大丈夫でしょうか?
「…………なるほどね」
ウーノさんからの通信でこの騒動の経緯が分かった。
あの野郎、許せねえ…………
「折角キャロが家族に加わり、今日は盛大にもてなそうと思っていたのに…………メルフィス、絶対にぶっ壊す…………」
「レ、レイ、当初の目的はライの捜索なのだが……………」
「行くぞ夜美、早くあの野郎をぶっ壊したい」
「わ、分かった………」
完全に当初の目的を忘れていた零治に、夜美はなにも言えなかった。
「ライ、頼むから我らの行き先にいてくれ………」
F—17……………
「ふ、ふん、怖くなんて無いんだぞ!!」
震えた声で言うライ。
「脅かしたって駄目だからね!!」
バリアジャケットを展開してバル二フィニスを向ける。
何もない空間に………………
「ピーマンの化け物なんて怖く無いんだから〜!!!」
魔力弾を放った。
D—14……………
「トーレお姉さま、また14フロア見たいですわ」
「またか!!一体どうなってる!?」
「分かりませんわ、けれど同じ場所をループしているみたいですわね」
「他に通れそうなルートはどうだ?」
「分かりませんわ、でも、ちゃんと選ばなければまたさっきと同じように………!?」
クアットロがそう言った時に何かが動く。
「またか………」
トーレはうんざりした様子で呟く。
目線の先にはガジェットの大軍が………
「もう一度破壊する。それまでにルートの特定を頼む」
そうクアットロに言ってトーレはインパルスブレードを展開する。
「さて、また相手をしてもらおうか!!」
そう言ってガジェットの大軍 に突っ込んでいった………
E—5……………
「魔王炎撃波!!」
炎を纏った刀で固まっていたガジェットを一気に横一閃し、燃やし尽くす。
「フン、たわいもない」
刀を鞘に戻しながら零治は言った。
「容赦ないな……………」
と零治を見て呟いた夜美だったが、ガジェットを全て撃退した後、ふと現れた箱に気がついた。
「レイ、また変な箱があるが…………」
それを聞いて零治は夜美の所へ来た。
「どれだ?」
「これだ」
夜美の指を指した方向に前に見たことのある宝箱がポツンと置いてあった。
「………………取り敢えず開けてみるか」
「そうだな」
零治は夜美の了承を得られた所で今度はおそるおそる開けてみた。
『おめでと〜、大当たり〜!』
いきなりスカさんの声で喋り始める宝箱。
『これがあればラスボスも楽勝。光の玉だ〜!』
テンションが高いスカさんの声。
はっきり言ってかなりキモい…………
「「…………………」」
「取り敢えず持っていくか…………」
「そうだな…………」
俺の怒りもすっかり冷め、なんとも言えない気持ちで先に進んだ………
C—16……………
「やっとここまで…………」
フェリアはフロアの16という数字を見て感動した。
「チンク姉…………」
「ああ、よく頑張ったなノーヴェ、セイン…………」
「うん、私達頑張ったよね………」
フェリアの言葉にセインも頷く。
「あの〜……………可愛い妹を放置して感傷に浸らないで欲しいっス………」
セインの横にはエリアルボードにロープで巻き付けられ、身動き出来ないウェンディの姿があった…………
リビング……………
「順調ですね」
星ちゃんの言っている事は最もですね。
零治君たちはかなり順調に進んでいました。
気が付けばEエリアまで進んでしました。
特に零治君の威圧感が凄い…………
どんどんガジェットをなぎ倒していきました。
それほどライちゃんの事を……………
『お前ら…………俺達とキャロの時間を潰した罪を償え…………』
ライさんの為ではありませんでした…………
「お、お兄ちゃん……………」
「これは零治の奴絶対シスコンになるな……………」
「先が思いやられます…………」
桐谷君のコメントにため息をつく星ちゃん。
私も桐谷君の言う通りになると思います…………
「みんな、二人を連れてきたわよ」
「あっ、加奈さんありがt…………」
その先の言葉は出ませんでした。
なぜなら………………
「ドクター!?ゼストさん!?」
タンコブだらけの頭で加奈さんに引っ張られていました……………
「いやぁ、流石の私も死ぬかと思ったよ。零治君はいつもこれに耐えているのかい?」
ハハハハハと豪快に笑いながら言うスカリエッティ。
その頭には未だにタンコブが残っている。
「俺も意識が飛びかけたぞ…………」
「加奈の力は半端ないですから…………」
「苦労しているのだな、加藤………」
「俺より零治の負担はもっと凄いですよ………」
頭を氷で冷やしながら言うゼストに同情する桐谷。
この出来事により桐谷とゼストの仲はかなり深まった。
「フム、そんなことになっていたとは…………」
腕を組み、唸るスカリエッティ。
「あのたんこぶの所為でシリアス感を全く感じないわね」
「自分でやっておいてよく平然と言えますね………キャロ、加奈みたいになってはいけませんよ」
「あっ、はい」
「ルーも気を付ける」
「私、駄目な大人の代名詞じゃないわよ!?」
加奈がみんなに言い聞かせるが、誰も目を合わせようとしない。
「ちょっと、みんな!?」
「君も苦労が絶えないね…………」
「誰のせいよ!!」
スカリエッティが加奈にグーパンされる。
「ぐはっ!?」
「ちょっとドクター!?まだダンジョンの説明が………」
だがスカリエッティの意識は彼方へと飛んでいた…………
F—1……………
「ようやくFエリアか…………」
レイの活躍であまり苦労なくこれたが………
『マスター、技使いすぎです……………』
「問題ない、カートリッジを使えばまだこの先も技を使える」
『いや、絶対体を壊すから……………』
珍しくラグナルが呆れてる…………
かなり珍しい。
あの後零治は魔力のことなど考えないまま技を使いまくり、もうほとんどん空の状態になっている。
どうしたものか……………
『もういっそ飲んでみたらどうですか?あの魔力回復薬を』
そう言えば持ってきてたな。
名前の通りの能力ならばいいのだが……………
「必要ない。まだやれる」
『やれませんから………もう、自分で飲まないのなら夜美に口移ししてもらいますよ。いや、ここは私が…………』
く、口移しだと!?
い、嫌ではないが、心の準備が…………
「いちいち人になろうとするな、それくらい自分で飲める」
そう言って慌てて自称魔力回復薬を飲むレイ。
……………なんか損した気分だ。
「うっ!?」
いきなりレイがうなり始めた。
「レ、レイ!?」
『マスター!?』
そのままレイは胸を抑えながらうずくまる。
一体どうしたのだ!?
リビング……………
「零治君!?」
「レイ!!」
「お兄ちゃん!!」
「兄さん!!」
零治がうずくまる映像を見てそれぞれが零治の名前を呼んだ。
「……………どうやら零治君はアレを飲んでしまったみたいだね」
「ドクター!?」
スカリエッティが気がつき、説明を始める。
まだタンコブは残ったままだが…………
「魔力回復薬。というのは名前だけでね、人のリンカーコアとは無意識に引き出している魔力をセーブしているんだけど、あれはそれを無理やり引き出す薬なのさ」
「無意識に………ですか?」
「そうさ。だけど総魔力量の測定は合っているよ。ただそれを限界まで引き出すことが出来ないだけさ」
「ジェイルさん!!それって危険なんじゃないんですか!?」
星が慌ててスカリエッティに聞く。
「いや、無害な筈だよ。元々は自分の魔力なのだから。ただそれによってかなりの脱力感で一日ほど体が動かないかもしれないけどね………」
「そうですか…………まあ無害なら…………」
ふぅ………と安心したのか息を吐く星。
だけどハッと気がついたような顔をするとまたスカリエッティの顔を見た。
「む、無害ならあの反応はなんなんですか!?胸を抑えて苦しんでいるんです!!」
「あれは零治君の無理が響いたからだね。既に自分の意思で使える魔力を殆ど使い切ったからだろう。まあ見てれば分かるよ」
そう言われて星も渋々ディスプレイを見た……………
F—1……………
「レイ、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫だ。少し胸が傷んだだけだ。そんなに大声を出すなよ………」
とは言ったけどマジで痛い…………
でもおかげで冷静になれたな。
しかし無茶をしたな俺…………
カートリッジ使わず大技連発って……………
「悪いな夜美…………」
「心配かけた事か?いちいちそれくらいで………」
「違うよ、我を忘れて訳が分からなくなってたみたいだ。苦労をかけたな」
「そ、そんなことはどうでもいい、それより体は本当に大丈夫なのか?」
「ああ、むしろ少し軽くなった気がする。これ、マジで効くんだな…………流石スカさん」
『残念だけど、そうじゃないみたいよ』
「ウーノさん?」
『いい?ちょっと聞いて………』
そう言ってウーノさんは説明を始めた…………
D—1……………
「さて、どこから行くか………」
「私は真ん中!」
「セイン、絶対右だろ!!」
「甘いっすね。そこにあるのは全てダミーっスよ、進むべき道はあの左にさりげなくある扉っス!!」
それぞれ自分の意見を言うセイン達。
「さて……………どこにするべきか…………」
ちなみに零治達が進んだ道はノーヴェの言った右の道だったりする。
それは当たりで、一気に10まで飛ばして行ける道なのだが…………
「絶対に左っス!!あのさりげなさは絶対に当たりっス!!」
「う〜ん…………」
「チンク姉、どうする?」
セインがフェリアに聞く。
ウェンディの事があってから最終的にはフェリアが決めることにしている。
「チンク姉………」
「うっ!?」
ウェンディの期待の眼差しにフェリアはたじろぐ。
「そんな目で見るな…………分かった、今回はウェンディの道で行ってみよう」
「マジかよ………チンク姉、大丈夫か?」
「こればかりはどうにもならんさ、どこも行ってみないと分からない」
「そうだけどさ……………ウェンディだぜ………」
「そうだよね………ウェンディって日頃の行いも悪いし………」
セインはそう言ってノーヴェと共にウェンディを見た。
「そ、そんなの関係ないっスよ〜ささっ、早くライ姉を見に行くっスよ」
「そうだな、そこの2人も行くぞ」
「「はあ〜い」」
こうして4人はウェンディルートで行くことにしたのだった…………
D—18……………
「やっと18か………」
「あれだけ戦ってそれですむなんていつもの飲んだくれの姿を微塵も感じませんわ………」
「いや、むしろ酒の力で強くなったt………」
「絶対にあり得ません!!」
強く言われてなにも言い返せなくなるトーレ。
「まあ細かいことは気にするな」
「もう………早く帰りたいですわ…………」
二人の頭にはディエチのことなどすっかり消えていたのであった。
F—10……………
「とうとうここまで来たな………」
「ああ、そうだな」
あの後、俺達は問題なく10フロアまでこれた。FエリアになってからⅢ型のガジェットも現れたが、夜美が片っ端から吹っ飛ばしてくれたお陰で俺は特に戦わず進むことができた。
て言うかガジェット、AMFが使えないとあんまり強くないな。
途中夜美なんか「ハハハハ、我の前にひざまつけ!!」とか機械相手に言ってたし………
最近はめっきり普通キャラになってたから頑張ったのかな?
「頑張ったとか言うな!!」
「何で分かるんだよ………」
「顔色で分かる」
俺ってそんなに分かりやすいのかな……………
『二人共、このフロアに人の反応があります!!』
「ライか!?」
『分かりません、でも確かに反応はあります』
「レイ、行ってみよう」
「ああ、そうだな」
俺達はラグナルが示した反応の場所へと向かった。
「ISヘヴィバレル」
自身の持つイノーメスキャノンによりガジェットが吹っ飛ぶ。
砲撃が大きいため、より巻き込まれて………
「弱い」
フロア自体そんなに広い場所でもないため、ガジェットは散開出来ずに巻き込まれていった。
「次は何処に行こうか………どこに行ってもトーレ姉とクアットロは見当たらないし…………」
ディエチはあの後、E—4にいた。
何も知らないディエチは取り敢えず進む事にして今に至ったのである。
「何かの音…………?」
イノーメスキャノンを音のする方へ構え、いつでも撃てる準備はしておく。
やがてその音の主が見え、ディエチは警戒を解いた。
「零治…………?」
「ディエチじゃないか。何でこんなところにいるんだ?」
「私は任務に帰ってきたら変な所にクアットロが転移して、いきなり壁に私は飲み込まれて、そうしたら一人になってて、そこに居てもしょうがないから私は一人で進んでた」
「OK、取り敢えずゆっくり話せ」
ディエチは零治に丁寧に話し始めた……………
「なるほどね…………しかしよく一人でここまでこれたな」
「片っ端から吹っ飛ばした」
イノーメスキャノンを構え、ディエチはそう言った。
「レイ、この人は?」
「ああ、戦闘機人のディエチだ」
「ディエチです、よろしく」
「ああ、有栖夜美と言う、よろしく頼む」
ちょうど自己紹介も終わったので俺はディエチにある提案をした。
「なあディエチ、俺の家族がこの先にいると思うんだけど、探すの手伝ってくれないか?」
「別に構わないよ。それより何でガジェットが動いているのか知ってる?」
「ああ、それはな…………」
俺はディエチにこのアジトの事を説明し始めた…………
「そうだったんだ…………ドクター、若い頃やんちゃだったんだね………」
そんなことを言いながらディエチは仲間になった……………
F—17……………
「うわ〜ん!!レイー!!」
ライは泣きながらピーマンの化け物?から逃げていた。
「なんで効かないんだよ!!来るなーーーー!!」
ソニックムーブを駆使しながら逃げるが、化け物?はそれをモノともせず、ライから離れない。
「うわ〜ん!!誰か助けてよーーーーー!!!」
それでも懸命に逃げるライ。
だがその鬼ごっこにも終わりがやって来た。
「あっ!?」
疲れが出たのか、自分の足を引っ掛け、その場に倒れるライ。
「あ……………ああ…………」
恐怖がライを全身に包み込む。
「コノママトワノネムリヲ…………」
だんだんライの視界が暗くなっていく………
「あ……………レイ…………」
目を閉じかけたその瞬間………
「邪霊一閃!!」
ライに襲いかかろうとしていたモノに瞬時に上から斬りかかり、そのまま右に払い抜け………
「魔王炎撃破!!」
炎を纏った剣で完全に消し去った。
「危なかった………」
「……………レイ?」
「ああ、大丈夫だったか?」
「レイーーーーー!!」
疲れた体に鞭を打って、ライは零治に抱きついた。
回想……………
『このダンジョンには一つだけかなり危険なモノを取り付けてしまったんだが…………』
「危険なモノ?」
それは移動中、スカさんの通信によって聞いた話だった。
『確率的にもFエリアの内の一つだからそこまで確率は高くないけど、そこのエリアでは幻覚によって精神を支配されてしまうんだ』
「心を?」
『そう。自分の一番苦手なもの、怖いものなど、幻覚を見せ、精神的に追い込み、精神を破壊するんだ』
「なんて危ないモノを……………」
『まあ一応、侵入者の排除を目的としたプログラムなんだけどね。危険だから一つのフロアだけにしたのだけど………』
「それで、何か解決策はあるんだろう?」
『単純に他の人の干渉で攻撃をすればダメージを与えられる。ただし直ぐに倒さないと今度は自分が取り込まれるから、それさえ気をつければ問題無いよ』
「なんてモノを造ったんだよ…………」
『いや、私は造ってないよ。バグか分からないけど、いつの間にかプログラムの中にいて、削除もできないから放置していたのさ。一体何なんだろうね?』
「何なんだろうね、じゃねえよ………」
「と、こんな話を聞いた後に入ったフロアで実際にライが襲われてんだもん。対妖魔相手の技が効いてくれて助かったわ」
苦笑いしながらライに説明するが、泣きながら離れてくれない。
「しかし、どうするかね………」
「取り敢えず、ライが落ち着いたら先に進もう。もう少しで最深部なのだろう?」
「確かそう言ってたはずだけど………」
「なら進むべきだと私も思うよ」
夜美もディエチも最後まで進む意見のようだ。
まあ、このダンジョンをどうにかする約束だし、ちょうど良いか。
「ライ、俺達は最深部まで行って、この状況を作り出した奴を叩きに行くけど、お前はどうする?」
「……………レイと一緒に行く。レイと離れたくない…………」
涙目で俺に懇願してくるライ。
こんなにしおらしいライは滅多に見ないので、調子が狂うというか………何というか…………
「分かった………なら一緒に行くか!」
「うん!!」
そう返事をして、俺はライと手を繋いだ。
「よし先に進むか!」
俺達は最深部を目指し、先に進んだ……………
D—20……………
「よし、ここでラストだな」
トーレはそう呟き、インパルスブレードを展開する。
目の前には大量のガジェットが…………
「クアットロ、援護を…………ってクアットロ!?」
「もう、無理ですわ…………後は………よろしく…………」
体力に限界がきたクアットロはその場で倒れた。
「クアットロ……………おのれ!!クアットロの仇、思い知れ!!」
トーレはクアットロの仇?のガジェット目掛けて突撃していった…………
「勝手に殺すな、この飲んだくれ…………」
倒れながら、クアットロが小さく呟いた…………
最終フロア……………
「よくぞ来た…………」
このフロアは他のフロアより広いだけで特に特徴らしき物は無かった。
そしてその奥には3メートル程のロボットが鎮座している。
「私はメルフィス、よくぞここまで来た。私を倒せばこのダンジョンプログラムは消え………」
「イノーメスキャノン」
最後まで話を聞かずに、ディエチが砲撃を放った。
その砲撃は、何かのバリアにかき消された。
「話は最後まで聞け!!それと、見たか!!この強化マジックシールドを。Sランク以上の魔力の攻撃でなければやすやすと破れるものか!!それにこれで………」
そう言った後、ロボットから何かのフィールドが展開された。
『マスター、AMFです!!』
「今更!?何で!?」
「フフフ、これで魔法を使うのも一苦労だろ。さあ、おとなしく私にやられるがいい!!」
鎮座していたロボットがいきなり立ち上がる。
戦隊モノの合体ロボットの姿をしているこのロボットは見た目だけならものすごく強そう。
だけど…………
「チャージ完了。ISヘヴィバレル!」
チャージした砲撃がロボットに直撃する。
高威力の砲撃は、AMFの干渉をものともせず、マジックシールドも粉砕してロボットの右腕に直撃した。
「な、何だと!?」
「私のISは魔力では無いので………」
「それに!!」
俺はソニックムーブを使い、懐に潜り込む。
「懐にはいって直接斬りかかれば!!」
そして俺がAMFのフィールドに入った時だった。
懐に入っていた光の玉が光だし……………
「なっ!?」
AMFを消滅させた。
「な、なぜ!?」
「訳が分からないけど、チャンス!!ラグナル、オーバーリミッツ!!」
『はい、マスター』
オーバーリミッツを発動させ………
「行くぞ!!輝く刃は勝利の証!」
鞘から刀を抜き、高速で敵を無数に斬り刻み………
「白夜殲滅剣!!」
掛け声と相手を斬り抜き、最後に剣を鞘に戻した。
「がはっ!?」
零治の斬撃はロボットを斬り刻み、その装甲は穴だらけになっている。
「決めろーー、二人共!!」
「行くぞ、ライ」
「うん、夜美」
「これで終わりだ!!」
「僕をいじめた事、後悔するといいよ!!」
「エクスカリバー………」
「きょっこーーーーーざん………」
「「ブレイカー!!」」
二人の最大の攻撃が、完全にロボットを飲み込み…………
「こんなの………あんまりだぁーーーー!!!」
そんな掛け声と共に、ロボットは消え去った……………
「どうやらメルフィスはあのロボットのコアとして動いていたみたいだね」
俺はスカさんのアジトにある医療ベットの上でスカさんの話を聞いていた。
あの後俺は直ぐに無理がたたって、その場で動けなくなり、ライと夜美に運んで貰った。
ダンジョンの効果によって動いていたガジェットは全て機能停止し、それぞれダンジョンにいたナンバーズもちゃんと帰って来れたみたいだ。
何故か、クアットロは全身筋肉痛に、ウェンディはかなり落ち込んでたけど………
「あのロボットって何なんだ?」
「あれは……………確かミッドで流行った戦隊物の合体ロボットだけど…………名前は忘れてしまってね。なんだったかな?」
マジで戦隊モノの合体ロボットだったのかよ…………
「初めて見たとき、強そうだから作ったのだけど………デカイだけで邪魔だったから破棄したはずだったのだけど…………」
スカさん…………作る前に気づけよ………
「それとスカさん、何でガジェット達はAMFを使わなかったんだ?使われたらかなり苦戦してたと思うんだけど………」
「簡単だよ、このプログラムを作ったときにはまだAMFを搭載するとは考えていなかったからだよ」
「でもあのロボットは使えたぜ」
「あのロボットはダンジョンのラスボスだからね。当時の試作品を搭載していたのさ。だからマジックフィールドも付いていたのさ。あれも一回破られると再展開するまでに時間がかかるという欠陥付きでね。…………まああの時の私はまだまだ甘かったと言うことさ」
流石のスカさんも始めからなんでも出来たわけじゃないって事か。
そんな話をしていると…………
コンコン。
「レイ、大丈夫?」
「ライ?」
ライがやって来た。
「お世話しに来たよ………」
「チェンジで」
「えっ!?」
「零治君、流石にそれは失礼ではないか?」
スカさんに注意されるとは………
「助けたお礼をしたくて………」
「いや、いいって。それは今度にお願いするから…………だから星と代わって下さい………」
「ぶぅ〜、僕だって出来るんもん!!だから僕がする!!」
そう言って手をワキワキしながら俺に近づく。
「い、いや、先ずは落ち着こう………な?」
「さぁ看病始めるよ」
「ちょ!?スカさん、助けて!!」
「私はお邪魔だね。ではごゆっくり………」
そう言って部屋から出ていったスカさん。
「スカさーーーん!!!」
その後俺はライの看病と言う羞恥プレイを味わいました……………
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