白き竜の少年 リメイク前
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卒業
卒業試験が行われた日の夜。ハルマはドンドンと扉を叩く音に目が覚めた。こんな夜に起こされた事に少し不機嫌になりつつもハルマは玄関へ向かう
「こんな夜に来るなんてどんな礼儀知らずだよ・・・・ってミズキ先生?」
彼が自らの家に来たことにハルマは不審に思う。
「ナルトくんがどこにいったか知らないかい?」
ハルマはミズキを信用していなかった。それは彼が里人と同じように見てきていることが関係している。目は口ほどに物を言う。その言葉の通りで必死に隠しているようだが、ハルマには分かっていた。ちらっと見た時に見える冷たい目がこちらに向いているのを見た時から自分達をバケモノとして見ているであろうことを。そして、表向きは優しくしている分、なおタチが悪いとハルマは思っていた
「知りませんけどどうかしたんですか?」
その為、ハルマはミズキが何かしたのだろうと考えていた。ミズキがわさわさハルマに教えるのは何らかのアクションを期待しているからか。他に何か理由があるのかは分からないが何かを企んでいると考えられる
「火影様から封印の書を盗んだらしくてね。今、他の方達も探している。見つけたら教えてくれ!」
ミズキが去ってすぐにハルマはすぐに寝間着から普段着に着替える。するとハルマの頭の中に声が響く
『(ナルトは森にいます)』
「(ハクアか?)」
『(早く行きなさい。ミズキとかいう男もじきに向かう筈です)』
「(ありがとう)」
ハルマは急ぐ。封印の書の事はよく知らないが、火影の所有物である以上大切な物であることは間違いない。しかも、ミズキのあの様子だと里に言い触らしているであろうことは簡単に想像できる。そして、盗んだことを知った里の忍が過激な行動を取る可能性も十分にある
「(早く見つけないと!ナルトを‼︎)」
ナルトは森の中にいた。身体はボロボロで、疲れているのか木に背中を預けて休んでいた。隣には巻物が置かれていて、それを見たハルマは右手で頭を抑える
「おい。ナルト」
ナルトはハルマが呼びかけて、気付いたのか笑顔を向けてくる。里の事態を知らずにいるナルトに呆れてしまうハルマは一つ溜め息をつく
「ハルマ‼︎どうしたんだってばよ?」
「どうしたじゃない。お前がその巻物を盗んだせいで里が慌ただしくなってるんだ」
ナルトの顔が固まる。今までイタズラとは言っても顔岩はともかくまだ許される範囲内のものだったのだ
「でも、卒業試験ってミズキ先生が言ってたってばよ!」
しかし、ナルトの発言から察するにミズキが元凶なのだろうが盗んだのはナルトだ。何らかの罰則があってもおかしくはない
「騙されたんだ。あいつに」
二人の間に流れる空気が重くなる。しかし、それを打ち破るかのようにイルカが二人の前に現れる
「ナルト。探したぞ!ハルマも一緒か」
「ミズキ先生に教えられて。ナルトはどうやらミズキ先生に巻物のことを教えられたみたいなんです」
「何⁉︎ミズキが!」
瞬間、イルカがナルトを押し、ハルマは大きく退がる。ナルトがイルカ先生を見てみれば小屋の柵に寄りかかり、クナイが身体の至る所に刺さっている。イルカは木の上に視線を移す。そこには二枚の風魔手裏剣を背負ったミズキがそこにいた
「よくここが分かったな。イルカ。ハルマ」
「なるほど・・・・そーいうことか」
イルカが納得したかのような声を出す。これは自らの目的の為にミズキがナルトを利用したのだと気付いたのだ
「ナルト。巻物を渡せ!」
「ナルト!絶対に渡すな‼︎それは禁じ手の忍術を記して封印した危険なものだ‼︎ミズキはそれを奪う為にお前を利用したんだ‼︎」
明らかにナルトが動揺しているのをハルマは感じ取る。そして、ミズキは話を進めていく
「それはお前が持っていても意味がないものだ。本当のことを教えてやるよ‼︎ナルト!そしてハルマ!」
「バ、バカ!よせ!」
「12年前。バケ狐と白竜を封印した事件は知っているな。あの事件以来、里ではある徹底した掟がつくられた」
ハルマは目を伏せ、イルカはミズキを止めようとする
「・・・ある掟?」
「しかし、お前らには決して知らされることのない掟だ」
「どんな・・・どんな掟だよ⁉︎」
ナルトは知りたいという気持ちを抑えきれない様子だった。しかし、それも仕方のないことだ。何故なら自分達にだけ知らされることのない掟だと言われれば、気になってしまうもの。そして、それを知ってか知らずか、ミズキは声を噛み殺しながら笑い、その掟の内容を告げる
「ナルトが里を襲ったバケ狐。ハルマが白竜だと口にしない掟だ」
ナルトの顔が驚愕に染まる。初めて知る事実にナルトは動揺するが、なおもミズキは言葉を続ける
「つまり、お前らが里を壊滅させた化け物なんだよ‼︎」
「おかしいとは思わなかったか?あんなに毛嫌いされて‼︎本当はな、イルカもお前らが憎いんだよ‼︎」
ナルトは初めて知る事実に驚き、しかし納得もしていた。何故、自分が嫌われるのか分からなかったが知ってしまった。里を襲ったバケモノだから嫌われているのか。ナルトは自分と同じ境遇のハルマを見ると驚いている様子はなく、彼はミズキを真っ直ぐ見据えている
「・・・・それで?」
「何だと?」
ハルマは不愉快そうに顔を顰めるミズキを見つめる
「気付いていたのか?」
「・・・俺たちは嫌われ者だ。里に居場所なんて自分達の家ぐらいしかない。周りの人間は俺たちを憎み、同世代の奴ですら俺たちを嫌う」
「だが、皆に認められようと努力をしてきた。俺もナルトも。ナルトは悪戯をするけど、誰かを傷付けたことはない。ドベって言われて努力をしてないと皆に思われてるけど影で努力をしている!」
いつも一緒にいた。レツとカナも交えた四人で。だから、他の者達よりもナルトのことを知っているという自負がある。ナルト自身をよく知らない者にナルトが否定されるのがハルマには我慢ならなかった
「だから何だ⁉︎お前らなんか誰も認めたりしねえよ‼︎」
そして、そのナルト自身を見てくれる者がいるとハルマは知った
「いや違う‼︎二人はバケモノなんかじゃない‼︎確かに里を襲い、両親の命を奪った九尾と白竜を憎いと思う気持ちはある。だが、二人を憎んではいない!」
「イルカ先生・・・」
「二人は俺の大事な生徒だ!誰よりも人の心の苦しみを理解している‼︎努力家で、優しい奴らだ!ナルトも、ハルマもバケモノじゃない‼︎同じ木の葉隠れの仲間だ‼︎!二人をバケモノ呼ばわりすることは俺が許さん!」
イルカの叫びは、ナルトとハルマからすれば嬉しい限りでナルトに至っては涙を流していた。無理も無いとハルマは思った。初めて身内以外で認めてくれた人。それがイルカだった
「はっ。酔狂な奴だ。まずはイルカとハルマ。てめえらから始末してやる」
「させねえってばよ‼︎影分身の術‼︎」
辺りを覆い尽くすほどの影分身にイルカは目を見張る。影分身は実体のある分身術。これは高等忍術で、上忍クラスの忍が扱う術なのだ。それをナルトが使ったということに彼は驚嘆していた
「ナルト!(これは影分身の術⁉︎いつの間に‼︎)」
ハルマも驚いている様子ではあったが、イルカ程驚いてはいないようだった
「ナルト。ミズキをぶっ飛ばしてやれ」
「おう!」
「ちっ。だが、本体を倒せば済む話だ!」
「そういうのは俺と分身を全員倒してから言えよ」
ミズキが風魔手裏剣を投げると、ハルマは印を結んでいき、術を発動する
「火遁・豪火球の術‼︎」
豪火球の術で、風魔手裏剣を防ぎ、ナルトの分身がミズキに襲い掛かる
「今だってばよ‼︎」
少し時間が経ち、ミズキの顔は膨れ上がっていた
「へへ。ちっとやり過ぎちゃった」
そうナルトは言うものの悪びれた様子はない
「(ナルト。お前はもしかしたらどの先代の火影をも超えるかもしれないな。そしてハルマ。お前がどんな未来を描いていくのか先が楽しみだ)」
「ナルト。少し目を瞑れ。渡したいものがある」
少し時間が経ち、しびれを切らし始めたナルトがイルカに問いかける
「先生。まだ?」
「もういいぞ」
ナルトが目を開くと、イルカが笑顔で話す
「卒業・・・・・・おめでとう。今日は卒業祝いだ。ラーメンを奢ってやる!」
これが二人の忍としての生活が幕を開けた瞬間だった
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