生徒会”執行部”と”捜査部”~饅頭売りの花嫁~
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21.マ●オワールドに転生したい
梅雨。
毎日、雨ばっりで農家さんや蛙・アメンボ・カタツムリには嬉しい季節。
だけど人類、特に捜査部のこの二人には辛い時期。
捜査部 部室生物実験室にて――
「あ~毎日毎日ジメジメ、ジメジメ、頭にカビが生えそうだ」
「もう生えてんダロ」
ぶっきらぼうの強面狼、古賀潤
ここ諷焔学園で一番強くて恐ろしいと言われている不良…と噂されているけど本当は面倒見のいい兄貴分。
困ってる人が居たら放ってはおけないトラブルシューター(解決屋)そのためいつも不運な事件に巻き込まれやすい。
「アツイー! 頭にキノコ生えてきそうだっぞ」
「もう生えてるだろ」
この人のせいで。
机にうっぷしてうつ伏せになっている女子生徒の名は、中原彩乃
諷焔学園カリスマ生徒会長で、マドンナ的存在。一度廊下を歩けば、誰もが二度見し振り返る才色兼備の美人さん。
でも中身はただのセクハラ大好きのエロオヤジ。趣味はモミケーションと称した女子の体をモミモミしてお胸の成長度合い、体の健康状態をチェックすること。
周りから止められるので普段はあまりしないが、たまに男子にもモミケーションすることがある…とかないとか…。
今部室にいるのは仲良し? 幼馴染のこの二人だけ、あとのメンバーはまだ来ていない。
「ねっコガジュン」
「なんだ?」
「頭にキノコ生えたらさっ」
「おう」
「マ●オの世界にイケルかな??」「は??」
「ルイ●ジパイセンに会えるかな??」
中原会長は目をランランと輝かせ机にうつぶせになっていた体を起こし、前のめりにながら言う。
古賀先輩は思った…こいつマジだ、と。
お馬鹿とホニャララは紙一重と昔 誰かが言っていたような…いなかったような?
「そ、そうだな……頭にキノコ生えたらキノ●オが迎えに来てくれるか、クッ●が人攫いしに来るかもしれないな……多分きっと」
「オォーマジで? マ●オワールドにイケルのなら、ジャポンのツユも悪くはないの~ん」
「そうか…良かったな、梅雨が好きになれて…」
「うんっ!」
会長は純粋な心の持ち主なのれす。ピュアホワイトなのれす。
【で】
コンコンッ。ドアがノックされガラガラーと開らかれる。
「すみませーん、掃除してたら遅れました!」
「……ごめんなさい…れす」
ポニーテールで眼鏡をかけた女子生徒とその後ろに隠れるように小柄な女子生徒が部室の中へ入って来る。
彼女達も捜査部のメンバーなのだ。
「いらは~い。ねねっいばやん、ボクマ●オの世界にイケルんだよ!」
「は…? マ●オ?」
「すまん、ヤツはジメジメのせいで頭にキノコ生えてんだ。放っといてやってくれ」
「なんとなく…リョーカイです」
会長への扱いが雑な女子生徒、茨音智子
この世界には少ない常識人の一人。それゆえに会長とは馬が合わないようだ。
でも捜査部に入っている時点で、真の常識人ではない。キレると死語を連発してしまう懐古厨で挑発されるとすぐにノッてしまうのが悪い癖。
「………」
みんなが楽しそうに話している中、無言で自分の席に座る女子生徒は風月春
一応本作の主人公設定のヒロインなのだが、存在感なさすぎの空気的存在に成り下がってしまっている。
あまり喋らないけどたまに毒を吐く。ヲタクではないけどソッチ方向の知識がある。本人曰く少しかじっただけ……だそうだ。
「あれ? 餡子姉は居ないんです?」
茨音さんが捜す餡子姉とは天然乙女キラー狸、小林餡子のことである。
捜査部の最年長で癒し系お姉さん的存在。母性本能が強く、よく女子生徒(主に春)を豊満なお胸にギュッと抱きしめて、窒息死させかけているところが目撃されている。
その技を受けた聖徒達からは【魔技・天国への階段】と呼ばれ恐れられ、男子からは羨やまれている。
そも小林先輩が今日は部室に居ない。いつもは誰よりも早く部室にやって来てお茶をお茶菓子を用意して出迎えてくれるのに。
小林先輩の用意するお茶菓子は、実家の老舗和菓子店のお菓子でほっぺたが落ちそうなくらいに美味しい。お茶も中々の高級茶葉を使用してるためずごく美味しい。
素人には絶対に手が出せない、高級で贅沢な(和風の)お茶会が今日は行われていない。
「小林先輩なら実家の方手伝いで先に帰ったぞ。な?」
「うーん……なんか町おこし村おこしのために家族総出で、ナニかシコシコやるんだってぇ~」
会長は下ネタ対しての免疫力が高い帰国子女。その話題に一々ツッコミを入れているようでは、この人と一時間も一緒に同じ部屋は居られないだろう。
「……町・村おこしれす?」
「ここってド田舎にある学園って設定なんだけど、場所が町なのか村なのか設定があやふやだから
町・村おこしにしたらしいよ? ちゃんと考えてから書いてよって感じだよね」
…ごもっともな意見でござまふですはい。
「…和菓子屋さんで…なにをするれす?」
「さあ…なんだろうね?」
「はい!」
茨音さんと春が話していると、突然会長が大きな声を上げ手を上げる。
「……どうぞ会長」
渋々回答兼をあげる。
「ここに居るボクは部長だからね、いばやん」
茨音さんと会長たちの間で行われるこのボケツッコミは毎度の挨拶みたいなもの。
「きっと和菓子を使ったナニかをするんだぞう!」
「「「…………」」」
この時誰しもが「和菓子屋なんだからそうに決まってるだろ(でしょ、れす)」と思ったがあえて口に出さない。だって一々ツッコミを入れていたらきりがないから。
【で】
ユーガッタメール、お兄ちゃんメールだにょ
ユーガッタメール、お兄ちゃんメールだにょ
ユーガッタメール、お兄ちゃんメールだにょ
二つの着信音が部室内に響く。
「うわ……コガジュン先輩」「………」
古賀先輩ことをまるで変質者を見る時のような目で見る二人
「ちが! オレのじゃねーよ!」
古賀先輩には一つ下の妹さんがいる。その妹の声を録音して着信音に……と思ったけどそれは早合点、勘違いだったらしい。
本当の犯人は……
「アンコからだ~」
会長でした。
何事もなかったかのように、スカートのポケットからスマホを取り出し操作する。
「テメェ……」
握り拳を作って怒る古賀先輩なんて気にもせず
「ほぉうオモチロイことが起きているみたいですな~」
スマホを見ながらニヤニヤ笑いそしてこちらを向いてにひっと笑ったと思ったら
「見てみ、コレ」
スマホをみんなが見える位置に差し出した。みんなでそれを覗き込んで見るとそこには……
[アンコ:タスケテ!!]
とだけ書かれていた――
饅頭よ――
どうして其方は饅頭なの?
嗚呼饅頭よ――
どうしてあんこは二種類あるの?
嗚呼饅頭マジコノヤロよ――
どうしてもワタシ達は分かり合えないの?
饅頭よ――
どうしても争わないといけないことなの?
きっとこれは饅頭というものが誕生した時から
幾度となく繰り返された
避けられない戦争なの――
続く
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