真田十勇士
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巻ノ九十六 雑賀孫市その十
「これは止めよ」
「わかりました」
「その様にな」
「はい、どういった使い方でも」
「自害はせぬことじゃ」
「それには使わないことですな」
「貴殿達は武士の身分もあるが」
幸村の家臣としてだ、禄も貰っていた。
「しかしな」
「それでもですな」
「御主達の武士道はそうしたものでもあるまい」
「死ぬ時は同じです」
「ならばじゃ」
「そうでもない限りはですな」
「死ぬな」
無駄にというのだ。
「共に死ぬ時まで生きよ」
「だからですな」
「元より雑賀の術に自害はないが」
「それ以上に」
「そなた達は生きよ」
「死ぬ時と場所は同じと誓ったなら」
「無闇に自害なぞするものではないわ」
雑賀の言葉は強かった。
「だからな」
「それでは」
「そうじゃ、自害なぞ断じてしないことじゃ」
「そう致します」
「十勇士は真田殿と友であり義兄弟であるからにはと言ったな」
「だからこそ死ぬ時と場所は同じです」
穴山も強く言う、このことは。
「義兄弟の契りを結んだ時に強く誓い合いました」
「では最初からそう考えるな」
「その時まで生きることですな」
「恥をかくこともあろう、忍ぶこともあろう」
「それでも」
「誓ったなら生きることじゃ」
それならというのだ。
「どれだけ辛くとも苦しくともな」
「死のうとは思わず」
「十一人で戦い生きるのじゃ」
「では」
「その為の金の術を全て授けておる」
今はもというのだ。
「それを使い戦い生きるのじゃ」
「そうさせて頂きます」
「是非な」
こうした話もしながらだった、雑賀は穴山に術を授けていった。穴山の腕はさらに上がりそうしてそのううでだった。
夜も修行に励む、無論雨が降っても行われ。
三人共山の中でいた、それも常に。
火薬も使うがだ、ふとだった。
穴山は眉を動かしてだ、雑賀に言った。
「草木が言っておりまする」
「何とじゃ」
「はい、当てるなと」
「自分達にはじゃな」
「その様に」
「そういえば貴殿達は草木の声が聞こえるな」
「石のそれも」
そうした声を立てないものからもというのだ。
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