| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ九十六 雑賀孫市その三

「実はそれがしの為にです」
「真田殿がじゃな」
「こちらに連れて来てくれました」
「穴山殿と言えば十勇士随一の鉄砲と火薬の使い手」
 雑賀も知っていることだ。
「では」
「はい、雑賀殿のです」
「鉄砲と火薬の術をじゃな」
「ご教授して頂きたいのです」
「そしてじゃな」
 雑賀はその目を鋭くさせて言った。
「時が来れば」
「それは」
「いや、言わずとも良い」
 雑賀は微笑みそれはいいとした。
「別にな」
「左様ですか」
「わしも今では世捨て人じゃ」
 笑って言うのだった。
「だからな」
「それで、ですか」
「幕府も何も関係ない」
「それでは」
「わしでよければな」
 その穴山を見ての言葉だ。
「是非な」
「教えて頂けますか」
「うむ」
 快諾の返事だった。
「そうさせてもらおう」
「それでは」
「早速じゃ、ではこの庵に寝泊りしつつじゃ」
 そうしてというのだ。
「修行をしてもらう」
「わかりました」
「鉄砲も火薬も充分にある」
 こういったものもというのだ。
「だから安心せよ」
「左様ですか」
「ここから少し離れた場所に小屋があってな」
「その小屋にですな」
「そういったものが揃えてある、火薬もじゃ」
 それもというのだ。
「ふんだんにある、わし自身作ることも出来る」
「火薬もまた」
「作っておる」
「流石ですな」
「ははは、それは御主もであろう」
「はい、火薬はそれがしのものと言ってもいいもので」
「ならばじゃな」
「それがしもです」
 穴山自身も答えた。
「作れます」
「では同じじゃ」
「雑賀殿とですな」
「そうじゃ」 
 雑賀は笑ってだ、穴山に話した。
「生まれついての火薬使い、ではな」
「その火薬の使い方をですな」
「さらに授けようぞ」
「そうして頂けますか」
「これよりな、特に鉄砲じゃが」
 穴山が得意中の得意としているそれもというのだ、雑賀にしてもこれを使い信長に煮え湯を飲ませたことがある。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧