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東方夢想録

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2.博麗霊夢という天才

「私は霧雨魔理沙!普通の魔法使い何だぜ!」
 魔法使いの時点で普通ではない、などという野暮なツッコミは置いておいて、魔法使いか、まさか指輪でも使って「私が最後の希望だ!」などとでも言うのだろうか。ないな。うん。
 まあ、冗談はさておき。霧雨魔理沙、普通の魔法使い、ね。ふーむ。
「なるほどね。いきなりで申し訳ないんだけど、博麗神社まで案内を頼めないかな?」
 俺の先代も今の俺のように仕事で幻想郷に来たことがあり、その際俺も何回か来たことがあるし幻想郷の空を飛んだことがあるのだが、この魔法の森は初めて来た場所だ。ここが幻想郷の全体図のどこなのかすら把握していない。
「博麗神社か?実は私もそこの巫女に用があるんだ。この魔理沙さんが一緒に連れてってやるぜ!」
「お、サンキュー。助かるぜ」
 そう言うと魔理沙は某に跨がり、柄の部分の先に何かが入った風呂敷をくくりつけた。まるで某魔女の宅急便だ。博麗神社、いざゆかん!といきたいどころだが、その前に、
「なあ、魔理沙。その風呂敷の中身何?」
 いかにも怪しい。あって間もない人を疑うのは本当に心苦しいが性分なんで。同時に、俺は『一つ目』の能力の副産物を発動する。
「これか?これはここの森でとれたきのこだぜ。最近霊夢がロクなもん食ってないだろうからな。私が差し入れに持って行くってことさ」
 嘘じゃないようだが、少し信じられないな。
 博麗神社は僻地だが、それなりの参拝客も来ており、御賽銭も良い型が悪いが潤ってはいるはずだ。余りに怠けすぎて信仰をなくしたか?あり得そうで怖い。何はともあれ、行けばわかることか。
「きのこか。なるほどね。じゃあ案内よろしく」
「あ!そういえばおまえ飛べないんだったな」
「ああ、それは大丈夫だ。飛べるからな」
 はい?という魔理沙の声を聞きながら、俺は宙を浮いた。
「すごいな、おまえ!初めてで飛べるやつ私始めてみたぜ!」
「まあ、幻想郷に来たのは初めてじゃないしな」
「へ?それはどういうことなんだぜ?」
「まあ、それは行きながら話そうぜ?」








 カクカクシカジカ、セツメイチュウー。


「───という訳なんだ」
「ふーん。じゃあ霊夢とは幼なじみと」
「昔に少し遊んだ?だけで向こうが覚えてるかどうかすら怪しいがな」
 忘れていることを切実に祈っているよ。封魔針やお札やらが飛んでくるんだろ?乱れ飛ぶんだろ?死ねるぞ。夢想封印とか撃ってきそう。てか、撃つ。絶対撃つ。
「何で遊んだのあとに?がつくんだよ」
「何で字面がわかるんだよ。まあいいか。だって弾幕ごっこを遊びって言うか」
「言うだろ」
「正当決闘ルールとはいったい」
 紫さーん。あんたの考えたルールが遊びとなってますよ~。まあ、いいのか?半ばそれを狙ったみたいだし?真意は紫さんのみぞ知るってな。
「で?」
「で?」
「どんな結果だったんだ?」
「どんな結果とはいかなる?」
「そりゃあ、その昔にやったって言う弾幕ごっこのだよ!どっちが勝ったんだ?」
 魔理沙の言葉には、言外にどこまで奮戦できたんだ?という意味が込められているな。
 うーむ。霊夢の顔を立てると、あいつに殺されるな。嘘っていうわけではないしほんとのこと言うか。
「俺の全勝」
「いやいや、嘘はいけないぜ?あの霊夢が」
「魔理沙の言う霊夢は夢想封印を使う霊夢だろ?あの頃のあいつは封魔針ありきだからな」
 おそらく今やったら、どうだろ?勝てるかな?あいつ、勘がいいからなー。『俺の』と匹敵するくらい。
「おっ!みえたぜ」
 そこには昔と相変わらず建っている神社があった。
「この時間だと掃き掃除か?」
「あいつはたぶん今頃縁側で茶でも飲んでるだろうな。私もいただくとするぜ」
 そういいながら、魔理沙が下降を始める。俺もそれついて行く。あ、ほんとだ。ほんとに飲んでる。さすがは博麗の巫女の相棒。親友というだけある。
「霊夢!魔理沙さんが遊びに来てやったぜ!」
「魔理沙、あんた今日も来たの?出すものならないわよ」
「つれないこと言うなよ。親友だろ?」
「誰が来ても出すものがないのよ」
 それはかなり深刻な問題ではないだろうか?
「それよりも霊夢。お前にお客さんだぜ」
「はあ?いったい誰よ?くるならお賽銭を、」
 霊夢は俺をみると目を見開かせながらフリーズした。
「よ、よう、霊夢。久しぶり」
「……………れ」
 ん?
「あんたは………塵になれ!」
「うおっと!」
 やっぱり、初っぱなから封魔針とお札だよ。
「おいおい、久しぶりの再会の割にはずいぶんと殺気の籠もった挨拶だな」
「今日こそあんたに勝つ!」
「やれるもんならな。ま、無理だろうけどな─────────俺のサイドエフェクトがそういっている」
「私の勘で覆してやるわ!」
 お、弾幕ごっこか?やれやれー!と魔理沙も魔理沙で煽る。頼むから煽るのは勘弁してくれ。転生の方まで出されたらたまらん。
「夢符『封魔陣』!」
「幻術『白昼夢』」
 俺は封魔陣をかわしながら色とりどりの弾幕を張っていく、一定のリズムで、一定の色間隔で、霊夢をその場に張り付けるように。
 だが、霊夢はそれにたいして、何もしないところでなく、目をつむった。
「もうそれは利かないわよ」
「やはり対処されるか」
「これで決めるわ!夢符『二重結界』!」
 俺は結界に囲まれる。だが、これぐらいならば。
「風刃『空牙』!」
 俺の周りに風が吹き荒れる。それは徐々に形をなしていき、牙となり、結界を砕いた。
「うそだろ!?霊夢の二重結界がやぶられた!?」
 そう一筋縄には行かせないさ。
 しょうがない。プランAは失敗だ。これからはプランBだ。
「ついに抜いたわね───────風刃」
 俺の手に握られているのは風の帯を棚引かせた一振りの刀だった。






 
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