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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第二十五話

 
前書き
どうも、戦いから帰還してきました。これからは通常運転で行けたら幸いです。
因みに、今回は最多文字数更新しました。 

 

―防波堤―
 

「いやー、すげぇキレーな夕焼けだな!こんなの毎日見てんのかよ!」
 
「「……………。」」
 
俺と拓海は二人して絶句した。こいつ、バカだバカだとは思っていたが、ここまでバカだとは………。
 
「悠人?今は朝だよ?」
 
「別にいいんだよ。俺が夕焼けって勝手に思っとくからよ!」
 
さっき会ったときから妙に悠人のテンションが高い。元々バカみてぇに高いとは言え、流石に高すぎる。

「なぁ拓海。もしかしてこいつ、徹夜明けか?」
 
「う、うん。何でもおやっさんに呼ばれたらしくて………。」
 
「あー………おやっさんなら仕方ねぇか。」
 
おやっさんと言うのは悠人の父親のことだ。職業が職業なので、悠人もよくそのシゴトを手伝うことになっている。因みに、俺と拓海もそれに何回も付き合っている。正直、勘弁してもらいたい。
 
「ま、お陰でそこそこのお小遣い貰える訳だしね。」
 
「勝手に人の心を読むんじゃねぇ。」
 
しかし、こいつらが相変わらずな感じでホッとした。寂しがったりしてないかなとか、俺が居ない間に暴走してたらどうしようかと。
 
「んで?なんでお前らがここにいるのか説明してくれるんだろうな?」
 
俺は少々腹を立てながら悠人と拓海を睨み付けた。
 
すると、拓海が話し始めた。
 
「僕は研修、悠人は面会。」
 
「研修?面会?」
 
なんのことやら全く分からない。いや、まだ面会は分かる。恐らく俺にこいつらが会いに来たんだろう。ちくしょう嬉しいじゃねぇかよ。
 
気になるのは研修という言葉だ。なんの、と言うか誰の?
 
「面会は悠人で、あいつは千尋への面会ってことでここに来たの。」
 
と言うことは…………。
 
「お前が研修ってか?なんのかは知らねぇけど。」
 
そう言うと、拓海は少し笑って、
 
「いやね?ここの提督になる勉強中でね?週に一回はここに来てるんだ。」
 
と言った。
 
成る程、提督なら確かに研修がいるな。
 
「つーことはなんだ?俺が艤装を見つけた時には既に知ってたってことか?」
 
「そうだね。口止めされてるから、話そうにも話せなかったからね。流石に駆逐イ級に吹き飛ばされたときはびっくりしたけど。」
 
「そうかそうか、それは大変だったな。」
 
「「ふっはっはっはっはっはっ(棒)。」」
 
そんな感じで俺と拓海は乾いた笑いを浮かべていた。
 
「いやいやいやいや!お前らちょっと待てやこら!?」
 
すると、防波堤から朝焼け――悠人に言わせれば夕焼け――をダンディ(爆)に見ていた悠人がこっちに来た。
 
「拓海はともかくなんで千尋は驚きすらしねぇんだよ!俺なんか聞いた時に腰抜かすか思ったわ!」
 
どうやらこいつは少し前に初めて聞いたらしく、かなり反応が薄かった俺にそうとう驚いている模様。
 
「だって、もうその程度の事じゃ驚かなくなってきてるし。木曾が敵の体にラ〇ダーキックかまして足ぃ貫通したりするし、そのまま回し蹴り打ち込んだり…………(ゾワァ)。」
 
思い出しただけで悪寒が走ってしまう。俺がここに来てからのトラウマランキング堂々一位だ。
 
余談だが、二位はドラム缶二連発。三位が木曾と不覚にも入浴してしまったことである。
 
「まーた木曾はやらかして…………。」
 
頭を押さえる拓海。どうやら前からやらかしてるらしい。
 
「なんだそれ、それって人の所業か?」
 
悠人は半分信じてないみたいだ。そりゃあそうだろうな。俺も信じられなかったもん。
 
「それで、拓海はいつからここに通ってるんだ?」
 
俺は頭を抱えてる拓海に聞いた。
 
「…………ハイキックで頭吹き飛ばしたり、魚雷ぶち投げたり、一人で戦艦三隻沈めたり、発勁で一発轟沈させたり………え?なんか言った?」
 
どうやら木曾はおっそろしい事を昔からやってきたらしい。
 
「いや、お前はいつからここに通ってるんだ?」
 
「あぁ、三年前からかな。」
 
三年前となると、木曾が着任した一年後か。もしもっと昔から来ていたなら聞こうと思ってたのに。
 
すると、あれ、と悠人が切り出してきた。
 
「なんでお前はここに来るようになったんだ?誰か知り合いでも居るのか?」
 
そう言えばそうだな、と俺は頷いていた。
 
俺がここに来たときには、恐らく提督は最低限の知り合いに話したのだろう。となると、拓海はどうやってここを知ったのだろうか。
 
「えっと、覚えてないかな?三年前に転校してった女の子覚えてない?」
 
拓海はそんなことを聞いてきた。
 
三年前って言うと…………中学二、三年生位か。
 
俺はその辺りで起きた色々な思い出を思い出していく。悠人の家業の手伝いでテキ屋のバイトしたり、拓海に連れられてゴーゴンさん(前に出てきた生首。)を飾ったり……ろくなことしてねぇな。
 
「えっと…………あー、いたな。誰だっけ……名前が出てこねぇ…………。」
 
俺はあまり物覚えがいい方ではないので、すぐに人の名前を忘れてしまう。まぁ、それが友達の少ない理由でもあるのだが。
 
「ほら、フユカだよ。ソノザキフユカ。」
 
悠人が焦れったくなったのか、答えを言ってくれた。
 
しかしソノザキフユカねぇ…………。
 
「あー!思い出した!拓海の元カノの!なっつかしいなー。」
 
園崎 冬華と言うのは、俺らが中学時代の時の同級生で、なかなか人懐っこい性格の女の子だった。
 
「…………あれ?冬華?」
 
俺は園崎 冬華の顔を思い出そうとして、あることに気づいた。
 
確かに、俺はそいつを見たことがあった。しかし、何故か気づかなかった。まぁ、俺って人の名前と顔を覚えるのが苦手だし、そうなるとも必然か。
 
「なぁそいつって……。」
 
俺が拓海に答え合わせをしようとしたときだった。
 
 
 
「たっっっくみくーーーーんっぽーーーーい!!」
 
 
 
俺と悠人の目の前をものすごいスピードでなにかが通った。そのなにかは、拓海にぶつかったかと思うと、拓海はそれを受け止めていた。
 
……いや、止めきれずに軽く吹き飛ばされてしまっていた。
 
「ちょ、危な」
 
そして、拓海とそいつは、三~四メートル位飛んでいた。どんな勢いだよ。
 
さて、ここは防波堤。そんなところで立ち話してた俺ら。
 

そこから三メートル吹き飛んだらどうなるでしょうか?
 
 
バッシャーン!!
 
 
物凄く大きな水飛沫が上がった。
 
案の定、拓海たちは海に落ちていった。
 
「おーい、大丈夫かー?」
 
一応声を掛けてみたが、まだ上がってきていない。

一応俺らは艦娘になってからは水泳や救助法なども練習するから、恐らく大丈夫だろう。
 
「ぷはぁ!」
 
「ぽいぃ!」
 
あ、上がってきた。
 
「取り合えず、これにつかまれ!」
 
いつの間にか悠人がどこからかロープを持ってきて、下に垂らしていた。
 
「ほら、冬華。先に上がって。」
 
「そうやってパンツ見る気なんでしょ?そうは行かないっぽい!先に上がってっぽい!」
 
「そんなの今更でしょ。こないだ大敗したときに千尋にいくらか見られてるってば。」
 
「やだ。」
 
…………なんだこの痴話喧嘩。俺達は何を聞かされてるんだ。
 
「悠人。ロープ上げろ。」
 
「あいよ。」
 
「ちょちょちょ!」
 
「待ってっぽい!」
 
慌ててロープに掴まった二人。俺と悠人はそのロープを引き上げた。
 
「全く……気を付けろよ、夕立。」
 
俺は今では完全に思い出していた。
 
「えへへ……嬉しくって。」
 
恥ずかしそうに頬を掻く夕立
 
夕立は園崎 冬華だった。
 
ほんと、なんで今まで気づかなかったんだろうか。
 
「取り合えずお前ら、シャワー浴びてこい。」
 
俺はずぶ濡れになった拓海と冬華に向けてそう言った。

―三十分後 食堂―
 

「しかし、まさか夕立が冬華だったとはなー。気づかなかった俺も俺だけどさ。」
 
現在、六〇〇〇。俺達はまだ間宮さんしか居ない食堂で朝飯を食っていた。
 
「ほんとっぽい。ここでは自分の前の生活の話をするのはタブーだから、私からは話せないから、いつ気付くからなと。」
 
夕立は少々呆れた様子でこっちを見ていた。呆れる理由も分かる。なんせ、俺達四人は小学校からの同級生だ。何回も顔を合わせているはずなのに。
 
俺って相変わらず人の顔を覚えておくことが苦手だな、と思った。
 
「でもまぁ、よく俺達の顔とか名前とか忘れてなかったよな。」
 
悠人がそんなことを呟いていた。……そこは正直、俺も信じられなかった。他の人なら恐らく忘れていただろう。
 
「そりゃあお前らってのがな。」
 
俺は若干鬱陶しそうにそう言った。
 
幼稚園からの親友の顔は流石に忘れる訳がない。
 
「おまけに俺の部屋にはゴーゴンさんがドラム缶の上に鎮座してるからな。嫌でも毎日思い出すわ。」
 
そう、俺の部屋には例のドラム缶とこいつらから送られてきたゴーゴンさんがいる。しょうがねぇからドラム缶の上にゴーゴンさんをおいたら、なかなかいい感じだったので、そのままにしてある。
 
「だから言ったでしょ?絶対忘れないって。」
 
拓海は胸を張って悠人を見ていた。そうか、俺にゴーゴンさんを送りつけるアイデアはこいつか。後で誰も居ないところでシめとこう。
 
「とう。」
 
すると冬華が、隣りで胸を張っている拓海の脇腹を突っついた。
 
「ふぁ!?」
 
拓海は脇腹を突っつかれるのが昔から苦手で、いつも優しく大人しい拓海のこの反応が見たくてたまにしていた。
 
「期待通りの反応だな。」
 
「おう、懐かしいな。」
 
たったの二週間なのに、物凄い昔に感じてしまう。それだけここでの生活が忙しいということなのだろう。
 
……正直、寂しい。
 
俺はそんなに友達が多い訳ではないから、基本的に一人でいる。それでも大丈夫なのは、なにかと理由をつけてこいつらが話しかけてくるから。
 
振り回してくれるから。
 
一緒にいてくれるから。
 
いつか、一体いつになるのかは分からないが、いつの日か必ず、こいつらといつもの日常に戻りたい………そう思った。
 
 
「なにいい話にしようとしてるの!下手くそすぎるよ!」
 
「勝手に人の心を読むんじゃねぇ!」
 
……それだけの相手だから、相手の考えてることが分かってしまう。それも、テレパシーみたいなレベルで。
 
厄介極まりなくて、極めて厄介だ。
 
「まぁ、それほど仲よしってことっぽい!」
 
冬華、お前もか。
 
さて、俺はどう反撃をしてくれようかと考えていた。間宮さんにキムチ丼でも注文しようか。拓海が辛いの苦手だからな。それでも奢りだっつったら拓海は優しいからな、絶対食ってくれるだろう。
 
「ういーっす。いつもの頼むわー…………って、拓海じゃねえか。」
 
そんなことを考えていたら、誰かが食堂に入ってきた。
 
「あら、本当じゃない。久しぶりねぇ~?拓海さん。」
 
声の主は、天龍と龍田だった。こちらに来る二人。
 
「あ、天龍に龍田。久しぶり。」
 
すると、拓海は悠人の方を見て、天龍と龍田の紹介を始めた。
 
「悠人、この二人は天龍と龍田。ここでもけっこうな古参だよ。」
 
「どうも、拓海とち…………二号の友達の橘 悠人っす。」
 
「おう、よろしくな。」
 
「よろしくねぇ~。」
 
うーん、俺の勘なんだが、悠人は天龍とは仲良くなれそうだが、龍田とは相性が悪そうだな………。俺や天龍や摩耶さんが苦手にしているのと同じ理由で。(因みに木曾はと言うと、知ったこっちゃねぇ、みたいな感じでむしろ龍田が木曾のことを苦手にしている。)
 
「あら?拓海さんじゃないの。」
 
「本当だー!拓海さんだー!」
 
「доброе утро、拓海。」
 
「お、おはようなのです!」
 
すると、今度は暁、響、雷、電の四人が入ってきて、拓海の回りに来た。
 
「おはよう、暁、響、雷、電。」
 
さらに、
 
「あ、拓海くんだ。久しぶりだね。」
 
「あ、二号さんも。おはようございます!」
 
時雨に春雨。
 
「うぉーす、拓海さーん!今度こそ夜戦しよーよー!」
 
「珍しく川内姉さんが早起きしたと思ったら……おはようございます。」
 
「おっはよー!久しぶりです!拓海さん!」
 
川内に神通さんに那加ちゃん。
 
「あら、拓海さん。お久しぶりです。」
 
「久しぶりね。」
 
赤城さんに加賀さん。
 
「む、拓海殿か。久しいな。」
 
長門さん。
 
「ヘェーイタクミー!久しぶりネー!」
 
金剛さんと。
 
「な……んじゃこりゃあ…………。」
 
気が付いたら、ここにいる殆ど全員が拓海の回りに集まっていた。
 
俺と悠人と冬華は、早めに移動するように拓海に言われていたから、春雨達が来た頃には移動していた。
 
「あの優男め………羨まs……ゲフンゲフン、けしからん!」
 
今本音が出かけてたぞ。
 
「さてと、自分の彼氏があんなことになってて、どんな気持ちですか?」
 
俺はからかうつもりで隣の冬華に聞いてみた。
 
「別に。あんなことされとも拓海くんは私だけのものだもん。他の女の子なんかには絶対あげないっぽい。」
 
おおぅ。目がマジだ……つーなハイライト消えてね?
 
そんなことをしていたら。
 
「お、おい。なんか胴上げが始まったんだけど………。」
 
「……………。」
 
見てみると、拓海が沢山の艦娘から胴上げをされていた。
 
俺、胴上げとかって、プロ野球のリーグ優勝位でしか見たこと無かったのに。

いやそもそも、なんの胴上げだよ。
 
「このお祭り騒ぎ、毎回起きてるのか?」
 
俺は冬華に聞いてみた。
 
「うん、毎回毎回来る度に。」
 
一体なにがあの子達を駆り立てるのか。
 
「これってさ、どうやって収集つけてるの?」
 
「いつもは木曾さんが適当なところで終わらしてるんだけど…………謹慎中だったっぽい………。」
 
「………………。」
 
気が付いたら、何故か悠人も胴上げに加わっていた。あのバカ、お祭り騒ぎ大好きだから。そして、何故か悠人も胴上げされていた。
 
 
 
 
その後俺達は、様子がおかしいと思ってやってきた大淀さんが止めてくれるまで、ここで胴上げの様子を横目に思い出話に花を咲かせていた。
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。いやー、今回はよりいっそう駄文駄文で申し訳ありません。忙しかったものでして、一日少しずつ書いていたので、「あれ、俺って何を思ってこんなこと書いたんだ?」って状況に陥ってしまいまして……次回から自戒させて頂きます。
それでは、また次回。 
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