IS~夢を追い求める者~
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最終章:夢を追い続けて
第52話「一方で」
前書き
―――全て、俺達が引き受ける。
今回は桜たちメイン。
ヘイトを自分たちに向けるために色々好き勝手します。
=桜side=
「うーん、大体予想通りって所だねー。」
「少しつまらないな。想定外な事を起こしてくれたらいいんだが。」
世界の情勢をチェックしながら、俺と束はそういう。
「でも、予想外な事が起きて計画が破綻したらそれはそれでやばいよ?」
「それもそうだな。予想外は秋十君達の所だけで十分か。」
秋十君達の動きは今の所大人しい。
まぁ、他にも生徒がいるIS学園じゃ、まず防御を固めるのが先決だしな。
「各国の状況は分かるか?」
「そうだねー。まぁ、ISに大きく関わっている国は軒並み士気が大幅にダウンしてるよ。実際、国としての戦力も落ちてるから、結構危ないね。」
「だろうな。...っと、ドイツのシュヴァルツェ・ハーゼを中心とした軍の部隊はあまり変わってないな。...しかも、ISに認められているようだ。」
「おー、やるねー。そういえば、アメリカの...ナターシャ・ファイルスだっけ?彼女も認められてるみたいだよ。何せ、“あの子”とか愛着を持って呼んでだからね。」
数少ないとはいえ、ISをそういった見方をしてくれる人がいるのは嬉しいものだ。
「まぁ、今それは置いておいて...。」
「問題なのは、この状況に乗じて何か仕出かそうとしてる連中だね。」
コンソールを操作し、そいつらのデータを出す。
「亡国企業過激派と、女性権利団体過激派。それと、男性が集まったテロ組織もあるみたいだな。」
「亡国企業過激派は言わずもがな。ISに認められなくても、サルみたいに喚いている女性権利団体の一部。“レジスタンス”とか自称してる男性による烏合の衆....碌な組織がないね。」
「混乱に乗じてる時点で碌な奴らな訳がないだろう。」
「それもそうだね。」
前者二つは以前から同じようなものだったとして...自称レジスタンスはただのテロ組織でしかない。束の言う通り烏合の衆程度の認識だ。
「過激派同士、手を組みそうだし、先にこっちを潰す?」
「いや、先に行動しそうな自称レジスタンスから潰そう。こっちの方が死人が出る確率が高い。」
元より復讐や怨恨で動く連中だ。
そこを考えると前者二つよりも厄介だ。
「でも同時に動かれる場合はどうするの?」
「んー?亡国企業には亡国企業、残りはジェイル達に任せよう。」
「こっちにはゴーレムもあるから、それで充分かー。」
俺達の所でも、ISに乗れるのは俺と束ぐらいだ。
スコール達も良くも悪くも目的の手段として乗っていたため、乗れなくなったらしい。
...それでも、ISとも戦えるゴーレムがある時点でこちらの戦力は段違いだがな。
「じゃ、直々に潰しに行くか。既に日本でも男性による個人的な復讐が始まっているから、早めに行動しないと無関係な人が巻き込まれる。」
「善は急げって奴だね。じゃあ、れっつごー!」
クロエに基地の事は任せ、俺達は自称レジスタンスの基地らしき場所へ向かった。
だが、基地も複数ある。潰すのは手間がかかるな...。
日本にもあるが、そちらはIS学園が狙いのようなので、秋十君達に任せるか。
「まずは一つ....。ううむ、ガチ装備しなくて良かったな。」
「最低限で十分だったねー。」
三時間後。俺達は自称レジスタンスの基地の一つ。その最深部に来ていた。
移動に二時間半以上掛けていたから、実質基地攻略はほんの僅かだ。
「なん、で、たった二人に....!?」
「うーん、相手をちゃんと見てない時点で、なってないなぁ。」
「怒りで前が見えてなかっただけだろ。それか節穴か?」
辺りには武装した男どもが這い蹲っている。
無論、俺達からは殺していない。非殺傷用の武器で来たからな。
だがまぁ、味方の弾で死んだ奴はご愁傷様だな。
「それとも自己紹介をしてほしい?」
「贅沢な奴だなぁ。」
「ぁ.....あ.....!?」
そこで、ようやく俺達の正体に気づいたのか、男たちは震え始める。
「さぁさぁ!天災である篠ノ之束と!」
「その幼馴染である神咲桜が来たんだ。...あぁ、サプライズだから歓迎の品は期待してないぜ?」
代わりに、マシンガン(非殺傷仕様)の銃口を向ける。
「ひっ...!」
「俺達が求めるのはただ一つ。」
「君達の壊滅なのだー!!」
弾が切れるまで、マシンガンをぶっ放す。
いやぁ、デスクワークも得意だが、やっぱりこういうのもスカッとするなぁ!
「っと、これ以上やると潰れちまうな。」
「あっはっはー、恨むのなら、自分たちが正義だと、馬鹿みたいな思想を持った自身を恨むんだね!」
ここの幹部が指示を出したりする部屋は、既にボロボロ。
破片が飛び散ったりして怪我はしただろうが、今ので死人は出していない。
まぁ、このマシンガンは滅茶苦茶痛いだけだし。
「なんでだ...!俺達は、女どもに散々...!」
「散々やられたから、自分たちもやり返すと?」
「バッカだねぁ。そんなの、空しいだけなのに。」
やり返されたからやり返す。それを繰り返せばただの醜い争いだ。
確かに我慢できない事もあるだろう。
「それで?女尊男卑から男尊女卑に変わった時、君達は以前まで自分たちがされてきた事を、する立場になるんだよ?」
「それが正当だと言うのなら、俺らが言うのもなんだけどさ...。」
「「頭おかしくない?」」
まぁ、こいつらの好きなようにさせた結果が男尊女卑になるとは限らんがな。
だが、やってる事は所詮テロ紛いな復讐だ。碌な結果にはならん。
...復讐ではないとは言え、同じような事をしている俺達も含め...な。
「も、元はと言えば、お前がISを開発したせいで俺達はぁ!!」
「今度は私に矛先を向けるのかぁ。」
「仕方ないだろう。こいつらの怒りを向ける宛ては、ほとんど限られているのだから。」
“ISを開発したせい”。これを束は否定しない。
確かに女尊男卑になったのは束も要因ではあるだろう。
だが、責任を取る必要はない。そんな世界にしたのは、他ならぬ世界そのものだからだ。
「責任を取れ!お前のせいで俺達は職を失くした!人生のどん底に落とされた!」
「....だってさ。」
「んー、否定はしないよ?私の影響は凄まじかったからねぇ。それに、責任は今まさに取ってる真っ最中なんだよね。」
そう。手段は明らかにおかしいが、俺達はちゃんと責任を取っている。
...それも、現在進行形でな。
「私達が歪ませてしまった世界は...私達が正す。」
「そのために世界に宣戦布告し、全ての敵意を集めたんだからな。」
何も、ISを宇宙開発に向けさせるためだけじゃない。
...あの女神に言われた通り、本来の道筋に直すのだ。
「お前ら....まさか.....!」
「矛先は、一か所だけにしとけよ。」
「また何か動きを見せたら、潰しに来るからねー。」
そう言って、俺達は立ち去る。
「次はどこに行く?」
「んー...ちょっと待ってね。寄り道してもいいかな?」
先程言われた事に、束は何か思ったのかタブレットを弄る。
「...ここだね。最寄りの花屋は...あった。」
「束?」
「さー君、ちょっと付き合ってね。」
「お?おう...。」
そのまま俺は束に連れられて、花屋へ寄る事になった。
「...墓地...そういう事か。」
「...女尊男卑の風潮で、死んでしまった人、自殺した人は少なくないんだよ。」
「...そうだな。」
それは、俺も分かっていた事だ。
だから、既に誰が死んでしまったかは調べられるようにしておいたし、それどころか女尊男卑で追い詰められた人々も表にまとめてある。
「さっきああ言われて、お参りぐらいはしようと思ってね。」
「なるほどな。...俺も付き合うぞ。」
世間では、束は興味がある相手以外には冷たいと言われるが、そうではない。
“原作”ではそういった節があるかもしれないが、案外慈悲深かったりする。
...慈悲深いと言っても、自業自得な相手には冷たいがな。
「「...........。」」
花を供え、黙祷する。
俺達にできるのは、これが限界だ。
「...行くよ、さー君。」
「...ああ。」
しばらくして、俺達は一度基地に戻る事にする。
「...早く、世界を変えないとな。」
「...そうだね。」
世界の道筋からは、既に大きく外れている事はなくなった。
ここからは、俺も教えてもらっていない未知の領域だ。
...でも、だからこそ俺は成し遂げないといけない。
「よし!じゃあ、次は?」
「そうだな...この辺りがいいんじゃないか?」
「オッケー。じゃ、行こうか!」
気持ちを切り替え、次の場所への向かう。
「ただいまー。」
「ふぃー、疲れた。」
その後、いくつか拠点を潰し、俺達は基地へと戻ってきた。
今日の夜か、明日にでもこの事はニュースになるだろう。
そのために、証拠や構成員を残してきたのだから。
「おかえりなさい!」
「ただいま、ユーリちゃん。」
俺達と一緒にいるようになってから、ユーリちゃんは元気を取り戻した。
...だが、依存しているのは変わってはいないようだ。
「えっと...ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも...あうぅ...。」
「ちょっと待ったゆーちゃん!それ誰に教えてもらったの!?」
「えっ、束に教えてもらった訳じゃなかったのか....。」
ユーリちゃんらしからぬ言葉だったので、てっきり束辺りが教えたかと...。
「違うよ!私だったらもっと....あ。」
「もっと...なんだ?」
「なんでもないよー?あははー。」
...警戒しておこう。
それはそれとして、ユーリちゃんに一体誰が...。
「あの...クアットロさんから...こうすればいいって...。」
「...スカさんの娘さんだっけ?四女の。」
「あー....。」
そういえば、性格捻くれてたな。あの子。入れ知恵しててもおかしくない。
...だけど、ご愁傷様だな。
「よーし、すぐ探してくるねー!」
「えっ、束さん?」
「まぁ、放っておけ。」
束に入れ知恵がばれるなんてな...。死にはしないだろうが、トラウマになるだろう。
「...とりあえず、ご飯かな。」
「あ、はいっ!」
束の方は放っておこう。しばらくすれば、勝手に戻ってくるだろうし。
...クアットロは自業自得だから放置だ。
....しばらくして、一人の女性の悲鳴が聞こえたが...俺はスルーした。
ユーリちゃんは少し心配していたが、自業自得だからな...。
「そういえば、ジェイルさんはどこに?」
「何でも、妹さんがいるみたいで、説明しに行かなければならないと...。」
「...そういえば、いたっけな。妹さん。」
ジェイルさんにはクイントさんと言う妹がいる。
どうやら、そのクイントさんにジェイルさんは頭が上がらないようで...。
ユーリちゃん曰く、電話がかかってきて慌てて向かったとの事。
ちなみに、兄妹揃って子沢山だったりする。
「...そう言えば、桜さんや束さんは家族に対して...。」
「なんの説明もなし...とは行かないからな。束は置手紙を。俺は...連れてきた。」
「...はい?」
母さんは、こんな事には本来加担しないのだが...。
それでも、“一緒にいられるなら”と、捕虜のような立場としてついてきた。
実際は普通にこの基地で暮らしているだけだがな。
「ユーリちゃんも、俺達がいなくて暇な時は母さんと...後クロエとかと一緒にいてていいぞ。家事関連を担う人は基本基地にいるからな。」
「はい...。あの、連れて行ってもらう事は...。」
「...ダメだ。ユーリちゃんは、立場としては攫われてきた被害者だ。それなのに、俺達に加担してしまっては、意味がない。」
「そうですか...。すみません...。」
俺達に任せっきりなのが嫌なのだろう。ユーリちゃんらしい。
「謝る事ではないさ。...近い内に、色々変わってくる。」
「え....?」
「俺達が外に出ているのは、余計な組織を潰して回っているからだ。だから、もう少しすればそういった組織の脅威もなくなる。」
「...そうですか。」
俺達は、世界にとっての“絶対悪”になろうとしている。
そうすれば、世界は一致団結せざるを得ないからな。
「...なぜ、桜さんはこんな事を仕出かしてまで....。」
「なぜ...か。全世界に配信した映像で言ってた通り、主な目的はISを宇宙開発に向けて使ってもらうためだ。」
「嘘...ですよね?それだと、桜さん達ならこんな事をしなくてもできるはずです。」
どうやら、見抜かれていたようだ。
「...もう一つは、世界の歪みをなくすためだ。」
「歪み...?」
「女尊男卑、ISに固執した思想...それによって生じた、女性の間だけでも存在する格差...挙げればきりがない。そういった歪みだ。」
そう。何も女尊男卑の影響は男女間だけではなかった。
女性の間でも、適正の有無で格差が生じていたのだ。
さらには、それに影響して、“優秀さ”でも格差が生じた。
...その結果がユーリちゃんだ。
「その歪みの影響で、ユーリちゃんを含めた皆との出会いがある。だから、なかった事にはしないさ。...でも、正さなくてはいけない事だ。」
「.........。」
「別に、俺達が世界を掌握する必要はない。歪みを正すと言った部分では、もうすぐ達成したも同然になる。...いわば、歪みさえなくせばいいんだからな。一致団結するだけでもそれはなしえる。」
...尤も、それが長続きする保証はないが。
「そのために...態と世界と敵対を...。」
「普通に業を煮やしたってのもあるけどな。」
どれだけ待っても宇宙開発に用いようとしない。
だから、ついでに本来の用途を思い知らせるためにこうしたのだ。
「だったら、最終的に桜さん達は....!」
「...大を救うために、小を切り捨てる...。全部を丸ごと助けるなんて、早々できるものじゃない。...世界を変えるとなればなおさらな。」
どう足掻いても、もう俺達に平穏は戻ってこない。
俺と束を犠牲にする事で、この歪んだ世界を戻すのだ。
「...ユーリちゃんは、こんな自己犠牲精神を持つなよ。」
「そんな...!桜さん...!」
「まだ終わった訳じゃない。」
「でも...!」
せっかく会えたのに、もう日常は帰ってこないのだと、ユーリちゃんは思っているのだろう。事実、帰ってこない。...このままでは、な。
「だがこれは、個人...もしくは少数での話だ。」
「え....?」
「...俺達だけでも歪みはなくせる...けど、代償として俺達は...。...だが、もし秋十君達が俺達を止めに人々を導いたのなら...。」
これは、一種の賭けだ。
一応、当てが外れたとしても歪みは消せるようにはしてあるが、もし秋十君達が俺達の信じた通りに動いてくれれば、全てが上手く行くことになる。
「それに、俺と一緒にいたいと思ってくれる子が、ここにいるんだ。...俺だって、死ぬような事がないように、足掻き続けるさ。」
「桜さん...。」
慕ってくれている人を、ただ置いていくつもりは毛頭ない。
俺だって責任を取ろうと決めたんだ。最後まで無事に帰る事を諦めない。
「.....ねー、私だけ除け者にされてなーい?」
「あっ...!す、すみません...!」
「完全に私空気になってたじゃーん!」
いい雰囲気になった所で、ずっといた束が口を挟んでくる。
...そう。ずっといたのだ。ユーリちゃんにジェイルさんの事を聞いた辺りから。
「私も混ぜるのだー!」
「そぉい。」
「はぷぁす。」
ル〇ンダイブのように飛び込んできたので、チョップで叩き落す。
「...大丈夫ですか?」
「こ、この程度で怪我しないってもう分かっているのに心配してくれるゆーちゃんマジ天使...。」
「IS学園に行く前は感覚が麻痺してましたけどね...。」
既にこのやり取りは以前から何度もやっている。
ユーリちゃんでさえ、入学前には大した心配はしていなかったほどだ。
それでもまた心配するようになったユーリちゃんは、やっぱり優しいのだろう。
「...そういえば、シュテル達を置いてきてしまいました...。」
「...あの子達は今あっ君の所にいるよ。だから大丈夫。」
「チヴィットはめ~ちゅ以外はあちら側に就くみたいだからな。」
俺達がユーリちゃんを連れだすために、一度チヴィットに干渉して活動を止めていた。
そのため、チヴィットはエグザミアの仮ボディであるめ~ちゅ以外は学園やワールド・レボリューションにいるのだ。
「....皆さん....。」
「...心配する事はないさ。」
「桜さん?」
「あいつらは、俺と関わって、今も自身を磨き続けてる連中だ。...多少の苦難は易々と乗り越えてくれるさ。」
だからこそ、日本にいる自称レジスタンスは放置している。
あいつらの狙いはIS学園。その防衛を秋十君達にやらせるのだ。
もし、この程度で挫けるのならば、その程度だったと諦めるだけだ。
尤も、そんな事はありえないと思うが。
「...いや、断言しよう。あいつらは来る。俺達の袂まで。」
「私達を良く知るあっ君やまーちゃん。ちーちゃんがいて、将来有望な子が何人もいる。おまけに、今ではISに認められてまた乗れるようになってるからね。」
「...そうですね。」
元より、ほとんどが敵に回り、誘拐され、全ての希望が断たれない限り、決して折れる事のなかった秋十君だ。
他に味方がいる今、諦めるはずがない。
「...そういえば、秋十さん達は桜さん達を止めるつもりですけど、どう止めるつもりなんでしょうか?ISはそういった目的では使えなくなったのでは...?」
「そうだな。既にISは宇宙開発か何かを護る...と言うか、お互いに通じ合った目的にしか用いれなくなった。俺達も基地襲撃ではゴーレムとかしか使わなかったからな。」
意志を持ったという事は、俺達ですら拒否される事もある訳だ。
さすがに想起達は大抵は受け入れてくれるが...やはり、道徳に背いた襲撃などは手を貸してくれないし、俺達も借りようとは思わない。
「でしたら、どうやって...。」
「そりゃあ、まぁ...。」
「拳で、だね。」
おそらく、昔ながらの殴り合いになったりするだろう。
むしろ、そっちの方が清々しいかもな。
「そんな物理的な...。」
「物理的に止めるからこその拳...って、こういうのは日本人にしかよくわからないか。サブカルチャー関連の事だしなぁ。」
「うぅ、分からないです...。」
こういう事を知らない所を見ると、ユーリちゃんもお嬢様だったのが分かるなぁ。
簪ちゃんと友達になってたから、ある程度は知ったと思うが...。
「簪さんに色々見せられた事はあるんですけど...その、説明してる時の簪さんの勢いに圧倒されてしまって...。」
「おおう...。」
「あの子の意外な一面だねー。」
所謂隠れオタクって奴か?
少なくとも普段の簪ちゃんのイメージからは想像がつかないな。
「...ところで、何をしているんですか?」
「ん?各国の軍事施設にコンピュータウイルスをちょっとな。」
「世界中が混乱してるのに、それを解決する事もなく捜索部隊を組まれてもねぇ。と、言う訳でまずは解決しないと使用できないようにしてるんだよ。」
もちろん、暴動などが起きたら武力で鎮圧できる程度には兵器は使える。
つまり、俺達を探すのに使わなければ普通に使えるウイルスだ。
何ともご都合主義なウイルス。まぁ、自作したから当然だわな。
「...ふむ、大体の国が混乱して何をすればいいのか分からなくなっているな。頭の固い連中は先に俺達を捜索しようとしているけど。」
「もう一回世界配信やっちゃう?今度は自分の国を先に何とかしろとか皮肉ったりしてさ。」
「あまりにもたもたしているならそれも手だな。」
衛星から各国を見ているが、どこも適切な動きは出来ていない。
おそらく、一部分は俺達の思惑を理解しているが...上の奴らが納得してないのだろう。
....もう一度焚きつける必要がありそうだな。
「...あの、既に掌握している気がするんですけど...。」
「情報と言う分野ではな。物量で攻められたら俺達もアウトだ。」
「でも情報戦で敵うと思わないでよー?あ、でも、抵抗できる面子がワールド・レボリューションにいたね。」
俺達と情報戦で戦えるとしたら、会社にいるグランツさんと、束に次ぐ天才と言われている八神はやて...他にも何人か優れた奴らがいるからそいつらぐらいだろう。
「...既に世界を掌握する戦力は揃っていると思うんですけど...。ISが意志を持った事で、各国の戦力も落ちてますし、ゴーレムが大量にあるなら...。」
「あー、気づいちゃった?まぁそうだんだけどね。」
「それじゃあいけないんだよー。」
実際、俺達が本気を出せば既に一つの国は取り返しがつかない事になっている。
でも、それは俺達の目的ではないし、本心からやろうとも思えない。
「ちょうどいい手加減で、じわじわとね。」
「...意地が悪いですね。」
「はっはっは。否定はしない。」
一気に掌握した所で、世界は元に戻らないからな。
自分で気づいて、一致団結してもらわないと。
「人は窮地に陥った時に思いがけない力を発揮する。」
「所謂火事場の馬鹿力って奴だね。」
「それをさせる間もなく掌握しきったら、意味がないからな。」
敢えて窮地に陥る程度に済ませ、人間の本領を発揮させる。
そうすれば、技術などの発展にも繋がるからな。
「....桜さん、もしかして...楽しんでます?」
「....よく分かったね。」
「まさか気づかれるとはねー。」
そう。俺達は、“楽しんでいる”。
「さすがに、他の組織に関する対策は真剣に対処してるさ。」
「だけど、世界全てを相手にするって言うのが何と言うかね...。」
「「すっごく楽しく感じるんだ。」」
「.........。」
自分でさえ、これはおかしいと思っている。
けど、それだけ強大な存在が相手なら、俺達も全力を出せる。
...そう、俺達は全力を出せる日を待ち望んでいたんだ。
「....やっぱり、お二人はどこかおかしいです。」
「今更だろう?」
「はい。今更ですね。」
ユーリちゃんの言葉に、俺達は三人で笑い合う。
....嗚呼、出来る事ならば...。
―――また、皆で日常を楽しめる日がやってきますように...。
後書き
凄いフラグっぽいの立ったけど、気のせいです。(多分)
世界を相手にすれば全力を出せると踏んで、敢えて猶予を与えています。
その間に、どれだけの事ができるのかが、秋十達の勝利の鍵になる感じです。
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