レーヴァティン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十二話 港においてその五
「実際にね」
「やっぱりそうか」
「うん、僕達の世界では法学部の学生でね」
「法学部、八条大学のかよ」
「そうだけれど」
「俺も同じ大学だよ」
久志は自分の左手の親指絵で自分を指差して言った。
「八条大学に通ってるぜ」
「君もなんだ」
「ああ、法学部じゃないけれどな」
「それは奇遇だね」
「そうだな、それであんたこっちの世界に来た」
「十二人の一人と言われたよ」
青年からこのことを話した。
「この世界を救う人と一緒に戦うね」
「そうか、話が早いな」
「君はその十二人の一人かな」
「それが違ってな」
「まさか」
「ああ、そのまさかでな」76
こう言うのだった。
「俺の持ってる剣はな」
「それは」
「凄い剣だろ」
「凄まじい熱さを感じます」
「つまりな」
「レーヴァティン」
青年はその剣の名を言った。
「この世界を救うという」
「抜いてきたんだよ」
「そういえば」
ここで神父も言った。
「デルフォイでその剣を抜いた青年が出たと聞いていましたが」
「それが俺なんだよ」
久志はここでも親指で自分を指差した。
「俺が抜いたんだよ」
「左様でしたか」
「ああ、嘘じゃないのはわかるよな」
「その剣から感じられる熱は」
それはとだ、青年は久志に答えた。
「並の、それも魔力を込めた剣でもです」
「ないか」
「はい、それこそです」
「レーヴァティンでもないとか」
「この世を焼き尽くさんばかりですね」
剣から感じるその熱の強さたるやというのだ。
「それこそまさにです」
「レーヴァティンだってわかってか」
「はい、貴方が嘘を言われていないことも」
このこともというのだ。
「わかります」
「そうなんだな」
「よく、しかもです」
「しかも?」
「目を見ればわかります」
青年は微笑み久志のその目を見て言ったのだった。
「人は」
「ああ、目は口程にもだよな」
「そうです」
ものを語る、だからだというのだ。
「私もわかりました」
「まあ俺も嘘は好きじゃないしな」
久志は屈託のない笑顔で青年に返した。
ページ上へ戻る