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レーヴァティン

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第十二話 港においてその一

         第十二話  港において
 久志は港の波止場を出て街に出た、そこで英雄に言った通りにこの島にいる十二人の手がかりや本人達を探しはじめたのだ。
 それで市場に出てだ、何処となしに話を聞くとだった。
「目立つ奴かい?」
「というかな」
 久志は果物屋の親父に率直に言った。
「他の世界から来たな」
「そんな奴をかい」
「探してるんだけれどな」
「東の島から来た奴じゃないな」
「この島で結構話題になってるって聞いたぜ」
 こう親父に言うのだった。
「そういう話はないかい?」
「ああ、そういえばな」
 親父は久志の話を聞いて考える顔で言った。
「聞いたことがあるな」
「あるのかよ」
「確かこの街で一番でかい教会にな」
「教会、キリスト教か」
「ああ、その宗教の教会にな」
 ギリシアや北欧の神々の場所ではなくというのだ。
「一人いるらしいな」
「へえ、そうか」
「何か随分勉強好きのな」
「学者さんか」
「そうだったか?」
 学者かどうかは不明瞭だった。
「まあとにかくな」
「教会にいるんだな」
「この街で一番大きなな」
「このサラミスも教会幾つかあるしな」
「その中でもだよ」
 果物屋の親父は店の林檎を買って時分に話を聞いてきた久志に言う、久志はとりあえず目に入ったこの店に来て聞いたのだ。つまりたまたまである。
「一番大きな教会だからな」
「わかったぜ、一番大きな教会だな」
「街の役所のすぐ近くにあるさ」
「役所のか」
「市長さんのいるな」
 そこのというのだ。
「そのすぐ傍だよ」
「場所はそこか」
「じゃあそこに行くんだな」
「ああ、それでそいつに会うな」
 えらく勉強好きだという彼のというのだ。
「そうしてな」
「そしてか」
「ああ、後そいつと話をしてみるか」
「そうするのか、ただな」
「ただ?」
「あんた随分いい剣持ってるな」
 親父は久志が腰にさしているそのレーヴァティンを見て言った。
「随分な業物と見たがな」
「ははは、高かったぜ」
 久志はその剣がレーヴァティンであることを隠して答えた。
「これはな」
「そうだろうな」
「ああ、それでな」
「高いだけにだな」
「凄いぜ」
 レーヴァティンであることを隠したまま言うのだった。 
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