マイ「艦これ」「みほ2ん」
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第53話<お盆休暇>
前書き
艦娘と一緒に、お盆の墓参りをしていた司令は意外な人物と出会う。そして想定外の事態が展開する。
「軍隊は、そんなところだ。頑張れ」
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第53話 <お盆休暇>(改2.2)
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そしていよいよ墓参当日の朝を迎えた。執務室で私は何気なく日報を開いている。
暦の上ではお盆だが基地内はいつもと同じ。
淡々と起床、食事、訓練、警戒、演習、講義、整備……。
でも今日は私は墓参のために、わざわざ休暇を取った。
未だに良く分からないが艦娘12人のおまけつきだ。
……あれ? 12+1って13数か。
「縁起悪いな」
……まあ良い。ここは日本だ。
「コンコン」
「はい」
ドアを開けて五月雨が顔を出した。
「あの司令……出発の準備が出来ました」
「分かった」
私は日報を閉じるとフックから帽子を取って部屋を出た。
並んで廊下を歩く五月雨に私は聞いた。
「夕立か誰かに聞いたが、お前たち艦娘って、ほとんど外出しないのか?」
少し考えて彼女は言った。
「そうですね。駆逐艦だと仲の良い艦娘同士でただ雑談をして終わることも多いです。そこまで考えが回らないというか、記憶容量の問題かも知れません」
「あ……」
まさか艦娘本人から自分たちを『機械』と認めるような発言が出るとは思わなかった。ただ五月雨の場合は本人の性格もありそうだな。
車庫で軍用トラックに乗り込む。荷台でも良かったが運転席に案内された。そこでハンドルを握っていた日向が聞いてくる。
「お寺の駐車場に入りますか? これで」
「大きくて入らないな」
私は、あっさり応える。
「しかし日向ってトラックまで運転できるんだ」
「はい」
彼女は少し恥ずかしそうに答える。
「でも航空機や艦船と違って道路を走るだけだから簡単です」
(いや、そういう問題でもないと思うが)
私は日向に言った。
「旧市街は狭いからな。ギリギリトラックは入れるが駐車場は無いからアレを使うことになるよ」
私は夕張さんに依頼していた装置を思い出した。
「はい。準備万全です」
彼女は淡々と答える。それから各所に無線で確認を取る。
それが終わると日向は言った。
「では出します」
「頼む」
トラックはスムーズに車庫を出る。
静かな鳳翔さんとハンカチを振る連装砲たち。そして口惜しそうな島風の見送りを受けて軍用トラックは敷地ゲートを出る。
『行って来ます!』
「行ってきやがれっ!」
島風が怒ってる。
「許せ」
私は彼女に敬礼をした。
寛代は真ん中の席でナビゲートしてくれるが時々、私の横っ腹を突くのだった。
(くすぐったいな! ヤメロ!)
運転台には三人しか居ない。
「寛代も(改)になると積極的になるのか?」
私は本人に言ってやる。
その問い掛けに寛代は無言でブイサインを出す。
「やれやれ」
私たちのやり取りを見た日向は微笑んでいる。何だか運転台は和やかな雰囲気だ。
しかし寛代がこの状態なら、あの夕立が、もし改になったら……と思うと冷や汗が出てきた。
さて荷台と運転台は分かれている。ふと気になって振り返ると案の定、後ろでは大騒ぎしていた。
……あ、いや。騒いでるのは金剛と比叡と利根くらい。他は大人しく微妙な艦娘ばかりだった。祥高さんも敢えて今回は注意しないらしい。
私としては墓参前に騒ぐ神経は理解できないが艦娘だから仕方ないか。
軍用トラックは境港の役場を過ぎ共同墓地に近づく。寛代は今のところ何も言わないから敵襲もなさそうだ。今日は道端にも黒い謎の女性も居ない。
墓地に近づくと、さすがに人や車で渋滞してきた。
運転している日向が呟く。
「県外ナンバーだらけですね」
すると寛代。
「こんな田舎で!」
私は苦笑する。
「お盆は帰省してくる人も多いから仕方が無いよ」
日向が言う。
「これ以上入ると、この車が渋滞の原因になりかねません」
「そうだな……よし、ここで全員降車だ」
「分かりました」
彼女は何かを呟くとエンジンを止めた。
後ろの荷台からゾロゾロと居り始める艦娘たち。それを確認しながら日向は懐から妖精を取り出した。
「ハル、頼むぞ」
「オーライ」
彼女は妖精にコードの付いた小さな端末を渡して運転台の下から出ている差込プラグに接続。妖精がその端末を操作するとトラックのエンジンが始動する。
日向は私に言った。
「これが新しいリモコンです」
私も頷く。
「夕張さん、面白がって作っていたな」
「役場の周辺は大きい道路なので大丈夫でしょう」
彼女とやり取りした後、私たちはトラックを降りた。
荷台の周辺には美保の艦娘たちがズラッと勢ぞろいしている。
その格好は賑やかを通り越して仮装行列だ。
全員艤装がないとはいえ金剛や比叡は被り物が眩しい。
(外して来いよ)
赤城さんと寛代、日向も一部、赤色の入った衣装(軍服)だから、とても墓参の格好には見えない。さらに献花を持っているから目立つ。
思わず水木しげるロードの妖怪行列を連想した私だった。
(艦娘たちを妖怪呼ばわりした日には半殺しに遭うだろうが)
実際、周りの墓参の人たちも好奇の目だ。それでも他人の視線は、お構い無しなのが艦娘たちの、たくましいところ。やはり常に戦場と接しているからだろう。逆に「引率」する私の方が恥ずかしい。
「Oh! 墓参、楽しみデスねぇ」
「お姉さま、それはちょっと違います」
(うん、比叡が正しい)
頼むから金剛、非常識な発言は、墓前では止めてくれよな。ただ比叡がいると、ちょうど良い押さえになる。さすが姉妹。
周りを見渡しながら北上が呟く。
「あいつ、今日は来ないよな」
「分からんな」
正直どちらとも言えない。
その後ろで利根が青葉さんに言う。
「吾輩は、来るほうに賭けるぞ」
「来たら、スクープですね」
山城も呟く。
「お姉さまも……来れたら良かったのに」
本当に艦娘って個性派揃いだよな。ちょっと頭が痛くなってきた。
他の赤城さんや龍田さん、五月雨は大人しい。ホッとする。
祥高さんが声高に叫ぶ。
「はい皆さん! 墓地へ向かいますよ。車が多いので気をつけて……あと住民にも」
最後の一言は謎だが祥高さんが同伴して正解だった。物静かだが彼女の威圧感で艦娘たちにも一発で効いた。
しかし、やっぱり全体的な印象は女子高の遠足だな。
妖精が運転するトラックは路地から表通りへ向かって走り去る。
そして艦娘たちは、ぞろぞろと寺の横から共同墓地へと歩きだす。
今日参加している艦娘たちは、ほとんどが自前の無線機や地図システムを持っているから事前にインプットされた私の母方の墓地を目指して迷わず進んでいく。
お盆には不釣合いの艦娘たちの行列。かろうじて私が提督の服装であり若干名、セーラー服や軍服の艦娘が居るから何とか海軍らしいと分かる程度だ。
私は寛代と並んで艦娘たちの行列の最後尾から付いて行く。この異様な艦娘集団の最後尾なら、もし地元の退役軍人と出会ったとしても前回のように何度も敬礼を受けなくて済みそうだ。
ただ家族連れが多い墓地の人たちは私たちを見て軒並み引いている。
でもそれもまた楽しかったりする。青葉さんは盛んにシャッターを切っている。悪く言えばバカ殿の行列だな。
ふと寛代が私を見上げたので思わず言った。
「どうせ軍人なんて皆、バカ者だ」
「あ、それ賛成です!」
「そうじゃのう、我輩も否定はせぬぞ」
青葉さんと利根か。お前たちに同意されても嬉しくないな。
だいたい、お前たちこそ物好きの筆頭だな。
「え? 何か言いました?」
ファインダーを覗きながら青葉さんが反応している。
「いや……」
そうこうしているうちに早くも墓前に着いてしまった。
「到着……ですね」
珍しく赤城さんが言う。
「日本の墓地、初めてデス」
「ちょっと、神聖な気持ちになりますね」
金剛と比叡はお互いに額の汗を拭き合っている。
私も思わず帽子を取る。ただでさえ狭い墓地に、この艦娘たちの密度……あぁ、暑苦しい!
さて日向が祥高さんと頷き合って当然の如くといった風に指示を出し始める。
まずは墓参りの手順……掃除、献花、それから線香と、てきぱきと指導をする。
艦娘たちは最初はぎこちない感じで、順番に線香を手向けている。
それでも結構、彼女たちは神妙に従っている。やはり、こういう伝統行事には礼を持って接する気持ちはあるらしい。誰一人として嫌がったり嫌悪感は出さない。
ちなみに祥高さんは当然だが、山城さんや龍田さんも墓参の手順は知っているらしい。なるほど彼女たちに関しては違和感が無い。そういえば青葉さんは知的に、そして利根も感覚的に墓参の礼儀を知っているようだ。
私は妙に感心した。
(やっぱり、お前たちは日本の艦娘なのだな)
周りの墓参の人たちにはチラチラと私たちを見ている。何となく場を乱している感じもあって、ちょっと申し訳なかった。海軍のイメージが下がらなければ良いけど。
さすがに艦娘が12人も居ると時間が掛かる。ようやく私の順番が来る頃には、かなり汗をかいてしまった。
それでも私は線香を手向けて墓前でしゃがむと静かに手を合わせた。
ここは母方の先祖代々の墓だ。私のお婆ちゃんも入ってる。
「いつまで、かかるのじゃ?」
「シッ」
「悪いな利根……今終わるよ」
私が応えると「ひっ」という利根の短い叫びが聞こえた。まさか私が反応するとは思っていなかったらしい。お前も意外と真面目な性格だな。
さほど時間は掛けないつもりだったが墓前で手を合わせていると、いろんなことが走馬灯のように頭を駆け巡る。黙祷を捧げると、まるで何かに包まれるような妙な感覚になった。
その気配を感じたのだろうか? 艦娘たちも……いや、周りの人たちも急に静かになったようだ。
そうか……軍隊の指揮官の位置というのは、目に見えない世界までも統率する権限があるのだな。そして数分間、墓前では静かな時が流れた。
潮が満ちるような軽い充足感と共に私は、ゆっくり立ち上がった。
まだ目は閉じていた。先祖と、この墓地と、そして境港全体から何かが伝わってくるような感覚が続く。
そして私は最後に墓前で一礼をした。
私は、ゆっくりと目を開けた。日差しが眩しい。
「終わったな」
何か、肩の荷が降りた感じがあった。
一通り終わって、さっさと振り向いた瞬間だった。
「お前も来てたのか?」
聞き覚えのある声……あれ?
「お母さん?」
そこには母親が立っていた。
……てことは?
「……」
その隣には、正真正銘、私の父親が居たのだ。
(あちゃー)
私は艦娘を12人も従えて面倒な状態なのだ。ちょっと焦る。
だが……と思い直した。今日は祥高さんという強い防壁があるのだ。
彼女が居るからだろう。
艦娘たちも余計な事を言わない感じだった。助かる。
後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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