サイドカーで
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「けれど今回乗ってみてね」
「気が変わったか?」
「そうなる?」
今度は祖父に答えた。
「正直なところ」
「乗りたくなったか?」
「というか隣に誰か乗ってもらって」
「それでか」
「運転したいなって思ったわ」
こうした考えになったというのだ。
「どうもね」
「そうか、じゃあ今度乗る機会があればな」
「誰か乗せてね」
そうしてというのだ。
「運転したいわ」
「そうか、じゃあまたな」
「ええ、機会があればだけど」
「誰かに横にいてもらってか」
「そうしたわ、ただ今回一人で運転して」
そのサイドカーをである。
「思ったけれどサイドカーはね」
「二人で乗るものだな」
「そのことがわかったわ、友達でも誰でも」
それこそというのだ。
「誰かと一緒に乗る」
「そうして走るものだよ」
「そのことはわかったわ、じゃあ今は」
最初のカレーを食べ終えていた、自由軒名物の御飯とルーを最初から混ぜてあって卵と一緒に食べるカレーをだ。
「二人分、いえ三人分食べるわ」
「再度カーに乗ったのにか」
「そう、三人分ね」
それだけというのだ。
「食べるからね」
「やれやれだな、しかし参加してもらったからな」
だからだとだ、祖父も困った笑顔になりつつこうも言った。
「好きなだけ食え」
「それじゃあね」
「じゃあ私達は自分のお金で食べるから」
「お祖父ちゃん安心してね」
「孫に金を出させる祖父ちゃんがいるか」
祖父は千里の姉達、つまり自分の孫達に言った。
「御前等も好きなだけ食わせてやる」
「そう言うの?」
「私達レースに出てないのに」
「応援していたら同じだ、だからだ」
好きなだけ食えとだ、祖父は結果として三人の孫全員に告げた。そうして自分もカレーを食べた。そのカレーは実に心地よい味がした。
サイドカーで 完
2017・6・26
ページ上へ戻る