| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四章 RE:BIRTH
  薄緑の壁



「ォォォオオオオオオオオ!!!」

「グっ、この!!」


ミッドチルダの市街地
昼日中ならば多くの人々で賑わうこの街中で、鉄翼刀と直枝理樹の壮大な戦いが繰り広げらていた。



「落ち着いて!!ちゃんと話し合えば・・・・・」

「うるさい!!なにも考えたくない。戦ってると楽なんだ。黙って俺と戦ってオレを倒せェ!!!」

「自暴自棄?現実逃避はッ、カッコ悪いよ!!!」

「あの惨状を知らないお前に、それを言う資格はないッッ!!」

バガァッッ!!



翼刀の剣が理樹の顔面を叩き、バリアごとその体を吹き飛ばして店舗内にブチ込んだ。
ショーウインドウのガラスを粉々に砕き、店の中で爆発が起きたかのような土煙が上がる。

「ハッ!!その程度か「オラァ!!」ッ!?」


理樹を吹き飛ばし、息がる翼刀に向かって真人の剛腕が振るわれて地面を吹き飛ばした。
それを回避した翼刀だが、次に謙吾の木刀が胴を薙ぎ、それを真正面から喰らってしまう。


「グっ・・・・っこれで終わりかァ!!?」

「な!?」


しかし翼刀は食らいながらもその場を一歩も動きことなく、脇腹にぶち込まれたその木刀を掴んで謙吾ごと投げ飛ばす。


「こいつッ・・・・」

「次はお前らか?あのチビ野郎よりかはマシなんだろうな!!」


戦いを求める翼刀。
しかし、彼が倒したという少年は、まだこんな程度で倒れる男ではない。


「開・・・・・翼ッッ!!!」

バゥオォオッッッ!!!


土煙晴れぬ店の中から、薄緑の光がまき散らされる。
内側からの突風に、翼刀が目を細める。


「理樹がそんな弱いわけねェだろ」

「ああ、あいつを舐めない方がいいぞ」

「翼人・・・・だったか!!」


翼刀が敵を視認する。
店の中から出てくるその姿は確かに翼人。

だが、彼の友が発するのは別の言葉。


「アイツは、俺たちの」

「リトルバスターズのリーダーだからな」


薄緑全開。
最硬防御の翼人が、全力で立ち上がる。



「ありがたい・・・ずっと戦ってくれる人間・・・・オレのために戦え!!!」

「・・・・・昔の惨状から目を逸らしたい?」


向かってくる翼刀。
しかし、理樹はまだ顔を上げていない。


「昔の過ちが重いから、それと向き合いたくないから考えたくないって!?」

「ゼァアッッ!!」

バキィッッ!!


「罪を背負ったのは立派だと思うよ」

「・・・・な・・・・こいつ・・・」

「でもね、それと向き合わないのは、背負わないよりも最低だ!!!!」


理樹のバリアが、翼刀の刃を押しとどめる。
翼刀の力が働いていないわけではない。

しかし、それでも彼の想いは堅かった。


「ダぁッッ!!」

「おグっ!?」


バリアを纏った硬拳が翼刀の胸板をぶん殴った。
そこを押さえながらバックステップしていく翼刀。

理樹が翼刀から目を離さずに叫ぶ。


「真人、謙吾!!こいつの相手は僕がする!!」

「大丈夫なのか?あいては・・・・」

「任せて!」

「・・・・わかった。行くぞ真人!」

「おう!!」



そして、二人が去る。
夜の街に、火柱が上がる。

恐らく模造戦士との戦闘でどこかから火が上がったのだろう。


チリチリと肌が焼けていく感覚が、彼らの背中を押しだして


「ハァ゛ア゛ッッ!!!」

「行くぞッッ!!」


爆発したかのように、二人が正面からぶつかり合った。


------------------------------------------------------------



バイクが闇夜の中を奔る。
場所はミッドチルダに向かう高架橋の上。


前方上空には、地上から照りだされたラピュタが見える。


「直枝さん、そいつそっから逃がさないどいてください!!」

『唯子さん?まさかこっちに・・・・』

「あと少しです!!!」


道路上には、模造戦士の残骸が残っている。
遮るものは、何もない。




そして、道はミッドの中に入り込み、もっとも近い出口へとハンドルを切る。


「―――――――見えた!!!」


高架橋から見えた景色。
炎に包まれ、所々から爆発音が響き渡るミッドチルダ。

防衛機能は生きていて、今後の街には支障はない。
だが、それがわかっていても


「キツイね・・・・・私の街も、こんな感じだったのかな・・・・・」


綺堂唯子は知らない。
自分の街がどのように壊滅したのかを。

その時彼女は地獄のような「実験」の中にいたのだから。

自分は背負いきれていないのかもしれない。



しかし、この惨状を見て思い起こす。
彼が見たのはこれ以上の惨状かもしれない。それを自分の手で招いてしまったとあれば、あの彼が自責の念に苛まれるのは容易に想像できた。


「くぅっ・・・・・」


だから、悔しい。
そんな彼を理解しきっていなかった、自分自身が腹立たしいのだ。

だが、もう私は今までの私じゃない。
変わってしまったところもある。もう戻れない過去だってある。


だけど


「だからって今から目をそむけていたら、なんにも始まらないじゃない・・・!!!」

カカンッ、ギュィッ!!


アクセルを吹かせ、バイクを飛ばす。
破損した高架橋の壁を越え、唯子が彼の前へと向かう。



------------------------------------------------------------



理樹と翼刀の戦いは熾烈を極めていた。

翼刀の力・渡航力はその世界干渉力から翼人の力に干渉、抑制するものだ。




だがその力で弱体化されたとしても、理樹の装甲は堅かったのだ。

「ダォアァあああああ!!!」

ドッ、ギャギャギャギャギャギャッッッ

気合とともに振るわれるヴァルクヴェイン。
斬りつけられたその上に、出現した刃が何重にも叩きつけられていく。

その結果が


ピキィッ!

「流石にヒビは入っちゃうか・・・・」

「あんた硬ぇな」

「まぁね」


ギャゴゥッッ!!という空を引き裂くような音がして、翼刀が一歩だけ下がった。
だがまだ間合い内。


そこから間髪入れずに理樹に向かって剣を幾合も叩きつけていく。
それを理樹はバリアを纏った両腕で受け、逸らし、弾いていく。

その理樹を例えるならば、嵐の草原。
圧倒的な暴風の中、巨大な大木は倒れても、土に生える草はそよいで流れて千切れない。


ギチィッッ!!!


「おッ!?」

「捕まえたよ」


その中で、理樹は暴風を掴み取った。翼刀の手首ごとバリアで固められたヴァルクヴェイン。

身動きのできない翼刀の延髄に向かって理樹が蹴りを放って―――――




ギィィィイイイイイオオオオオオオオォォ・・・・・!!!!!!!




ラピュタ最上部から発せられたその音に、脚が止まって空を見上げた。
その金属の擦れる音と、エネルギーが凝縮されるかのような音の交ったそれは、鼓膜の振動から脳内に響き、得体のしれない不安感を噴き出させる。


そして、最上部に集まったエネルギーが数十個の光弾になって、円形に広がって街に着弾した。


「な!?」

『理樹!!今のは!?』

「わ、解らない・・・・・」


何が起こったのか。
それを確認できたのは、空にいた人間だけだ。



『理樹君!!』

「なのはさん!!今何が・・・・」

『今見てたよ・・・・街が・・・・』

「街が?」

『半径1キロ地点が、リング状に壊滅・・・・・』

「そんな!?」


発射されたあの光弾は、街に落ちてドーナツ状に奇麗に焼き払ってしまったのだ。
そんなものを移動しながら発射されたら、それこそ本気で逃げ場がなくなる!!!


『最上部にまたエネルギーが・・・・しかもさっきより大きい!!』


マズイ
その思いだけでいっぱいになる。

さっき以上の物を放たれたら、街どころかここで戦ってる自分たちも危ない!!



理樹が飛び上がり、周囲で比較的高いビルの屋上に立つ。

そして上空を見上げた。
ラピュタ最上部は、彼が今いる真下からは見えない。

だが、そのエネルギーの不気味な光だけは見える。


それを見て



「なのはさん、発射されたタイミングを正確に教えてください!!」

『なにをする気なの!?』

「止めます」


短く一言つぶやいた理樹が、翼を大きくはためかせて飛び上がる。




上空に打ちあがる花火。
今度はリング状に広がるどころではない。

「このままだとリング状どころか円形に壊滅する!!」

半径三キロ以内を全壊させるよう、光弾が打ち上がって拡散していく。
上空を見上げる理樹に目に、その光景が飛び込んでくる。


上空で一瞬停滞してから、半径三キロ以内に光弾の雨が降り注ぐ。



「さ せ る かぁ!!!」



宙で跳ねるように理樹が身を翻す。
直後、大都会ミッドチルダの空に、薄緑の膜が出現した。




------------------------------------------------------------





「これは・・・・!!!」


それは上空のなのはたちから確認できた。
空を飛ぶ模造戦士を殲滅していた彼女の目に飛び込んできたのは、巨大な薄緑のバリア。

光弾の降り注ぐ半径三キロの巨大なバリア。
それがミッドチルダの上空に、理樹を中心に展開されたのだ。


「す、すごい・・・・」

「こんなバリア張れるなんて・・・・」


なのは、ティアナの二人が上空でその光景に呆気に取られていると、光弾が動き始めてバリアに向かって落下していった。


ズドドドドドドドドッッッ!!!というする疾く重い音が幾度も重なって轟き、薄緑のバリアを叩いていく。
その衝撃でバリアがビリビリと振動し、まるでドラムロールであるかのような轟音を、深夜のミッド中に鳴り轟く。


「う・・・ぐ・・・・」


が、範囲、そしてその一発一発の威力があまりにも大きすぎる。
バリアを押し上げるように耐える理樹だが、そのバリアの端からビキビキとヒビが入り、広がり始めていた。


「こ・・・・のォォおおおおおお!!!」


しかし、理樹とて翼人だ。
そんな簡単に墜ちはしない。

全ての力をそのバリアに注ぎ込み端の破損を修復、その打ち上げ花火の光弾を統べて受け切ったのだ。


「ハ―――――――ッッ、アッ!!!」


バリアから手を放し、ワナワナと震える理樹の両手からは焼けたかのような煙が上がっていた。
しかし、耐えきった。

ミッドの街は、護られた。




―――――――――その一度だけは


ギウゥイィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!


「な!?」

「そんな・・・・」

「第二波・・・・・!!!」


ラピュタの最上部に、再びエネルギーが集まっていく。
再び花火が撃ちあがって行く。


「もう理樹に受け止めるだけの力はないぞ!!」

「だが・・・このままでは!!!」


限界ではある。
今まで地上で模造戦士を撃破してきたのだ。

相手が大したことがなくとも、あれだけの数だ。感じずとも疲労はあったのだろう。

更には翼刀との戦闘があったのだ。
ちなみに今も翼刀の抑止力は働いている。
つまり、力を押さえられてあれだけのバリアを張って耐えきったのだ。

そんなことがあったのだ。
無茶でないわけではない。


だが、ここで耐えねば何もなくなってしまう!!!




「うぅァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」



理樹が雄たけびをあげてバリアに力を込める。
光弾が打ち上がり、降り注ぐ。

それをバリアで同じように食い止めるが、数発がすでにバリアに穴をあけて地上に落下している。
だがそれでも理樹はやめない。

この街にも生きる人々がいる。
たとえライフラインが生きていて、これが去った後にも生活ができたとしても、彼らが生きた街並みは帰ってこないのだ。



それを守る防人にならんと、悲劇を乗り越えた少年が歯を食いしばって耐え叫ぶ。



「うぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああ!!!」




バキンバキンと割れていくバリアだが、そこに修繕を回そうとしてまだ耐える。
しかし、もう穴だらけだ。これ以上続けるのは危険すぎる。

翼もこれ以上ないほど広がり、このままでは千切れてしまうのではないかというほど。


翼人の翼にある役割は、大きすぎる力の反動や余剰エネルギーの吐き出しだ。
それはもちろん、自分の力の範囲内だ。

それが千切れるということは、限界を突破しているということ。
しかも限界以上を吐き出しているこの状態で千切れれば、余剰エネルギーや反動のすべてが理樹にぶち込まれる。

最悪、死に至る。


だが、それでも守らねばならないものがあるのだ。



しかし、悲しいかな。
その限界が訪れるより先に、彼に脅威が迫る。


「ハァァアアああああああ!!!!」


笑い声にも似たその声が、理樹の真下から聞こえてくる。

理樹が腕を伸ばして耐えながら、脇の下からその方向を確認すると、そこにいたのは


「鉄―――――翼刀ッッ!!」

「止まるな・・・戦えェ!!」

「ぐ・・・ソォォォおオオオオオオ!!!」


理樹が叫ぶ。
しかし、動くことができない。

ヴァルクヴェインを頭上で二回転程回して、肩に担いで理樹に向かう翼刀。



もう終わりかと思われた、その瞬間



「翼刀ォォーーーーーーーーーー!!!」

「あ?――――ぐっっ!!?」


鉄翼刀の真横に、綺堂唯子の乗ったバイクから発射された拳大のゴム弾が命中した。


真上に飛び上がったところに横からの殴打。
その衝撃を逃すこともできず、翼刀がビルに向かって突っ込んでそのなかに消える。


理樹がその方向を見ると、ビルの屋上を飛び移りながらこちらに向かう、バイクに乗った唯子が向かってきていた。



『理樹さん!!バリアを窪ませてください!!』

「唯子さん!!」

理樹の通信機に唯子の声が聞こえてくる。

確かに、その形なら周囲はある程度の硬度だけあれば滑り落ちてくるから大丈夫だろう。
窪んだ一点に硬度を集めれば、耐えられる。

しかし、その後がどうしようもなくなる。
たまった膨大なエネルギーを、どうすることもできなくなるのだ。


『私が何とかします!!早く!!』

「わかっ・・・・た!!!」

しかし、他に今この状況を打破する考えはない。
理樹がその形にバリアを変形させて、彼女がたどりつくのを待つ。


光弾はバリアを滑って行き、窪んだ中心―――理樹の真上に集まってきている。
その光にゾッ、とする理樹だが、それでも唯子を信じて待った。


そして



「行きますよぉ!!」


唯子が最期の足場になったビルの屋上で、走行中のバイクから一気に飛び出して理樹の元へと辿りつく。
理樹は彼女がこの場につけるよう、バリアで足場を作ってそれを待った。


唯子がその足場に着地し、飛んできた勢いをそのまま腕に回し、両掌を華が開くように構え、バリアの窪んだ中心にブチ当てた。


「破ッッ!!ァ唖ッッ!!!」


バンッッ!!という音が新たに響き、溜まって一つになった光弾が逆再生のようにバラバラになり、バリアに沿って立ち上っていく。

それは落ちてくる光弾を巻き込んでもなお勢いが落ちることなく、そのままバリアから打ち上がって、ラピュタ最上部の打ち上げ台に向かって伸びあがって行った。



ドゴォンッッッ!!!!



そして、着弾。
最上部のエネルギー射出機構が爆発し、これ以上の花火が打ち上がることがないことを表していた。



「あ、ありがとう・・・・」

「遅れてすみません!!でも、ここからは私が!!!」


地上に降りた理樹と唯子が、ある一点を見る。

それはビル。
そのビルこそ、さっき翼刀が吹っ飛んで行ったビルの一階部分だ。


その中に、ユラリと現れる翼刀。



「唯子・・・・・」

「そんなに暴れたいんなら、戦いたいなら!!私が受け止める。私が止める!!!」



拳を握り、翼刀を迎え撃とうとする唯子。
理樹は仲間と共に戦線を引いた。


ここから先は



「私とあんたのタイマンよ」



私はもう、弱くない。
それを証明してみせる。






to be continued
 
 

 
後書き

ずっと書き忘れていたこと。
バラバラ落ちてくる模造戦士はオーズ最終回の屑ヤミーみたいなものです。


理樹VS翼刀
負けてはないですが、状況が悪すぎましたね。

そして次回は翼刀VS唯子


え?「光」たち?
さぁ・・・・ここからは少~し空気になってもらいます。


ラピュタの「打ち上げ花火」
元ネタとしては「ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ」に出てくるクイーンモネラです。

あの映画は本気で熱くなれます。
なんで主題歌カラオケで歌えないんだろ・・・・・


次回、対翼人兵器VS最強の少女


ではまた次回
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧