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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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418部分:第三十三話 孫策、山越を討つのことその十四


第三十三話 孫策、山越を討つのことその十四

「何かおかしいか?」
「おかしいどころで済むものか」
「ギース=ハワード」
 クラウザーは彼のそのフルネームを口にしてみせた。
「この場だけは貴様に同意する」
「そうか」
「貴様との因縁は忘れた訳ではない」
 二人は腹違いの兄弟であるのだ。その因縁はかなり根深いものがある。
「しかし今だけはだ」
「そうだな。力を合わせなければだ」
「この怪物達は倒せはしないな」
「その通りだ」
 こう話してであった。彼等に向かおうとする。しかしであった。
 貂蝉と卑弥呼の目が光った。それだけで。
「むっ!?」
「何っ!?」
「悪いけれどね」
「動きを止めさせてもらったわよ」
 怪物達の言葉だ。
「話聞いてもらいたいしね」
「だからいいかしら」
「くっ、妖術の類か」
「やはり人間ではないか」
 どうしてもこう考える二人であった。
「しかし。それでもだ」
「我々の力を侮るな」
「だから何もしないわよ」
「むしろ力を貸して欲しいのよ」
 意固地になる二人への怪物達の言葉だ。
「あのね、貴方達の力はね」
「この世界を救うものなのよ」
「それは先程華陀からある程度聞いたが」
「それでもだ」
 信じられなかった。とてもだ。
「くっ、来るならばだ」
「何としてもこの妖術を破ってみせようぞ」
 二人の全身を気が包み込む。それを見た貂蝉と卑弥呼もであった。
「あら、凄い力」
「何か濡れてきたわ」
 身体をくねくねとさせながらの言葉だった。
「流石はサウスタウンの帝王ね」
「欧州の影の支配者ね」
「けれど私達もね」
「尋常じゃないわよ」
 こう言って戦おうとする。しかしであった。
「ああ、待ってくれ」
 ここで華陀が言うのであった。
「どっちもな」
「あら、ダーリン」
「何かあったの?」
「また一人来たみたいだぞ」
 こう双方に言うのである。
「またな」
「あら、本当」
「確かにね」
 二人は地平線の遥か彼方を見て述べた。そこに何かを見ていたのである。
「スキンヘッドにサングラスのおのこね」
「ええ、間違いないわ」
「スキンヘッドにサングラス」
「というとだ」
 ギースとクラウザーはそれだけでわかった。
「ミスタービッグか」
「あの男か」
「知っているのか」
 華陀がまだ動けない二人に対して尋ねた。
「その男」
「一応はな」
「知らない訳ではない」
 憮然とした顔で返す二人だった。
「あの男もか」
「この世界に来ていたのか」
「こっちに来てるわね」
「そうね、それなら」
 貂蝉と卑弥呼は楽しそうな声をあげて。そうしてだった。
 跳躍した。まさに一気であった。
「ああしたおのこもね」
「いいわよね」
「馬鹿な、あの跳躍は」
「百メートルは跳んだぞ」
 ギースとクラウザーはこのことにも驚かされた。
「やはりあの二人」
「人間ではないのか」
「いや、人間だぞ」
 華陀だけがそう思っていた。
「れっきとしたな」
「そうなのか?」
「私にはそうは思えないが」
「ちゃんと目が二つあって鼻もあるだろ」
 華陀はこうした当たり前のことを話す。
「耳も二つに口が二つ。手足は二本ずつちゃんと身体から生えてるじゃないか」
「私が言っているのはだ」
「あの身体能力なのだが」
「ああ、あれな」
 本当に何でもない調子の言葉だった。
「ああいうこともあるだろ」
「それだけか」
「それだけで済ませるか」
「まあ大したことじゃない」
 あくまで華陀の主観での言葉である。
「気にするな」
「いや、気にするぞ」
「やはりな」
「いい奴等だ」
 こんなことも言う華陀だった。
「きっとこの世界をいい方向に導いてくれる」
「そうは思えないがな」
「全くだ」
 彼等はこう考えていた。その彼等はだ。ミスタービッグをその容姿と接吻でのしてしまいだ。そのうえで彼もまた仲間とした。彼等もまた仲間を増やしていたのだった。


第三十三話   完


                  2010・9・19
 
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